論文紹介 | 毎月、世界的に権威あるジャーナルから、消化器癌のトピックスとなる文献を選択し、その要約とご監訳いただいたドクターのコメントを掲載しています。

Stage II/IIIの切除可能な結腸癌におけるKRASBRAFの予後予測の役割:PETACC-3、EORTC40993、SAKK60-00試験のトランスレーショナル研究の結果

Prognostic role of KRAS and BRAF in stage II and III resected colon cancer: results of the translational study on the PETACC-3, EORTC 40993, SAKK 60-00 trial
Roth AD, Tejpar S, Delorenzi M, Yan P, Fiocca R, Klingbiel D, Dietrich D, Biesmans B, Bodoky G, Barone C, Aranda E, Nordlinger B, Cisar L, Labianca R, Cunningham D, Van Cutsem E, Bosman F.
J Clin Oncol. 2010; 28: 466-474.

 Stage II/IIIの結腸癌患者3,278例に対する5-FU(fluorouracil)/LV(leucovorin)+irinotecanの術後補助化学療法を検討した第III相無作為化試験のデータより、KRASおよびBRAF変異の予後予測能を評価した。
 KRAS変異は37.0%、BRAF変異は7.9%に認められた。多変量解析の結果、KRAS変異は高中分化腺癌で多かった(p=0.0016)。BRAF変異は女性(p=0.017)、右側結腸、高齢(60歳以上)、低分化癌・粘液癌および高頻度のマイクロサテライト不安定性(MSI)で多かった(いずれもp<0.0001)。KRAS変異の有無により無再発生存(RFS)および全生存(OS)に差はなかった。BRAF変異があるとRFSに有意差はないがOSは有意に短かった(p=0.007) 特にMSI低頻度(MSI-L)およびマイクロサテライト安定性(MSS)でBRAF変異があるとOSは有意に短かった。(ハザード比2.19 p=0.00034)。
 Stage II/III結腸癌においてKRAS変異状態で予後の予測は困難だが、低頻度MSI/MSSにおいてBRAFはOSの優れた予測因子である。

監訳者コメント

 KRASに変異があるとセツキシマブやパニツムマブなどの抗EGFR抗体が効かないので、KRASは抗EGFR抗体の効果予測因子とされている。
 本論文ではStage II/III結腸癌においてKRAS変異の有無で予後が変わらないので、KRASは予後予測因子でないことが示されている。シグナル伝達経路においてKRASの下流にあるBRAFも同じように考えられるが、KRASと異なり、特にMSI-L/MSSにおいてBRAFは予後予測因子であるとされている。
 進行癌でもFOLFIRIやFOLFOXに抗EGFR抗体セツキシマブを上乗せするCRYSTAL試験やOPUS試験では、BRAFに変異があるとセツキシマブを加えない化学療法のみの群では生存が半分以下になることが報告され、BRAFが予後因子であるとされている。
 2010年4月から国内で保険適応になるのはKRAS検査でありBRAFは対象ではない。BRAF変異の頻度は低いため、一般臨床ではKRAS変異の結果のみで抗EGFR抗体の適応を決めてよいとされている。大腸癌においては、KRASというバイオマーカーが初めて登場した。本論文は大規模臨床試験に伴ったバイオマーカー解析研究の結果である。 これからはバイオマーカー研究と臨床試験が両立しなければ有効に進めない。将来BRAFを含め他のバイオマーカー研究が進み、一撃必殺の薬が登場して治療方法が激変することを期待する。

監訳・コメント:国立病院機構大阪医療センター 三嶋 秀行(外来化学療法室長 外科医長)

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