膵癌においては手術が唯一の根治治療であるが、90%の患者が再発すると報告されている
2) 。一方、Gemcitabineによる術後補助化学療法は膵癌患者のDFS (disease-free survival) とOSを改善し治癒率を高めることが報告されており、
CONKO-001試験における5年OSは経過観察群10.4%に対し、Gemcitabine群20.7%とGemcitabine群で高かった
1)。こうしたベネフィットはR1切除患者においても同様に報告されているが、エビデンスが限られており、さらなる改善が必要である。
本試験は、R1切除を行った膵癌患者の術後補助療法として、Gemcitabineに対するSorafenibの上乗せ効果、および6サイクルから12サイクルへの治療期間の延長効果を検討した第IIb相試験であり、主要評価項目はDFS、副次評価項目はOS、毒性であった。
対象は、標準的な手術によりR1切除を行い、Karnofsky-Scaleによる術後のPSが60%以上で術前補助療法を行っていない膵癌患者であり、Gemcitabine (1,000mg/m2, day 1, 8, 15, 4週毎) + Sorafenib (200mgを1日2回連日経口投与) を行う群 (Sorafenib群) とGemcitabine + プラセボを行う群 (プラセボ群) に無作為に割り付けた。なお、治療期間は48週間 (12サイクル) とした。
本試験は当初、20施設における1年間の登録を計画していたが、登録が遅れたため登録施設および期間を拡大し、最終的に2008〜2013年の間に27施設から患者が登録された。対象は122例 (Sorafenib群57例、プラセボ群65例) で、両群間に患者背景の偏りはなかった。
術後のDFS中央値は、Sorafenib群9.6ヵ月、プラセボ群10.7ヵ月であり、両群に有意差を認めなかった (p=0.89)。
同様に、術後のOS中央値は、Sorafenib群18.2ヵ月、プラセボ群17.1ヵ月であり、両群に有意差を認めなかった (p=0.94)。
Grade 3/4の有害事象は、下痢、手足症候群、高血圧、GGT上昇がSorafenib群で多くみられた。
治療期間中央値はSorafenib群26.6週間、プラセボ群25.1週間であり、12サイクル投与できた症例はそれぞれ33%、22%であった。なお、治療中止理由は、再発 (35 vs. 46%)、毒性 (14 vs. 17%)、患者希望 (16 vs. 12%)、その他 (35 vs. 25%) であった。
本試験はR1切除を行った膵癌患者を対象とした最初の前向き無作為化試験である。術後補助化学療法として、GemcitabineにSorafenibを追加しても、DFSおよびOSの改善はみられなかった。同様に、
CONCO-001試験との比較として治療期間を6サイクルから12サイクルに延長したが、DFSおよびOSの改善はみられなかった。膵癌R1切除患者は、まだ高リスク集団と考えなければならない。
1) Oettle H, et al.: JAMA. 310(14): 1473-1481, 2013 [
PubMed]
2) Vincent A, et al.: Lancet. 378(9791): 607-620, 2011 [
PubMed]