論文紹介 | 監修:財団法人癌研究会附属病院 藤田力也(消化器内科・部長/内視鏡部・部長)山口俊晴(消化器外科・部長)

9月

imatinib高用量投与によるGIST患者の
progression-free survival(PFS)−無作為化試験−

Jaap Verweij et al., Lancet 364(9440) , 2004 : 1127-1134

 本研究は、転移性GIST患者に投与されたimatinibの腫瘍縮小効果や無再発期間について、その用量依存性を検討したものである。
 対象は2001年2月より2002年2月の間に、13ヵ国、56の病院から選び出した、C-KIT陽性の進行あるいは転移性のGIST患者946症例である。946症例中470症例はimatinib 400 mg 1回/日(400 mg投与群)、472症例が400 mg 2回/日(800 mg投与群)投与された。endpointはPFSとされた。経過観察の中央値は760日であり、927症例(98%)が1年間、549症例(58%)は2年間経過観察できた。400 mg投与群のうち189症例(40%)、800 mg投与群の302症例(64%)が治療中止となった。また各群それぞれ77症例(16%)、282症例(60%)が、血液学的あるいはその他の有害事象で治療中止となった。治療効果はCRがそれぞれ、24症例(5%)、28症例(6%)、 PRが213症例(45%)、229症例(48%)、SDが150症例(32%)、150症例(32%)とそれぞれの投与量でほぼ同等であった。2年間の経過でみると400 mg投与群で、再発例が53%、死亡例が3%、800 mg投与群で、再発例が44%、死亡例が4%認められた。全体の生存率をみてみると、400 mg投与群では1年で85%、2年で69%、800 mg投与群では、1年で86%、2年で74%といずれも著しく高かった。また、400 mg投与群のうち263症例(56%)で病状の進行が認められたが、800 mg投与群では235例(50%)であった(95%CI:0.69〜0.98、p=0.026)。つまり、腫瘍縮小率はどちらの群でもほぼ同等であったが、PFSは高用量群で良好であった。

考察

imatinib高用量投与でPFSは延長するが有害事象の発現も増加する

 これまで、切除不能転移性GISTには有効な治療法がないと考えられていたが、BCR-ABLチロシンキナーゼ阻害剤imatinibのphase I、phase II試験により、その有効性が示され、投与量として1日400〜800 mg、400 mg/日が推奨用量として多くの国で承認されている。phase I試験では、投与量600 mg/日以上の症例で、再発までの期間が長いことが証明されていた。今回の1日2回投与に関する検討では、腫瘍縮小効果は以前の報告とほぼ同様であったが、PFSが延長された。特に病気が高度に進行している例や転移性のGISTでPFSの延長が見られた。しかし、貧血、顆粒球減少をはじめとする有害事象が高頻度でみられ、特に、800 mg投与群で非常に厳しい有害事象が見られた。有害事象のほとんどは治療初期に生じていることから、はじめは400 mg/日で開始し、その後800 mg/日に切り替えて同様の効果を得るなど、有害事象を減らす治療上の工夫が今後は必要である。

(内科・藤崎順子)

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