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9月
2014年

監修:東海中央病院 坂本純一(病院長)

ステージIIIのBRAF 野生型結腸癌におけるKRAS codon 12および13変異と無病生存期間(DFS)の関係 : 術後補助化学療法試験(N0147 Alliance)からの研究

Yoon HH., et al. Clin Cancer Res, 2014 ; 20(11)3033-3043

 遠隔転移を有する大腸癌ではKRAS変異が約40%にみられ、そのうちの90%はKRAS exon 2(codon 12, 13)に変異が生じている。切除不能大腸癌において、KRAS変異の有無は抗EGFR抗体治療への抵抗性を予測する因子として広く受け入れられているが、stage IIIを含む大腸癌における予後因子としての影響は不確かである。一方で、BRAF変異はKRAS変異と相互排他的であり、予後不良因子として報告されている。
 本報告では、大腸癌における特定のKRAS変異の予後に与える影響を調べるため、BRAF野生型stage III結腸癌患者を対象に、KRAS codon 12、13における頻度の高い7つの KRAS変異とDFSの関係をN0147試験に参加した症例dataを用いて検討した。
 対象は、術後補助FOLFOX±Cetuximab療法に関するN0147試験(2004〜2009年)で完全切除を受けたstage III結腸癌(TanyN1-2M0)である。Mayo clinicにおいて、KRAS変異は感度を5%においたDxS mutation teis Kit KR-03/04を使用し、BRAF変異はマルチプレックスアレルスペシフィックPCR法を使用して、適切なQC管理下で調べられた。
 本研究の目的は、KRAS codon12変異・codon13変異、KRAS野生型におけるDFSを比較することにあり、主要評価項目はDFS、副次評価項目は再発までの期間(TTR)と設定し、Coxモデルを用いたHRにより評価した。
 N0147試験で完全切除を受けた3,018例のうちKRAS/BRAF statusのデータが入手できたのは2,822例で、そのうち2,478例がBRAF野生型であった。2,822例中KRASBRAFともに野生型であったのは1,479例(52.4%)で、KRAS codon 12、13変異は999例(35.4%)でみられた。999例のうち codon12変異を有していたのは27.6%(779/2,822例)、codon 13変異は7.8%(220/2,822例)であった。codon 12の変異はc.35G>A(p.G12D)(378例)、c.35G>T(p.G12V)(213例)、c.34G>T(p.G12C)(82例)、c.35G>C(p.G12A)(49例)、c.34G>A(p.G12S)(52例)、c.34G>C(p.G12R)(5例)、codon 13はc.38G>A(p.G13D)(220例)であった。
 KRAS変異型群のベースラインの背景因子をKRAS/BRAF野生型群と比べると、KRAS変異型群はより高齢で(年齢中央値58歳 vs 56歳、p=0.0008)、性別では女性(48% vs 43%、p=0.0041)、腫瘍部位は近位(59% vs 37%、p<0.0001)が多かった。Codon 12変異群の腫瘍は組織学的に低グレードが多く、codon 13変異群では高グレードが多くみられた。DNA mismatch repair (MMR) statusはKRAS変異型群、野生型群双方でproficient MMR(pMMR)に比べてdeficient MMR(dMMR)が低頻度であった(KRAS変異型群5% vs 95%、KRAS野生型群8% vs 92%)。KRAS野生型群との比較では特にcodon 12変異群のdMMRの割合は低く(3% vs 8%、p<0.0001)、dMMRとcodon 12変異には逆相関がみられた(OR 0.28、95%CI 0.18-0.44、p<0.0001)。一方codon 13変異群とKARS野生型群ではdMMRは同率にみられた(9% vs 8%)。Codon 12 変異と有意に関連する独立因子は、近位腫瘍、高齢、女性、腫瘍低グレードで、codon 13変異では近位腫瘍であった。
 次にBRAF野生型患者2,478例について生存期間を解析した。43.2ヵ月の追跡期間(中央値)でDFSのイベントは687件で、353例が死亡した。また、TTRに関しては、観察打ち切り例の追跡期間42.4ヵ月(中央値)で616イベントが生じた。
 主要評価項目であるDFSは、患者背景やMMRの状態に関係なく、KRAS野生型群に比べてcodon 12変異群でKRAS野生型群との間に有意差がみられた(3年DFS 68% vs 77% ; 単変量HR 1.50、95%CI 1.28-1.76、p<0.0001 ; 多変量HR 1.52、1.28-1.80、p<0.0001)。Codon 13変異群でも同様に不良であった(3年DFS 67% vs 77% ; 単変量HR 1.46、95%CI 1.13-1.89、p=0.0035 ; 多変量HR 1.36、95%CI 1.04-1.77、p=0.0248)。TTRに関しても、codon 12変異群(多変量HR 1.60、95%CI1.34-1.91、p<0.0001)、codon 13変異群(HR 1.34、95%CI 1.01-1.78、p=0.446)ともDFSと同様の結果であった。
 Codon 12変異群では6つの変異のうちc.35G>A(p.G12D)、c.35G>T(p.G12V)、c.34G>T(p.G12C)、c.35G>C(p.G12A)、c.34G>C(p.G12R)の5変異が単変量解析でも多変量解析でも野生型群に比べて有意にDFS、TTRが不良であった。
 探索的な解析において、腫瘍径やN stage、MMR statusを含む因子で、codon 12、13変異とOSとの関連を調べたが、有意な影響を与える因子は認めなかった。
 また、2008年以前にランダム化されたKRAS変異型/野生型患者を対象に、Cetuximab療法のベネフィットに関するKRAS statesの予測能を調べたところ、Cetuximab投与の有無にかかわらずKRAS codon 12、13変異とDFSとの関連はみられなかった。
 ステージIII結腸癌において、KRAS codon 12、13変異はKRAS/BRAF野生型に比べDFS短縮に有意に関連していた。Codon 12変異ではc.34G>A(p.G12S)以外の変異すべてがDFS短縮に強く関連していた。Codon 12変異ではpMMRに比べdMMR の頻度が低く、またcodon 13変異やKRAS野生型に比べdMMRは低率であったが、これはcodon 13群の患者が少数であることによるものであろう。以上の結果から、術後補助療法の段階で、codon 12および13が病勢進行に果たす役割は重要であると考えられる。

監訳者コメント

Stage III結腸癌治癒切除後におけるDFSとKRAS変異との関連が明らかに

 本研究は、BRAF野生型stageIII結腸癌における特定のKRAS変異とDFSとの関連を、大規模試験において評価した重要な報告である。BRAF変異の影響を排除したpopulationにおいては、DFS短縮とKRAS codon 12、13変異とは有意に関連していた。OSはimmatureであり、KRAS変異との関連が見いだせなかったのは残念な点であるが、DFSがOS surrogacyを有していると考えれば同様に重要である。特にcodon 12, 13の特定の7つの変異に関して比較されており、症例数は少ないものの、G12Rにおいては強い関連を示し興味深い結果であった。またG13Dに関しては同じKRAS変異の中でも活性が低いと考えられているが、本研究においてはcodon 12の変異と同様にDFSと強く関連していることが報告された。現在は治癒切除例に対するKRAS変異解析は、実臨床では行われておらず測定困難であるが、このような知見の積み重ねにより再発高リスク患者の選別が行われることが望ましいと考える。
 近年、切除不能大腸癌においてAll RAS解析が推奨されており、minor RAS変異においてもKRAS exon 2変異と同様に抗EGFR抗体の効果が見込めないことが明らかになりつつある。治癒切除後大腸癌において、切除不能例と比較してRAS変異がどのような役割を果たしているかは不明であるが、同様の解析が試料豊富な切除例においてもなされていくことであろう。

監訳・コメント:独立行政法人地域医療機能推進機構 九州病院 血液・腫瘍内科 牧山 明資(医長)

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