BAD NEWSのGOODな伝え方

第2回 テーマ 【再発・転移告知】

 第1回テーマで取り上げた【病名告知】の際にも患者は大きなショックを受けますが,【再発・転移告知】では,患者のがんに関する知識が豊富となり,かつ整理されているぶん,事態は深刻となります.「治る」という希望が打ち砕かれ,患者は「ドン底へ突き落とされた」と感じ,強い失望感を味わうことになります.
 【再発・転移告知】の場面では,治癒を目標にした初期治療は間違いではなかったが,結果的には不成功に終わったということを患者も,そして医師も受け入れる必要があります.また,この時期には将来にわたる重要な決定が待ち受けているので,医師は安易なコミュニケーションでやり過ごすのではなく,しっかりと患者を受け止める必要があります.
 初回治療時と異なり,患者−医師間の関係性ができていることが多く,初対面時と違って,患者の意向はある程度推測可能かもしれません.そのため,言葉よりもノンバーバル(非言語的)なコミュニケーションが重要となりますが,患者の意向は変化しうるものであることを念頭において,思い込みでコミュニケーションをとらないようにすることも重要なことです.
 次に【再発・転移告知】の場面で,『SHARE』を活用する際のポイントを挙げましたので,確認してみましょう.

-支持的な場の設定-
【再発・転移告知】を受けた患者はひどく動揺し,取り乱してしまう方もいると思われます.普段よりも,ゆとりを持って対応できるよう,面談の日時を設定するようにします.また,いつでも患者が質問できるような雰囲気で面談が行えるよう心がけます.

-悪い知らせの伝え方-
【再発・転移告知】は医師にとっても言い出しにくい事だと思いますが,患者の反応を気にしすぎるあまり,患者に再発あるいは転移している事が伝わらないのでは困ります.【再発・転移告知】は患者にきわめて大きなダメージを与えるかもしれませんが,医師は転移,再発の事実を明確に,正直に伝える必要があります.
早口で説明したり,医学用語を多用することは避け,患者の理解を確認しながらわかりやすく伝えるよう工夫するのは【病名告知】の際と同様です.
さらに,(これは大変難しいことかもしれませんが)再発を伝える際に,患者に伝えるべきことは「再発」の意味するところです.癌腫や治療経過によって「再発」の意味するところは若干異なるかもしれませんが,再発の意味を明確に伝え,今後提案する治療がどのような意味を持つのかをはっきりさせておくことが重要です.

-付加的状況-
治療方法など医学的な情報を提供するだけでなく,社会的サポートの情報も提供するよう心がけます.このためには,患者がどのようなニードを持っているかを把握する必要がありますので,医師側からの一方的な説明にならないよう,オープンクエスチョンで患者の意思・意向を確認するなど,相互のコミュニケーションを図ることが大切です.
標準治療以外の治療(未承認薬,治験中の治療)や民間療法や代替療法など,患者が希望する情報に関してもわかる限り情報提供するようにします.

-安心感と情緒的サポート-
【再発・転移告知】をされた患者は大きなショックを受けますので,より一層の情緒的サポートが求められます.
面談時の患者のしぐさや様子に注意し,患者の感情に配慮するようにします.
患者が希望を持てるような情報も伝え,今後も主治医として責任を持って治療を行うことを約束するとともに患者の気持ちを支える言葉をかけると良いでしょう.