論文紹介 | 毎月、世界的に権威あるジャーナルから、消化器癌のトピックスとなる文献を選択し、その要約とご監訳いただいたドクターのコメントを掲載しています。

3月
2014年

監修:東海中央病院 坂本純一(病院長)

切除不能進行再発大腸癌の二次治療としてのFOLFIRI±panitumumabに関する第III相ランダム化比較試験の最終結果

Peeters M., et al. Ann Oncol., 2014 ; 25 : 107-116

 20050181試験は遠隔転移を有する大腸癌患者のsecond-line FOLFIRI±panitumumab療法を検討した第III相オープンラベルランダム化比較試験であり、初回解析(J Clin Oncol, 2010 ; 28 : 4706-4713)ではKRAS野生型でPFSに関するpanitumumabの有意な上乗せ効果を認めている。一方、OS延長効果に有意差はみられなかった。今回、最終患者登録から30ヵ月後の最終解析結果を報告する。
 対象はfluoropyrimidineをベースとした治療中または治療後6ヵ月以内に病勢進行が認められた遠隔転移を有する大腸癌患者1186例で、FOLFIRI療法(単独群)またはFOLFIRI+panitumumab療法(併用群)にランダムに割り付けた。
 主要評価項目は中央放射線委員会によるpanitumumabのPFS、OSに対するKRAS変異状況別効果で、ほかに奏効率、QOL、安全性を評価した。
 KRAS変異状況が確認できたのは1083例で、597例がKRAS野生型(WT群:併用群303例、単独群294例)、486例がKRAS変異型(MT群:238例、248例)であった。追跡期間中央値は、WT群の併用群59.0週、単独群45.5週、MT群の併用群45.5週、単独群41.0週であった。
 最終解析時、WT群の93%、MT群の96%が病勢進行または死亡していた。PFS中央値はWT群では併用群6.7ヵ月、単独群4.9ヵ月で、病勢進行または死亡の相対リスクが併用群で18%低下していた(HR 0.82、95%CI 0.69-0.97、p=0.023)。MT群のPFS中央値は併用群5.3ヵ月、単独群5.4ヵ月と同等であった(HR 0.94、95%CI 0.78-1.14、p=0.56)。OS中央値はWT群では併用群14.5ヵ月、単独群12.5ヵ月で併用群の相対リスクは8%低下していたものの有意差はなかった(HR 0.92、95%CI 0.78-1.10、p=0.37)。MT群ではOS中央値11.8ヵ月vs 11.1ヵ月で同等であった(HR 0.93、95%CI 0.77-1.13、p=0.48)。
 奏効率は、WT群では併用群36%、単独群10%で併用群が優れていた(オッズ比5.50、95%CI 3.32-8.87、p<0.0001)が、MT群ではpanitumumabの上乗せ効果はみられなかった(併用群13% vs 単独群15%、オッズ比0.93、95%CI 0.53-1.63、p=0.89)。
 WT群において皮膚毒性とPFSに関して解析したところ、Grade 2-4の皮膚障害を生じた併用群は単独群に比べてPFSが有意に延長し(中央値7.4ヵ月 vs 5.1ヵ月、HR 0.72、95%CI 0.60-0.87、p=0.0006)、OSについても同様にGrade 2-4の併用群で有意に延長がみられた(中央値16.6ヵ月 vs 12.7ヵ月、HR 0.80、p=0.025)。
 また前治療を解析すると、WT群において一次治療でL-OHPまたはL-OHP+bevacizumab療法を受けていた患者では併用群が単独群に比べてPFS中央値が有意に延長していた(L-OHP:p=0.001、L-OHP+bevacizumab:p=0.014)。OSはL-OHP、L-OHP+bevacizumabどちらも併用群で改善傾向がみられたが、有意差はなかった。
 QOLはEQ-5D HISおよびEQ-5D OHRで評価したが、ベースラインからの変化に治療群間での差はなかった。安全性のプロフィルは初回解析と同様であった。WT群、MT群ともに16%の患者で、副作用によりpanitumumab投与中止に至った。治療群間で5%を超える差のみられたGrade 3/4の副作用は、WT群では皮膚障害、低カリウム血症、MT群では皮膚障害、口内炎であり、EGFR阻害薬の副作用として予測されるものであった。
 遠隔転移を有する大腸癌患者に対するsecond-lineのFOLFIRI±panitumumabを検討した本最終解析では、初回解析と同様、KRAS野生型群で奏効率、PFSにおける panitumumabの有意な上乗せ効果が、OSに関しては改善傾向が認められた。WT群ではEGFR阻害薬に共通する皮膚障害が高Gradeであると併用群の奏効率、PFS、OSが単独群に比べ優れていたが、一方では併用療法を受けている患者で早期にGrade 2-4の皮膚障害を発症しない患者は治療を中止すべきかどうかという問題が生じてくる。しかし治療後期あるいは4コースを終了してから皮膚障害を起こす患者もいるため、治療中止に当たっては注意が必要である。高Gradeの皮膚障害を起こした患者のQOLは低Gradeまたは皮膚障害を起こさなかった患者に比べて劣ってはいなかったため、皮膚障害は高グレード患者に対する効果を示す有用なバイオマーカーと考えられるであろう。

監訳者コメント

Second-lineでのPanitumumab(20050181試験)の有効性・安全性のアップデート解析

 切除不能進行大腸癌のsecond-line治療としてのFOLFIRIへのpanitumumabの上乗せ効果を検証した20050181試験のアップデート解析で、既報(J Clin Oncol, 2010 ; 28 : 4706-4713)に同じくKRAS野生型でのpanitumumabの効果・安全性が確認された。サブ解析(forest plot)で、LDH高値の症例ではOSも有意に延長しており、抗EGFR抗体薬の特徴ともいえる腫瘍量が多い症例での有用性を裏付ける結果と思われる。
 First-line治療での臨床試験(PRIME, PEAK, FIRE-3)において抗EGFR抗体薬は有意にOS延長効果がみられており、本試験でもKRAS野生型においてsecond-line治療としてのFOLFIRIへのpanitumumabの上乗せへ効果が発揮された印象をもった。抗EGFR抗体薬の最適な治療ラインを検討する上で本試験の結果を考慮するとともに、患者選択による更なる治療効果の向上のためにバイオマーカーとしてのall RAS遺伝子解析の早期の保険承認に期待したい。

監訳・コメント:福岡山王病院外科部長(国際医療福祉大学准教授) 平田 敬治

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