虎の巻 編集会議 大腸癌化学療法編
第2回 FOLFOX/FOLFIRIの巻
3.減量基準・中止基準
佐藤 先生方は減量基準・中止基準を作成されていますか。

小松 日常診療のなかで独自の規約はつくっていません。どのレジメンも、何らかの臨床試験に参加して始めることが多いので、その試験の基準に則った一般的なやり方を採用しています。

西村 我々の施設も同じです。標準治療を始めるときは臨床試験に参加して、その基準に準じて減量・中止を判断することに慣れていったという状況です。

佐藤 臨床試験のデータは効果だけでなく、減量基準・中止基準も重視したほうがいいですね。それと同時に、先ほどのCPT-11のように、患者さんの話をよく聞いてできるだけ続けられるような個人的な基準を設けることも大切ですね。実地臨床で stop and goを行っている施設はありますか。

西村 例えば6コースでL-OHPだけを休薬するというように、きちんとコースを決めて行ってはいませんが、2週目にしびれが持続している場合はL-OHPを中止し、完全に治まれば再開するという方法をとっています。

佐藤 実地臨床では副作用を早めに察知してstopし、治まれば再びgoということですね。

吉野 1st-lineとしてのFOLFOX vs FOLFIRIを比較したGERCOR V308試験から導き出される結論は、3剤を“十分に”使うということであり、単に3剤使えばよいというわけではありません。効かなくなったレジメンを使うのではなく、効いているレジメンを効いている期間に使うということです。そして、効かなくなった、あるいは重篤な副作用が出ていると判断したら、次の治療に切り替える。その結果として、survivalが延びるわけです。臨床試験で3剤がしっかり使用された割合が高いほど、試験全体のsurvivalがよかったという結果が得られているので、3剤をきちんと使い切ることが重要です。

佐藤 副作用が出現したら、すぐに中止するのではなく、まずは効果をみないといけませんね。

吉野 要は「効果と毒性のバランス」だと思うのです。例えば、効果はあっても毒性のために中止せざるをえない場合でも、次の治療が効かなくなったときに、元の治療を再開できるかしれません。ですから、毒性で中止するときには効果をきちんと確認して、患者さんにその治療を再導入するチャンスが残っているかどうかを把握してから、次に切り替えることが重要です。

佐藤 L-OHPの市販後の使用成績調査では、投与量を体表面積換算(/m2)ではなく1人1バイアル(100mg)と決めて、それ以上は使わない施設が少なくなかったそうです。この点について、先生方はどのように思われますか。

小松 地方では経済的な理由からL-OHPを1人1バイアルで投与している施設もあって、一概には責めることはできないのですが、そうした施設から紹介されてきた患者さんにL-OHPの十分量を投与すると、効果がみられますね。 

斎藤 青森でも講演に行くと、例えば「体表面積換算で130〜140mg/bodyになると2バイアル必要になり、薬価が高いですよ」という先生方がおられるのです。しかし、高価な治療薬だからこそ、きちんと使用して効果を評価し、効かなければ中止するという考え方で進めるべきですね。

 副作用を危惧して、最初から少量で投与しているケースもあります。L-OHPもそうですが、CPT-11の場合も紹介状をよく見たら、投与量が80mg/bodyと非常に少ないので、もう1回チャレンジしたら効果がみられたという患者さんも少なくありません。抗癌剤をただ投与した、というだけでは無意味です。まずは適切な量とスケジュールを守ることが大事だと思います。副作用に応じた減量を必要に応じて行えばよいのです。

佐藤 まずは必要十分な量を投与し、効果と副作用をきちんと評価すること。それをしないまま、次のレジメンに移行しないことが重要ですね。

加藤 ある研究会の調べでも100mg/bodyを投与していた施設がいくつかあったのですが、85mg/uに変えた途端に効き始めた症例が何例もあったのです。

西村 我々の施設のトータルのdose intensityはおそらく80%程度です。仮に100mgの投与を行っていくと70%くらいに下がります。経済的な観点からいえば、効果が得られないのに1バイアル使うほうがよほど問題だと思います。用量が少なかったから効かなかったというのでは、患者さんは救われません。

久保田 FOLFOXにはFOLFOX4、FOLFOX6、mFOLFOX6などのレジメンがありますが、先生方はどのレジメンを採用されていますか。

吉野 L-OHPの日本の承認用量が 85mg/uなので、基本的にはmFOLFOX6です。欧米では転移癌に対して 100mg/uのFOLFOX6が先行されることが多いのですが、数回行ってしびれがひどくなり、自然と85mg/uのmFOLFOX6に移行しているのが現状のようです。

久保田 L-OHPの全例調査では、FOLFOX4とmFOLFOX6が同じくらい使用されており、自己判定ですが奏効率も同等だったということなので、mFOLFOX6でも効果は担保されていると考えられます。逆に、85mg/uより大幅に下げると効果が担保できないと思われます。

吉野 最初の2剤のコンビネーションの毒性が心配な場合は、初回だけsLV5FU2を行って5-FUの毒性をみておいて、2回目にFOLFOXにする方法が賢明だと思います。

佐藤 慣れない先生にはそのような方法もありますね。では、この内容で虎の巻を作っていきたいと思います。本日は、どうもありがとうございました。

 
虎の巻を見る
編集会議TOPへ
次のページへ

このページのトップへ