論文紹介 | 毎月、世界的に権威あるジャーナルから、消化器癌のトピックスとなる文献を選択し、その要約とご監訳いただいたドクターのコメントを掲載しています。

MRIにより診断された局所進行直腸癌における同時化学放射線療法後の手術および術後補助CAPOX(capecitabine+oxaliplatin)と、導入CAPOX後に同時化学放射線療法および手術とを比較する第U相無作為化試験

Phase II, randomized study of concomitant chemoradiotherapy followed by surgery and adjuvant capecitabine plus oxaliplatin (CAPOX) compared with induction CAPOX followed by concomitant chemoradiotherapy and surgery in magnetic resonance imaging-defined, locally advanced rectal cancer: Grupo Cáncer de Recto 3 Study
Fernández-Martos C, Pericay C, Aparicio J, Salud A, Safont M, Massuti B, Vera R, Escudero P, Maurel J, Marcuello E, Mengual JL, Saigi E, Estevan R, Mira M, Polo S, Hernandez A, Gallen M, Arias F, Serra J, Alonso V. J Clin Oncol. 2010; 28(5): 859-865.

 局所進行直腸癌に対する化学放射線療法(CRT)後の全直腸間膜切除(TME)と術後補助化学療法は局所再発抑制の標準治療である。一方、同時CRTとTME前の導入化学療法による高い治療効果が予備的研究により示されている。そこで今回、こうした患者を術前補助CRT(capecitabine(CPT-11)+oxaliplatin(L-OHP)[CAPOX]/RT)後にTMEおよび術後補助CAPOX(A群:52例)、または導入CAPOX後に術前補助CRTおよびTME(B群:56例)に割り付け、有用性を評価した。
 その結果、病理学的な完全奏効率はA群13.5%、B群14.3%となり(p=0.94)、またダウンステージング率、R0切除率、腫瘍縮小率および18ヵ月の治療奏効維持生存率(82% vs 76%、p=0.368)も同等となった。抗癌剤投与量はB群で有意に多く(CPT-11、L-OHPともにp<0.0001)、有害事象(grade 3/4)はCRT時には両群同等であったが、B群の導入CAPOX時よりもA群の術後補助CAPOX時で多く認められた。
 以上より、局所進行性直腸癌に対する導入化学療法の有用性が示唆された。

監訳者コメント

 術前補助CRT(CPT-11+L-OHP[CAPOX]/RT)後にTMEおよび術後補助CAPOXを投与したA群と、.導入CAPOX後に術前補助CRTおよびTMEを施行したB群間で、pCR、R0切除率、ダウンステージング率などには差は認められなかった。
 有害事象に関してもCAPOXによるCRT施行期間のgrade3/4の有害事象の発症頻度に差はなかったものの、A群のadjuvant CT期間の有害事象は54%、B群のinduction CT期間は19%と有意差がみられた(p=0.0004)。
 さらにA群では25%で治療が開始できず、4サイクルすべての治療が実施できたのが51%であったのに対し、B群では全例治療開始が可能で、92%が4サイクルすべての治療が実施可能であった。
 このように、局所進行直腸癌に対するCRTおよびTMEの施行順は、導入CAPOX、CAPOXを用いたCRT、TMEである。この方法が、有効率を低下させず、有害事象を低下させ、必要な治療を完遂させる有用な治療法であると考えられる。

監訳・コメント:済生会福岡総合病院・外科 江見 泰徳(部長)

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