
佐藤 今回は、分子標的治療薬の副作用対策がテーマです。まずはBevacizumabの主な副作用を加藤先生にご説明いただきたいと思います。
加藤 頻度の高いものとしては高血圧があり、それに随伴して蛋白尿がしばしば起こります。鼻出血は比較的よく起こりますが、大半は圧迫によって止血できます。まれなものとしては、血栓症や消化管穿孔、創傷治癒遅延などがあります。血栓症や消化管穿孔が起こったときには早急な対応が必要です。
佐藤 比較的軽いものから、頻度は低いけれど重篤な副作用もあるということですね。患者さんはいくら頻度が少ないと言われても、そのような重篤な副作用があると説明されると、不安に思う方もいるかもしれませんね。
加藤 ただ、自覚症状のある副作用はほとんどないのがBevacizumabの特徴です。消化管穿孔や血栓症はFOLFOXなどでも発生する可能性があるため、Bevacizumabの併用によって、どのぐらい頻度が高くなるのかは微妙なところです。

佐藤 続いて、抗EGFR抗体薬の副作用について辻先生にご説明いただきたいと思います。
辻 抗EGFR抗体薬の副作用のなかで、患者さんが最も気にされるのは皮膚症状です。写真をお見せすると、驚かれる方が多いですね。そのほかにも、間質性肺炎やinfusion reactionなどがあります。
患者さんには、まず「いろいろな副作用が起こる可能性があります」と説明し、副作用の解説冊子をご自宅で読んでいただきます。次回の来院時に「どれが気になりましたか」とお聞きすると、患者さん個々の答えが返ってきます。例えば、「息ができなくなるのですか?」とおっしゃる方には「滅多に起こりませんよ」と説明し、「こんなに皮膚症状が出るのですか?」とおっしゃる方には、「皮膚症状が出ることも多いようですよ」と説明しています。副作用に対しこういった説明が必要となるのが、抗EGFR抗体薬の特性でもあります。
佐藤 抗EGFR抗体薬は皮膚症状が必ずといっていいほど起こってくるので、それを十分に説明する必要があるということですね。
辻 抗EGFR抗体薬は、副作用を上手く自己管理できずに脱落してしまう方もいらっしゃいますが、逆に上手に自己管理できれば、長く続けられることも多いですね。