外来化学療法への取り組み

瀧内(司会):本日は「外来化学療法」「緩和ケアチーム」「患者支援室」「地域連携」など、がん診療連携拠点病院として充足しなくてはならない重要項目について、お二人の先生方と話し合っていきたいと思います。まず、最初のキーワードである「外来化学療法」について、三浦先生から福井県済生会病院の事例をご紹介ください。

三浦:当院では1993年の施設移転に伴って患者数が爆発的に増え、在院日数を短縮していく中で、業務がどんどん外来に移行していきました。化学療法もその1つだったわけで、最初は狭い点滴処置室のベッドで行っていました。外来化学療法に特化した部屋ができたのは2001年のことで、空いていたフロアに330m2ほどのスペースを確保し、「アメニティールーム」という名前をつけて、患者さんが外の景色を眺めたり、DVDを見ながらゆったりした環境で治療を受けられるようにしました。その一方で、外来で化学療法を行うとなると、看護師にも高度な知識が必要になってきます。そこで、化学療法に詳しい薬剤師に週1回、就業時間外に講義してもらい、看護師の教育を行いました。ちょうどその頃に、診療報酬で外来化学療法加算が導入されたのです。必要に迫られて外来化学療法を広めていったのですが、結果として制度が後から付いてきたことになります。

瀧内:2002年4月ですね。では、谷水先生に伺いますが、四国がんセンターの外来化療室はどういう形で始まったのですか。

谷水:やはり同時期に外来化学療法をきちんと行おうという機運が高まり、意識の高い看護師が自主的に半年間休職して、がん化学療法認定看護師の資格を取ったのです。彼女が職場に復帰した時期にちょうど外来化学療法加算が導入され、外来化学療法室を設置することになりました。5名の看護師が専属となり、8床から始めて徐々に増やして対応していきました。治療件数がどんどん伸びていく中で、積極的にがん化学療法認定看護師を育てようということになり、現在は3名が資格を取得しています。さらに2006年の新築移転に際して、25床の外来化学療法室をつくりました。きちんと場所を確保して、よい環境で治療できるスペースがつくれたと思います。専属の看護師は現在も5名ですが、治療件数は以前の400〜500件/月から最近は700件を超えるまでになっています。

瀧内:福井県済生会病院にも、専門的なライセンスをもった看護師はいらっしゃいますか。

三浦:がん化学療法認定看護師が2名いて、外来化学療法に参加しています。

瀧内:抗癌剤の点滴について、四国がんセンターでは特徴ある取り組みをしていると聞いています。

谷水: 認定看護師が専門性を発揮できるようにということで、血管確保は看護師が責任を持って行うことにしました。もちろん、主治医がきちんとルート確認したうえで抗癌剤を投与することになりますが。当院は主治医制をとっているため、当番医は交代制で決まっていますが、ほとんど主治医が対応しています。乳癌以外は内科系の医師が化学療法を行っており、外科と内科の役割分担が明確に決まっているのです。乳癌の患者は増えており、化学療法も長期に及ぶため、乳腺科の医師は大変です。

瀧内:癌専門病院の場合、乳癌患者の占める割合が多いですね。腫瘍内科医は何名いらっしゃいますか。

谷水:腫瘍内科医という形ではなく、消化器内科、呼吸器内科、血液内科という形に分かれています。内科医は検査部門、診断部門、化学療法部門を担当することになり、患者さんも外科医と内科医の間を移動します。病棟は臓器別編成になっていて、全病棟が手術できる体制に組み替えました。例えば消化器病棟には内科医も外科医もいます。

三浦:科目の垣根があまりないのですね。

瀧内:最近は腫瘍内科医の活躍の場が広がってきていますが、福井県済生会病院ではいかがでしょうか。

三浦:レジメの整理をはじめ、様々なことを腫瘍内科医の指導で行っています。

瀧内:そういう時代になっていますからね。さて、最近は大腸癌の患者も増えていますね。福井県済生会病院には遠方からの患者さんも多く受診なさっていると思いますが、大腸癌の標準的治療であるFOLFOX療法やFOLFIRI療法を外来で行う場合、抜針などはどのようにされているのですか。

三浦:当院での抜針、自己抜針、かかりつけ医での抜針がそれぞれ3分の1ずつです。

谷水:四国がんセンターでは、ほとんどが自己抜針または自施設で抜針しています。

瀧内:これから外来化学療法室を開設しようとされている医療機関も多いと思いますが、先駆者のお二人からアドバイスをお願いできないでしょうか。

三浦:そうですね。化学療法の専門スタッフを集めただけでは十分ではないと思います。薬剤師、臨床心理士、メディカル・コーディネーターなど各職種のスタッフによる栄養サポート(NST)、緩和ケア(PCT)、創傷・オストミー・失禁(WOC)看護などのチーム医療体制をつくっておく必要があります。

谷水:当院でもその必要性を感じており、WOCは認定看護師、リンパ浮腫は専門研修を受けて上級セラピストになった看護師が医師のチェックを受けて専門外来で診ています。そうした専門性の高い看護師、薬剤師をきちんと育てることが大事なポイントになってきますし、彼らが活躍できるシステムをつくっていく必要があると思います。

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