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7月
監修:九州大学大学院 消化器・総合外科 診療准教授 沖 英次

胃癌

進行胃癌に対する化学療法単独 vs. 胃切除+術後補助化学療法(REGATTA試験)


Fujitani K, et al.: Lancet Oncol. 17(3): 309-318, 2016

 肝転移、腹膜転移、遠隔リンパ節転移などの非治癒因子を有する進行胃癌の予後は不良で、標準治療は化学療法である。1980年代前半から2000年代前半における臨床試験では、1つの非治癒因子のみを有する進行胃癌に対して化学療法に胃切除を追加することによる生存期間の延長が示唆されているが、大部分は後向き研究や単施設のケースシリーズであったり、PSが良好な症例や腫瘍量が少ない症例を登録するなど選択バイアスが生じている可能性がある。そこで、日本(JCOG)と韓国(KGCA)により、1つの非治癒因子のみを有する進行胃癌に対する標準的な化学療法への胃切除追加による生存改善効果を検討する、多施設共同無作為化第V相試験(REGATTA試験)を実施し、最終結果が報告された。

 対象は20〜75歳、ECOG PS 0/1、経口摂取可能、cT1-3で、1つの非治癒因子のみを有し組織学的に胃腺癌と認められた患者であり、非治癒因子は、肝転移(H1)、腹膜転移(P1)、大動脈周囲リンパ節転移(16a1/b2)とした。

 対象患者は、胃切除+術後化学療法群と化学療法単独群に1:1で無作為に割り付けられた。胃切除+術後化学療法群はD1郭清を伴う胃切除術を行い、手術後8週間以内にS-1+Cisplatin(CDDP)投与を行った。両群の化学療法はS-1(80mg/m2/day, day 1-21)+CDDP(60mg/m2, day 8)を5週1コースとして、増悪または忍容できない有害事象が発現するまで続けられた。

 主要評価項目はOS、副次評価項目はPFS、安全性である。2年OS割合の差を10%と仮定して(化学療法単独群20%、胃切除+術後化学療法群30%)、片側α=5%、検出力80%で、294のイベント発生が必要であり、必要症例数は330例と算出された。

 2008年2月4日〜2013年9月17日の間に175例(日本95例、韓国80例)が登録され、化学療法単独群86例、胃切除+術後化学療法群89例に割り付けられた。両群の患者背景は基本的にバランスが取れていた。ただ、原発巣の位置に関しては、胃切除+術後化学療法群では上部、中部、下部で均一であったが、化学療法単独群では半数以上が中部であった。なお、両群で最も多くみられた非治癒因子は、腹膜転移(75%)であった。

 110イベントが報告された時点で胃切除+術後化学療法群が化学療法単独群を有意に上回る可能性が低いと判断されたため、データモニタリング委員会より中止勧告され、164例が登録された2013年6月3日時点における中間解析が報告された。そして、2013年6月3日から患者登録が中止された2013年9月17日までの間に11例が登録されたため、最終登録者数は175例となり、追跡期間中央値14.5ヵ月、イベント発生数144例におけるupdate解析が報告された。

 2年OS割合は化学療法単独群31.7%、胃切除+術後化学療法群25.1%、OS中央値はそれぞれ16.6ヵ月、14.3ヵ月であった(HR=1.09, 95% CI: 0.78-1.52, 片側p=0.70)。また、2年PFS割合はそれぞれ8.4%、13.0%であった(HR=1.01, 95% CI: 0.74-1.37, 両側p=0.96)。なお、化学療法単独群86例のうち5例は化学療法施行中に非治癒因子が消失したため治癒切除を受け、update解析の時点で3例は再発を認め、1例は無再発、1例は死亡していた。

 事前に規定していたOSのサブグループ解析では、N0-1(HR=1.79, 95% CI: 1.14-2.83, 両側p=0.011)、原発巣の位置が上部(HR=2.23, 95% CI: 1.14-4.37, 両側p=0.017)の症例において、胃切除+術後化学療法群で有意に不良であった。

 N0-1症例における化学療法のコース数中央値は、化学療法単独群7.0コース、胃切除+術後化学療法群4.5コースであった。また、原発巣上部例における化学療法のコース数中央値は、化学療法単独群6コースに対して、胃切除+術後化学療法群(全例が胃全摘術)は3コースと、化学療法単独群の半分であった。一方、原発巣下部例においては胃切除+術後化学療法群(69%が幽門側胃切除術)の化学療法コンプライアンスは保たれており、コース数中央値は6コースであった。

 Grade 3以上の有害事象は、化学療法単独群に比べて胃切除+術後化学療法群で、白血球減少、食欲不振、悪心、低ナトリウム血症が多くみられ、治療関連死は両群で1例ずつ認められた。化学療法の中止例は、化学療法単独群28%、胃切除+術後化学療法群36%であった。

 以上のように、1つの非治癒因子のみを有する進行胃癌患者に対する化学療法への胃切除追加によるOSの改善は認められず、中間解析の後に試験中止となった。この結果は、胃切除+術後化学療法群において原発巣上部例が多かったことが影響したと考えられるが、本対象における標準治療は、依然化学療法であると考えられる。



監訳者コメント:
進行胃癌に対する減量手術は生存に寄与しない

 治癒切除不能の進行胃癌に対しては、化学療法が第一選択となる。しかし実臨床では切除により腫瘍量を減らして予後の延長を図ったり、腫瘍に起因する症状回避のため減量手術が試みられることもある。胃癌治療ガイドライン第4版においても、非治癒因子が1因子の場合は減量手術の適応とされているが、その意義は未だ不明である。そこで、主要評価項目をOSとする日韓多施設共同無作為化第III相試験(REGATTA試験;JCOG0705, KGCA01)が行われた。

 結果は、2年のOS割合は化学療法単独群31.7%、胃切除+術後化学療法群25.1%であり、非治癒因子がたとえ1つであっても、胃切除術を行うことがOSの改善に何ら寄与しないことが明らかとなった。サブグループ解析の結果、上部胃癌における化学療法のコース数の中央値は、化学療法単独群6コースに対して、胃切除+術後化学療法群は3コースであった。一方、下部胃癌においては胃切除+術後化学療法群のコース数中央値は6コースであり、化学療法のコンプライアンスは保たれていた。上部胃癌では全例胃全摘が行われており、治療コンプライアンスの低下に大きく影響しているものと思われる。したがって、とくに胃全摘が必要となる上部胃癌では、減量手術を考慮しない方がよいと考えられる。

 このように、非治癒因子を伴う胃癌では、化学療法が第一選択であることが改めて示された。

監訳・コメント:がん研有明病院 消化器センター 消化器外科 胃外科 副医長 井田 智

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