論文紹介 | 毎月、世界的に権威あるジャーナルから、消化器癌のトピックスとなる文献を選択し、その要約とご監訳いただいたドクターのコメントを掲載しています。

1月
2013年

監修:東海中央病院 坂本純一(病院長)

高頻度に胃癌が発症する地域における内視鏡検査の間隔と診断時の胃癌ステージとの関係

Nam JH, et al. Cancer,2012 ; 118(20) : 4953-4960

 世界で胃癌の発症頻度が最も高いのは、韓国、日本、中国など東アジア地域である。胃癌の予後は診断時のステージに大きく関係しており、早期発見と早期治療こそが胃癌の死亡率を低下させる方法である。早期発見により低侵襲の治癒的治療が受けられ、治療後のQOLも改善が期待できる。胃癌のスクリーニングには様々な方法があるが、日本の研究ではスクリーニングを受けなかった患者に比べて間接撮影法によるスクリーニングを受けた患者で死亡のリスクが低下していたと報告されている。また最近、著者らは内視鏡検査を2年ごとに行ったところ胃癌発症率の低下と診断時高ステージの患者数減少に至ったことを報告した。内視鏡検査が胃癌関連死亡率を低下させる効果についての複数の知見に一貫性はないが、それは検査の間隔の差によるものと思われる。そこで今回、上部内視鏡検査の実施間隔と胃癌診断時のステージに関係があるかどうかをretrospectiveに調べた。
 解析対象は2004年1月〜2009年12月に韓国国立がんセンターで上部内視鏡検査を受け、病理学的に胃腺癌との診断を受けた連続患者である。診断前6ヵ月以内に内視鏡検査を受けた例、同時性多発胃癌例は解析対象から除外した。
 患者は胃癌診断に至った内視鏡検査とそれに先立つ内視鏡検査の実施時期によって以下の7群に分けた。@群1年(7〜18ヵ月)、A群2年(19〜30ヵ月)、B群3年(31〜42ヵ月)、C群4年(43〜54ヵ月)、D群5年(55〜66ヵ月)、E群>5年(>66ヵ月)、F群内視鏡検査を受けた経験なし。
 胃癌のステージはAJCC 6版に基づき早期(T1)または進行(T2以上)に分類した。腫瘍部位は日本の胃癌取り扱い規約13版に従い、近位と遠位とした。
 評価可能症例は2,485例であった。平均年齢は57.3±11.9歳で、ステージIVの患者(55.4±12.1歳)はステージI(58.0±11.5歳)、II(58.1±11.4歳)に比べて若かった。男女比は2対1で、男女間における診断時のステージに差はみられなかった。また喫煙歴、飲酒状況、教育レベル、Helicobacter pylori感染率(78.8%)に関してステージ間での差はなかった。
 内視鏡検査実施経験者1,216例における実施間隔の中央値は30ヵ月で、間隔の長さと胃癌のステージは有意に関連していた(p<0.001)。年齢、性別で補正後で、ステージが進行するリスクは実施間隔が1ヵ月延びるごとに1.0023倍(95%CI 1.0004-1.0042、p=0.013)、進行胃癌発見率は1.003倍(1.001-1.005、p=0.002)上昇していた。 ステージIの患者の割合は実施間隔が3年以内の@〜B群はそれぞれ70%前後であったのに対し、実施経験のないF群では45.5%と少なかった。年齢、性別で補正後で、@群からF群までの1年ごとの間隔の延長によるステージ進行のリスクは23%(OR=1.23、95%CI 1.19-1.28、p<0.001)であったが、@〜E群までをF群と比較すると、>5年のE群でもORは0.53で有意に高ステージ率は低く(p<0.001)、間隔が短くなるごとにORは低下し、@群ではOR=0.31(p<0.001)であった。
 進行胃癌のリスクを@群と比べると、C群(OR=2.53、p=0.001)D群(OR=2.16、p=0.004)では有意に上昇していたが、A群(OR=1.11)B群(OR=1.21)では有意な上昇はみられなかった。 次に、患者の背景因子をもとに内視鏡検査実施間隔診断時ステージとの関係をみると、40歳未満の患者(OR=1.08、p=0.192)を除いてすべてのサブグループで間隔が延長すれば高ステージのリスクも上昇している(p<0.001)ことがわかった。
 では3年以内の実施がbenefitをもたらすのはどのサブグループかということを調べたところ(評価可能758例)、胃癌の家族歴をもつグループ(OR=1.62、p=0.014)、60〜69歳のグループ(OR=1.45、p=0.041)、および分化型のグループ(OR=1.52、p=0.010)で、内視鏡検査の実施間隔が3年を超えると1年間隔に比べて診断時高ステージのリスクが高くなるという関係がみられた。 家族歴を有する場合、実施間隔3年は1年に比べて高ステージへの進行リスクが有意に高かったが(OR=2.68、p=0.010)、2年では1年との有意差はみられなかった(OR=1.88、p=0.61)。また3年と2年を比較すると3年でリスクが上昇する傾向が認められた(OR=2.05、p=0.059)。 60歳代の患者でも1年と比べて3年のリスクは高く、2年ではリスク上昇はみられなかった。分化型では2年、3年ともリスクが有意に上昇していた。
 以上の解析から、胃癌の内視鏡検査を受けた患者では実施間隔が何年であっても受けない患者に比べると診断時高ステージのリスクは低く、とくに実施間隔が3年以内であれば早期発見につながると考えられた。ただし40歳未満ではこの関係はみられなかったことから、40歳以上の人で胃癌の頻発地域に住み標準リスクを有する場合は早期発見のために少なくとも3年間隔で上部内視鏡検査を受けるべきであろう。またとくに胃癌の家族歴がある、60歳以上であるなどのリスクを有する人は内視鏡実施間隔を3年以内にするのが望ましいと考える。

監訳者コメント

東アジアでの胃癌早期発見のためには少なくとも3年毎の上部内視鏡検査が必要

 日本と同様に胃癌頻発地域である韓国における7年間のデータをretrospectiveに解析した報告である。論文では内視鏡検査を受けた患者では実施間隔が何年であっても受けない患者より胃癌診断時に高ステージであるリスクは低く、実施間隔が3年以内であれば早期発見につながる。40歳以上で胃癌頻発地域では早期発見のため3年間隔で上部内視鏡検査を受けるべきで、特に胃癌の家族歴を有する場合や、加えて60歳以上であれば内視鏡実施間隔を3年以内にするのが望ましいと結論づけている。
 本邦においては2008年消化器集団検診学会の胃内視鏡検診標準化研究会の報告で、胃内視鏡検診間隔について記載されている。押本らはEMR治療が可能な胃癌を発見するためには遂年の内視鏡検査と報告しているが、大浦らは早期胃癌を発見するためには隔年の内視鏡検査で良いと報告している。日山らはHelicobacter pylori感染と胃癌発生からみた内視鏡検診間隔は、高危険群である体部優勢胃炎は遂年検診が良いと報告しており、検診間隔については定まっていないのが現状である。いずれにせよ高危険群と低危険群に分けた対象が集約された至適な内視鏡実施間隔が本邦から発信されることに期待したい。

監訳・コメント 東海中央病院 石川 英樹(消化器内科部長、兼消化器内視鏡センター長)

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