消化器癌治療の広場

第10回座談会 Pros and Consシリーズ 進行再発大腸癌治療における内服薬の組み込み 〜FOLFOXとXELOX〜 2010年3月26日 帝国ホテル東京にて

Discussion

Point 3:経済性、利便性、コンプライアンス

瀧内 比呂也 先生 瀧内:次のポイントは経済性です。FOLFOXの経済性についてはいかがでしょうか。

仁科:経済性はやや劣っているというデータがあるのは事実です。日本においては薬剤費だけを見てもやはりXELOXのほうが安価ですし、一部ジェネリックを使った場合でも、FOLFOXのほうが高額です。

橋:確かに経済性はXELOXのほうが優位ですね。ポート造設も不要ですし。

瀧内:では、利便性についてはいかがでしょう。ポートは化学療法開始時から入れたほうがよい、というご意見もあるのではないでしょうか。

江見:そうですね。大腸癌もOSが20ヵ月を超えるようになり、長い人では3年、4年と点滴治療を続けることになりますので、いずれはポートが必要になることも十分考えられます。乳癌などの化学療法を長く続けている患者さんでは、針を刺せる部位がなくなって、最終的には指先に刺している方もおられますが、今後は大腸癌でもそうしたケースが増えてくると思います。毎回針を刺す痛みから解放されることも含め、癌治療の過程をトータルで考えると、早期にポートを入れることはそれほどデメリットだとは思いません。

仁科:L-OHP130mg/m2を末梢から静注した症例の半数近くが、血管痛や点滴側の手のしびれなどを訴えられており、施行困難となる方もいました。毎回「またこの点滴をしないといけないのか」とおっしゃる患者さんもおり、温めたりステロイドを使用してみたり、いろいろ工夫をしています。
 抗癌剤を投与するにあたっては、基本的にポートを造設することを勧めている先生もおられます。ポートがあれば、アナフィラキシーショックを起こした際もすぐに血管確保ができますし、ポートから採血もできるシステムを院内でつくっている先生もおられます。大事な血管を何回も刺されずにすみ、L-OHP注射の痛みから解放されるということで、XELOXにおいてもポートを造設することを勧めるようにしています。

橋:私自身、L-OHP注射による血管痛のために、XELOXの患者さんにポートを入れたことがあります。しかし当院のデータでは、ポートを長く入れていると血栓症を起こしたり、途中でピンチオフするなど、さまざまなトラブルが起きています。当院でのポートトラブルの発生時期は平均8ヵ月目辺りですので、ポート造設は遅ければ遅いほうがよいと思います。

瀧内:Capecitabineはたくさんの錠数を朝晩飲まなければなりませんが、これに関してはどう思われますか。

仁科:錠剤のサイズが結構大きいので、「これを朝晩、2週間飲むのはつらい」と言われる患者さんが少数ながらいらっしゃいましたが、ほとんどの方は問題なく服用しておられます。

江見 泰徳 先生

江見:服薬コンプライアンスの問題はcapecitabineに限らず、経口薬では十分にあり得ることです。メタ解析ではFOLFOXが優位でしたが、capecitabineの服薬コンプライアンスの不安定な部分が、結果に反映されてしまっている可能性もありますね。

山ア:私は、日本人はどちらかというと、コンプライアンスがよすぎるように思います。これは他の経口抗癌剤の話ですが、「調子が悪くなったら中止してください」と説明しているのに、下痢を起こしても吐き気がしても服用を続けている患者さんがいらっしゃいました。経口薬を服用している方の救急受診は、このパターンが多いです。副作用を上手に管理することを考えて、患者さんには「ある程度の副作用が現れた場合には、服用を控えてください」とお願いしています。

江見:今は、律儀に飲む方とそうでない方に二極化しているような気がします。以前は前者がほとんどでしたが、最近は飲んでいなくても「飲んでいます」とおっしゃる方も増えています。そういう方は当然ですが、副作用も出ないのです。

山ア:だからこそ、チーム医療が大事なのですね。医師が外来でチェックするだけでなく、看護師や薬剤師にもチェックしてもらう。

江見:日本でも専門のオンコロジーナースが増えて、主治医が血管確保などをしなくてもよいような時代になれば、チーム医療も発展し、取り組みが全然違ってくるのではないかと思います。

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