論文紹介 | 監修:財団法人癌研究会附属病院 藤田力也(消化器内科・部長/内視鏡部・部長)山口俊晴(消化器外科・部長)

6月

oxaliplatin、5-FU、leucovorin(FOLFOX)療法による術後補助化学療法の成績

Thierry André, M.D. et al., N Engl J Med 350(23), 2004 : 2343-2351

 結腸癌に対する標準的術後補助化学療法は今までleucovorin/5-FU療法(LV/5-FU)であった。転移性結腸直腸癌ではoxaliplatin(Oxal)をこの治療に加える事により奏効率が改善された。本研究ではOxal+LV/5-FU療法の術後補助化学療法としての有用性を評価した。
  stageII、IIIの治癒切除を受けた結腸癌2246例をLV/5-FU群、Oxal+LV/5-FU群に無作為割り付けした。LV/5-FU群は各サイクルLV 200mg/m2を2時間点滴静注、5-FU 400mg/m2をbolus静注後、600mg/m2を22時間持続投与とし、第1日、第2日の2日間繰り返す。投与期間は14日間隔、12コースを施行した。Oxal+LV/5-FU群はLV/5-FUに加えてOxal 85mg/m22時間投与を第1日にLVと同時に投与する(FOLFOX療法と同じ)。primary endpointはdisease free survival(DFS)とした。
 各群1123例が割り付けられた。37.9ヵ月の観察期間中央値でOxal+LV/5-FU群237例(21.1%)、 LV/5-FU群293例(26.1%)が再発又は死亡した(ハザード比0.77:p=0.002)。3年DFSはOxal+LV/5-FU群78.2%(95%CI:75.6-80.7%)、LV/5-FU群72.9%(95%CI:70.2-75.7%)であった。3年全般生存はOxal+LV/5-FU群87.7%、LV/5-FU群86.6%であった。Oxal+LV/5-FU群で副作用は、発熱を伴う好中球減少は1.8%、消化器毒性は少なく、grade 3の神経毒性は12.4%に出現したが1年後には1.1%まで改善した。各群で6例に治療中の死亡を認めた(死亡率0.5%)。
 以上のことよりOxal+LV/5-FU療法は術後補助化学療法としても有効であることが示唆された。

考察

Oxal+LV/5-FU療法は術後化学療法としても有効

 本研究はFOLFOX療法の本家、フランスのde Gramontらの欧州からの報告である。Oxalにbolus静注+持続投与のLV/5-FUを組み合わせたFOLFOX4療法は進行結腸直腸癌でIFL(LV/5-FU+CPT-11)療法を上回る治療効果が確認され、転移性結腸直腸癌に対するfirst lineの治療法として欧州のみならず、米国でも認知されている。一方、LV/5-FU療法は長い間、術後補助化学療法の標準療法として使用されてきた。しかし進行癌に対する治療法がFOLFOX療法、IFL療法に変わった現在、これらの新治療法の術後補助化学療法での成績が待たれていた。本報告は3年間の観察とやや短いがFOLFOX療法が術後補助化学療法としてもstageII、III共にDFS、生存期間でLV/5-FU療法を凌ぐ事を示した。副作用はOxal独特の神経毒性が加わったが、他は充分に管理可能であった。ついにOxalが広く結腸直腸癌化学療法で主役を占める事になった。次の興味は分子標的治療薬との併用効果であろう。

(化学療法科・水沼信之)

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