【今回のポイント】 「私はどうなってしまうのですか?」というHさんの言葉は大変,返答に困る質問です. このような質問にはどう対応すれば良いのでしょうか? このような難しい質問へ対応するためには,言葉にこめられた気持ちに焦点をあてることが大切です.Hさんの気持ちについては設問のなかに少し触れられています. Hさんは「これからどうなるのか」を知りたいのではなく,「これからどうなるのか不安だからできればそのことについて話し合いたい」というメッセージを医師に向けて発信しているのではないでしょうか.
表面的かつ直接的な対応で実際には言い逃れととられかねない対応です.この言葉によりHさんはこれから先,質問する機会を奪われてしまうかもしれません.すなわち,【RE:気がかりの探索】や,患者を思いやる【RE:感情への配慮】が欠如していると考えられます.
前半部分ではある程度,Hさんの質問に答えていますが,「不安だ」というHさんの気持ちを受け止め(【RE:患者の感情に気付く】)られていません.また「緩和医療」は専門用語ですので,「治療を目的とするのではなく,つらい症状を和らげることを目的とする」のように【H:専門用語は用いず,わかりやすく伝える】ことが必要です.
一見,まわりくどいと思われる対応かもしれませんが,Hさんは少なくとも医師に今自分が不安なこと,気がかりがあることに気付いてもらうことができた,と感じられるでしょう.ここでは【RE:沈黙】も一役買っています. さらに発言を促されることで,Hさんは具体的な心配事や意向を医師に伝えることができると考えられます.このように【RE:オープンクエスチョンを用いて,患者の気がかりを聞きだす】ことは非常に有用です.