消化器癌治療の広場
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Quiz3 Case:直腸がん
―病名告知 難治がんを伝える― 説明編
【患者シチュエーション】
 72歳男性のHさんは,3年前に妻を亡くし,現在一人暮らし.45歳の会社員の息子は妻,高校生の息子と離れた場所で3人暮らし.既往歴,家族歴に特記する事はない.
 1ヶ月ほど前から血便をみとめていたが痔からの出血と思い,放置していた. 症状改善せず近医を受診したところ,当院での精査を勧められ,来院.
 前回診察時,直腸指診・S状結腸内視鏡検査の結果から直腸がんが疑われることは伝えた.
【確定診断,病期診断のための検査】
 S状結腸内視鏡検査,内視鏡下生検,胸腹部・骨盤CT,腹部超音波検査,血液検査
【診断】
 直腸がん,多発性肝転移,多発性肺転移(cA, cN1, cH3, cM1(肺 LM3), cStage IV)
【推奨する治療】
 化学療法(FOLFOX4+BV)
Question
確定診断,病期診断のための検査がひととおり終了後,Hさんは家族(息子)とともに結果を聞きに来院した.面談室での挨拶,自己紹介の後,経過を振り返りつつHさんの病気に対する認識を確認した.その中でHさんは直腸がんの可能性は理解されているようであったが手術で治るのではないかという思いが強いことが推測された.病名,病状の告知を行い,臨床病期はIV期で,推奨される治療は化学療法であることを説明した.それに対する「えっ,手術ではないのですか?手術ができないということは,もうだめってことですか,先生!」というHさんの言葉に対する対応で,次のA〜Cの中でもっとも適当だと思うものをクリックして下さい.
A

「肺と肝臓にたくさん転移しているので,手術は無理なのです.そもそも,直腸だけ手術で切除しても肺と肝臓にたくさんがんが残るでしょう.ですから化学療法をお勧めしているのです」と答えた.

B

「だめといいますと?」とHさんに質問した.しばらくの沈黙の後,Hさんは「やはり,私は死ぬのでしょうか?」ともう1度聞かれたので,「それは,この病気が治るかどうかということでしょうか?」とさらに質問した.

C

「まあまあそんなに興奮しないでください.治療をすれば,結構良くなる方もおられますよ」と応じたところ,Hさんは「じゃあ,大丈夫なのですね?」と再び聞かれた.これに対し,「治療成績には個人差もあり,やってみないとわかりませんね」と答えた.