論文紹介 | 監修:財団法人癌研究会附属病院 藤田力也(消化器内科・部長/内視鏡部・部長)山口俊晴(消化器外科・部長)

3月

閉経後の女性に対するエストロゲンとプロゲステロン投与と結腸直腸癌について
-WHI trialより-

Rowan T.Chlebowski,M.D.,Ph.D., et al., N Engl J Med 350(10),2004:991-1004

 閉経後の女性にエストロゲンなどのホルモンを投与することで、結腸直腸癌の発生が抑制されることが報告されている。今回のWomen's Health Initiative (WHI) 試験では、閉経後の女性に対しエストロゲンとプロゲステロンの投与後に発見された結腸直腸癌の特徴を検討している。1993年から1998年の間に40施設で50歳から79歳までの子宮を摘除していない閉経婦人16,608例を、結合型エストロゲン(0.625 mg/日)+メドロキシプロゲステロンアセテート(2.5 mg/日)併用群、またはプラセボ群にランダムに振り分け、その後の結腸直腸癌の発生率、ステージ、特徴を検討した。
 最終的に15,931例が検討され、その平均の観察期間は5.6年であった。結腸直腸癌の発生が122例でみられ、そのうちstage0 4例、扁平上皮癌1例、カルチノイド2例を除いた、浸潤結腸直腸癌115例が解析された。プラセボ群8,102例で浸潤結腸直腸癌が72例認められたのに対し、ホルモン投与群8,506例では43例しか認められなかった。2群間の腫瘍の特徴(部位,組織型,腺腫併存の状態)に差はなかった。しかし、ホルモン投与群では、リンパ節転移率が高く、プラセボ群に比べてより癌が進行していた。また、結腸直腸癌を認めたホルモン投与群のなかでも、膣出血を認めた人はさらにリンパ節転移率が高かった。
 比較的短期間の検討であるが、閉経婦人に対するエストロゲンとプロゲステロン投与は、結腸直腸癌発生の危険性を減少させたが、より進行したステージで診断されていた。

考察

閉経婦人にエストロゲンとプロゲステロンを投与するか

 閉経婦人に対するエストロゲンなどのホルモンの投与が、結腸直腸癌の発生を20%減少させると報告されている。今回の対象は、プラセボ群に結腸直腸癌の家系がより多く存在していたため、2つのグループ間に発見された結腸直腸癌の発生率や特徴に違いが出た可能性がある。また、colonoscopyやsigmoid scopy検査を受けたのは全体の40%で、いかなる結腸直腸の検査も受けていないのが28%も存在しており、長期の観察期間が必要と考えられる。また、結腸直腸癌の発生を減少させているが、より進行したステージで発見される理由を2つのホルモンだけで説明するのは難しく、さらなるメカニズムの解明が必要と考えられる。

(内科・浦上尚之)

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