論文紹介 | 監修:財団法人癌研究会附属病院 藤田力也(消化器内科・部長/内視鏡部・部長)山口俊晴(消化器外科・部長)

9月

進行結腸直腸癌の5-FU療法におけるleucovorinの
modulation効果−最新のメタアナリシスより−

The Meta-Analysis Group in Cancer, J Clin Oncol 22(18) , 2004 : 3766-3775

 5-FUに対するleucovorin(LV)のbiochemical modulationは、進行結腸直腸癌に対する奏効率においてその効果が示されてきた。しかし、すでに公表されている9つの臨床試験のデータを用いたメタアナリシスでは、5-FUとLV/5-FUの間で統計学的に有意な生存期間の差を見だすことができなかった。今回は新しく10の臨床試験のデータを追加し、より長い観察期間でメタアナリシスを試みた。
 解析には19のランダム化試験よりの3,300症例のデータを用いた。2研究は多群比較試験だったので結果として21ペアーワイズ比較となった。5-FUの投与量は10試験で両群共にほぼ同用量であり、5-FU単独群で投与量が15-33%多い試験が6試験、66%以上多い試験が5試験であった。
 全解析では、LV/5-FU群の奏効率は5-FU単独群に比べ2倍であった(LV/5-FU 21% vs 5-FU 11%、P <0.0001)。わずかだがLV/5-FU群は5-FU単独群より統計的に有意な生存期間の延長を認めた(生存期間中央値11.7ヵ月 vs 10.5ヵ月、P =0.004)。本研究では5-FUの投与量と奏効率(P <0.0001)、生存期間(P =0.02)に明らかな相関を認めた。しかし高用量5-FU群はLV/5-FU群よりgrade3、4の血液毒性は(21% vs 12%)、grade3、4の非血液毒性は(42% vs 24%)とはるかに多かった。両armでの5-FU投与量が同用量である試験に限定すると、奏効率、全生存期間ともにLV/5-FU群は5-FU単独群を上回っていた。いろいろな予後因子を検討してもLV/5-FU群は明らかに5-FU単独群に奏効率、全生存期間で優っていた。

考察

LV/5-FU療法の5-FU単独療法に対する有用性を再確認

 いまさらと思われる方も多いだろうが、1980年代に確立されたLV/5-FU療法の代表的なトライアルをまとめ、有用性を解析した報告である。このトライアルには原法の5-FU急速静注や、ヨーロッパ流の持続投与、低用量、高用量のLV等様々な投与法が含まれている。全体の奏効率21%は現代では低く感じられるが、1980年代から90年代前半までの研究の総和である事を考えると妥当な数字であろう。また5-FU単独の奏効率11%も現実的な数字である。LV併用による生存期間の明らかな延長は認められないという意見もあったが、本研究ではわずか1.2ヵ月であるが有意差が証明された。また5-FU単独でも5-FUの投与量を増やせばLVの効果増強と同じ効果が得られるとの仮説も検討した。しかし副作用の点から高用量5-FUは受け入れられないと結論された。米国では現在でもハイリスク群にはLV/5-FUを中心とした治療をおこなう事が多い。またFOLFOXやIFL等の、現在の結腸直腸癌化学療法の主なregimenもLV/5-FUに新薬を組み合わせたものであり、この結果は意義があるといえる。

(化学療法科・水沼信之)

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