2010年 消化器癌シンポジウム 演題速報レポート 消化器癌治療の広場

2010年 消化器癌シンポジウム

演題レポート Presentations

Abstract #284
Stage III結腸癌の術後補助化学療法におけるcapecitabine + oxaliplatin (XELOX) 療法vs. 5-FU/LV療法の有効性を検討した無作為化第III相試験 (NO16968):
年齢はdisease-free survival (DFS) に影響しない

Efficacy findings from a randomized phase III trial of capecitabine plus oxaliplatin versus bolus 5-FU/LV for stage III colon cancer (NO16968): No impact of age on disease-free survival (DFS).

Daniel. G. Haller, et al.

XELOX療法は、高齢者でも若年者同様に有効な治療選択肢となる可能性がある

吉野 孝之先生

 過去に報告されたMOSAIC試験、NSABP C-07試験では、65歳または70歳以上の高齢者で、DFSやOSに対するL-OHPの上乗せを証明できなかった。NO16968試験では、高齢者でも若年者と同様にL-OHPの上乗せが示唆された。現時点で高齢者にXELOX療法がよいと結論できないが、X-ACT試験で70歳以上の高齢者でもcapecitabineの5-FU/LV療法に対するDFSやOSにおける非劣性が示されていることから、capecitabineベースのXELOX療法と、5-FU/LVベースのFOLFOX療法、FLOX療法との違いである可能性がある。
 転移性大腸癌に対する複数の比較試験の結果から、XELOX療法はFOLFOX療法に比べ好中球減少症が少ないという特徴があげられるが、MOSAIC試験のFOLFOX療法とNO16968試験のXELOX療法の好中球減少の頻度を比較すると、やはりXELOX療法で好中球減少症が少ない。現在進行中のAVANT試験では、FOLFOX4療法とXELOX療法を直接比較していることから、その結果が待たれる。
 高齢者は若年者と比較し、好中球減少症などの血液毒性の頻度が高く、薬剤強度を保持できない、他病死の頻度が高いなどの特徴を有するが、現時点で高齢者=L-OHPは不要、と結論づけるのは時期尚早である。NO16968試験のように高齢者でもL-OHPの上乗せが示唆されている以上、きめ細やかな毒性管理を実践することがstate-of-artであろう。

 
背景

 Stage III結腸癌の術後補助化学療法におけるcapecitabineの有効性については、すでにX-ACT試験において、5-FU/LV療法に対するDFSおよびOS (overall survival) における非劣性が示されている1)
 一方、2009年の米国臨床腫瘍学会年次集会において、近年のoxaliplatin (L-OHP) ベース化学療法の試験結果(MOSAIC試験、NSABP C-07試験)を解析したACCENTデータベースの最新報告が行われ、「70歳以上の高齢者における術後補助化学療法は、5-FU/LV療法と比べて優越性はない」と結論づけられた(McCleary N, et al.: 2009年 米国臨床腫瘍学会年次集会, #4010)2)
 そこで我々は、XELOX療法 (capecitabine + L-OHP) vs. 5-FU/LV療法を比較したNO16968試験のサブ解析を行い、高齢者におけるXELOX療法の有効性を検討した。

対象と方法

 対象は18歳以上のstage III結腸癌患者とし、下記の2群に無作為に割り付けた。

  • XELOX群 (n=944)
Capecitabine (1,000mg/m2/b.i.d, day 1-14, 経口投与) + L-OHP (130mg/m2, day 1) を3週毎に繰り返し、8サイクル実施 (6ヵ月間)
  • 5-FU/LV群 (n=942)
Mayoレジメンが約7割、RPMIレジメンが約3割に実施された (6ヵ月間)

 一次エンドポイントはDFS、二次エンドポイントはRelapse-free survival、OS、安全性である。

結果

 NO16968試験全体の結果では、5年DFSがXELOX群66.1%、5-FU/LV群59.8%であり、DFSはXELOX群において有意に優れていた(HR=0.80, 95% CI: 0.69-0.93, p=0.0045)。また、5年OSはXELOX群77.6%、5-FU/LV群74.2%で、XELOX群において良好な傾向にあった。
 年齢別のサブ解析では、70歳以上ならびに65歳以上においても、同様の結果が得られた(表1参照)。

表1

 なお、NO16968試験における70歳以上のXELOX療法群の治療期間は、5-FU/LV療法群に比べて短く、また治療強度(dose intensity)も低かった(表2参照)。

表2
結論

 本サブ解析により、Stage III結腸癌の術後補助化学療法におけるXELOX療法の有用性は、65歳以上および70歳以上の高齢者においても良好であることが確認された。これはACCENTデータベース2)およびMOSAIC試験3)の結果とは異なるものであった。また、高齢者においては治療期間の短縮ならびに治療強度の低下が認められたが、効果は良好であった。
 したがって、XELOX療法の臨床適応は、患者の年齢ではなく、患者の個々の状況に応じて選択すべきだと考えられる。

Reference
1) Twelves C, et al.: N Engl J Med. 352: 2696-2704, 2005
2) McCleary N, et al.: J Clin Oncol. 27(15s): abst #4010
3) André T, et al.: J Clin Oncol. 27: 3109-3116, 2009