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中枢神経系に転移した患者におけるbevacizumabの安全性

Bevacizumab safety in patients with central nervous system metastases
Besse B, Lasserre SF, Compton P, Huang J, Augustus S, Rohr UP.
Clin Cancer Res. 2010; 16: 269-278.

 1997年、肝癌に対するbevacizumabの臨床試験で致死的な脳出血例が認められ、これ以降、中枢神経系(CNS)への転移例は除外されるようになった。今回、第U/V相無作為化試験13件(データA:8,443例)と単群オープンラベル試験2件(データB:4,382例)(データA、BともにCNS転移例は除外)、ならびにCNS転移131例を含むプロスペクティブ試験2件(データC)を用い、このような基準が現在も正しいかどうかを探索的に解析した。
 データAでは潜在性の脳転移が187例に認められ、脳出血の頻度は本剤群3.3%(Grade 4:3例)、対照群1.0%(Grade 5:1例)であった。データBでは潜在性脳転移321例中、脳出血は0.9%(Grade 1:2例、Grade 3:1例)、データCでは0.8%(Grade 2:1例)であった。
 以上、CNS転移例における脳出血の頻度は、本剤と関係なく同等であることから、転移性大腸癌などの各癌種の臨床試験や治療において、こうした症例を除外する必要はないと考えられた。

監訳者コメント

 中枢神経系への転移のある患者さんの治療において、bevacizumab併用療法実施による脳出血の出現頻度は、中枢神経系への転移の無い患者さんと比べても特に多いものではなく、転移のある群を危険視する必要が無いことが、最もエビデンスレベルの高い、複数の臨床試験のメタアナライシスにおいて証明された。
 優れた治療法があるにも関わらず、投与が出来なかった脳転移を有する患者さん達にとっては福音となる報告となった。しかし、この薬剤の特徴として一定の割合で出血やその他の特有な有害事象が生じる可能性があることは事実であるため、今後、脳転移のある患者さんに投与する際にも、今まで同様慎重な観察が必要であることは言うまでもないことであろう。

監訳・コメント:北海道大学病院腫瘍センター 小松 嘉人(准教授)

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