ESMO 2014 演題レポート
2014年9月26日〜9月30日にスペイン・マドリッドにて開催された ESMO 2014 Congressより、大腸癌や胃癌などの注目演題のレポートをお届けします。演題レポートの冒頭には、臨床研究の第一線で活躍する監修ドクターのコメントを掲載しています。
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大腸癌

Abstract #LBA10

CALGB/SWOG 80405試験:治療戦略の一環として手術を受けた患者の解析
CALGB/SWOG 80405: Patients Undergoing Surgery as Part of Treatment Strategy
Alan Venook, et al.
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Expert's view

切除に関してはCetuximab優位も、OSには有意差を認めず

岩本 慈能 先生

関西医科大学附属枚方病院
消化管外科

 本演題は、2014年米国臨床腫瘍学会年次集会で報告されたCALGB80405試験の登録症例における切除例180例のうち切除によりNED (no evidence of disease) となった132例に対し解析を行っている。CALGB80405試験では、登録時にその症例が切除不能であり生存期間の延長が目的であるか (palliative)、化学療法後に切除を期待するか (cure) が記録されているが、約15%程度がcureを目的とされており、実臨床において化学療法が行われる症例と近似していると思われる。
 切除施行例の約60%は、登録時の治療目的がpalliativeとされた症例であった。つまり、化学療法により切除不能が切除可能となる、いわゆるconversion therapyが明らかに存在し、OSの延長が得られたことになる。切除が施行された180例の内訳はCetuximab群が105例、Bevacizumab群が75例となっており (NED症例の内訳はBevacizumab群50例、Cetuximab群82例)、統計学的に検証されていないものの切除に対しCetuximabが有利な印象である。また、NED症例における奏効率はBevacizumab群82%、Cetuximab群68%であったが、切除可能となる理由は単に奏効率だけではなく、奏効の深さなども関連する可能性があると考えられる。しかし、DFSもOSも両群間に有意差は認めていない。切除症例における肝限局転移症例が50%程度であり、原発巣残存症例が30%程度あることから、高度リンパ節転移や局所進行癌も含まれている可能性が高い。そのため、CELIM試験new EPOC試験と比較することはできず、切除可能・不可能を1st-lineにおけるCetuximab、Bevacizumabの選択基準にすることはできないと思われた。
背景と目的

 CALGB80405試験はKRAS 野生型の切除不能進行・再発大腸癌に対するFOLFIRI/mFOLFOX6 + Bevacizumab (Bev群) とFOLFIRI/mFOLFOX6 + Cetuximab (Cmab群) を比較した無作為化第III相試験であり、2014年米国臨床腫瘍学会年次集会で結果が報告された。
 一方、切除不能進行・再発大腸癌は集学的治療によって治癒する可能性があることから、CALGB80405試験に参加し、化学療法後に手術を受けた患者の特徴と長期予後を調査するため、本サブセット解析が行われた。
対象と方法

 CALGB80405試験は2005年11月〜2012年3月の間に3,058例が登録されたが、KRAS 野生型の2,334例が無作為化され、プロトコール変更などにより最終的に1,137例が適格となった。なお、追跡期間中央値は32ヵ月で、年齢中央値は59歳、男性が61%を占めた。
結果

 CALGB80405試験において、化学療法後に手術を受けた症例は1,137例中180例 (15.8%) であり、Bev群75例に対しCmab群105例とCmab群で多かった (表)
表
 手術を受けた180例中132例は術直後に無病生存状態 (no evidence of disease: NED) であり、OS中央値は64.7ヵ月 (95% CI: 59.8-78.9) であった。なお、NED例はBev群50例、Cmab群82例であり、OS中央値はBev群が67.4ヵ月、Cmab群64.1ヵ月と、有意差は認めなかった (HR=1.2, 95% CI: 0.6-2.2, p=0.56) (図1)
図1
図1
 奏効率は、全体ではBev群57%、Cmab群66%であり、化学療法別の解析では、mFOLFOX6ではBev群56%、Cmab群67%、FOLFIRIではBev群61%、Cmab群62%であった。NED例のうち奏効状態が評価できたのは111例で、Bev群82% (37/45例)、Cmab群68% (50/66例) であった。
 NED例における術後のDFS (disease free survival) 中央値は15.9ヵ月 (95% CI: 10.4-21.2) で、Bev群16.9ヵ月、Cmab群15.3ヵ月と両群に差はみられなかった (HR=1.0, 95% CI: 0.6-1.5, p=0.94) (図2)。また、NED例における無作為化から術後再発までの期間中央値は25.7ヵ月 (95% CI: 20.5-33.5) であり、Bev群24.8ヵ月、Cmab群25.9ヵ月であった (HR=1.0, 95% CI: 0.6-1.5, p=0.84) (図3)
図2
図2
図3
図3
 NED例に対してRAS 解析を行った結果、132例中76例でRAS 評価され、OS中央値はRAS 野生型 (65例) 78.8ヵ月、何らかの変異を有するRAS 変異型 (11例) 47.9ヵ月であったが、症例数が少なく有意差は認めなかった (HR=0.52, 95% CI: 0.2-1.4, p=0.2)。同様に、手術後のDFS中央値はそれぞれ16.1ヵ月、9.5ヵ月で、両群に有意差は認めなかった (HR=0.84, 95% CI: 0.3-1.8, p=0.6)。
結論

 CALGB80405試験のサブセット解析では、化学療法後に手術を受け、NEDに達した症例のOS中央値は5年を超えた。Bevacizumab併用療法に比べ、Cetuximab併用療法を行った患者のほうがNEDに達しやすかったが、予後に差はなかった。RAS 解析の範囲を広げることで、予後の差を識別できる可能性がある。
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