論文紹介 | 毎月、世界的に権威あるジャーナルから、消化器癌のトピックスとなる文献を選択し、その要約とご監訳いただいたドクターのコメントを掲載しています。

4月
2012年

監修:名古屋大学大学院 医学系研究科 坂本純一(社会生命科学・教授)

D2リンパ節郭清を含むR0胃切除後に対するcapecitabine+CDDP vs capecitabine+CDDP+capecitabine+放射線同時併用療法を比較する第III相試験:ARTIST試験

Lee J. et al., J Clin Oncol. 2012; 30(3): 268-273

 胃癌に対する術後補助化学療法にsurvival benefitがあることは広く認められているが、術後の局所再発の頻度が遠隔転移同様に高いことから、術後補助化学療法と局所放射線療法(RT)との併用が注目を集めている。INT-0116試験では、術後放射線化学療法(CRT)による延命効果が手術単独療法と比較して優れていることが示されたが、胃癌に対する術後標準治療としてINT-0116レジメンが受け入れられない理由として90%の患者においてリンパ節郭清がD0またはD1にとどまっているという問題がある。D1郭清と比較したD2郭清の局所再発抑制に関する優越性は必ずしも認められていないが、アジアや欧州でD2郭清が広く実施されていることから、D2郭清術を受けた患者に対する術後CRTの有効性を評価する必要があると考えられる。
 本試験では、治癒的切除とD2郭清を受けた胃癌患者に対する術後療法としてのCRTの有効性を調査したが、この種の試験は著者らが知る限り初めてのものである。
 対象は18歳以上、ECOG PS 0〜1で、組織学的に胃腺癌と診断されR0胃切除およびD2リンパ節郭清を受けた患者である。ステージIA、IB(T2aN0)、顕微鏡的断端陽性、M1リンパ節転移または遠隔転移を有する場合は不適格とした。
 2004年11月〜2008年4月に登録された458例をcapecitabine+CDDP療法(XP群、228例:年齢中央値56歳、男性153例)またはXP+capecitabine+放射線同時併用療法(XP/XRT/XP群、230例:56歳、143例)に無作為に割り付けた。
 XP群には、capecitabine 1,000 mg/m2を1日2回、day1〜14、CDDP 60 mg/m2 day 1の3週毎投与を6コース実施した。XP/XRT/XP群にはXP群と同様のレジメンを2コース実施後、XRT[45 Gy(1.8 Gy/day、週5日、5週間)の照射中はcapecitabine 825 mg/m2を1日2回併用]を実施し、その後XP群と同様のレジメンを2コース追加した。
 主要評価項目はdisease-free survival(DFS)、主な副次評価項目はOS、再発率、および安全性とした。
 治療完遂率は、XP群75.4%、XP/XRT/XP群81.7%であった。
 追跡期間中央値53.2ヵ月(範囲36.9〜77.3ヵ月)で127例の再発が認められた(XP群72例、XP/XTR/XP群55例)。局所領域での再発はXP群8.3% vs XP/XTR/XP群4.8%(p=0.3533)、遠隔転移は24.6% vs 20.4%(p=0.5568)でともに有意差は認められなかった。
 3年DFSは全症例の解析ではXP群74.2%、XP/XTR/XP群78.2%(p=0.0862)と有意差はなかったが、病理学的リンパ節転移陽性例(XP群193例、XP/XTR/XP群203例)では72.3% vs 77.5%でXP/XTR/XP群が有意に良好であった(p=0.0365)。リンパ節転移陽性例ではステージと治療群による多変量解析でも、XPにXRTを追加することでDFSに延長が認められた(HR 0.6865、95%CI 0.4735-0.9952、p=0.0471)。なお、解析時死亡は108例のみであったため、OSについては解析できなかった。
 安全性はXP群226例、XP/XTR/XP群227例にて評価した。グレード4の副作用は、XP群で好中球減少(5.7%)、下痢(0.4%)、貧血(0.4%)、XP/XTR/XP群で好中球減少(4.8%)が認められたのみであった。グレード3の好中球減少はXP群35.0%、XP/XTR/XP群43.6%であった。有害事象(主として好中球減少)のため減量や投与延期を余儀なくされた割合はXP群52%、XP/XTR/XP群35%であったが、変更後はグレード3/4の好中球減少はGM-CSFなどを用いなくても自然に軽快する例が多かった。Capecitabineに起因する手足症候群の発生割合(XP群、XP/XTR/XP群の順)はグレード1が41.6%、38.7%、グレード2が11.5%、7.4%、グレード3が2.2%、3.1%であった。治療関連死は両群1例ずつであった。
 胃癌の術後療法としてのXP±capecitabine+同時併用CRTは忍容性に優れ、D2郭清後の患者に対して実施可能であったが、術後CRTによるDFSの統計学的なXPに対する上乗せ効果は認められなかった。本試験では追跡期間中に予定したイベント数に達しなかったが、これは対象患者の約60%がステージIBかIIで予後良好であるためだと考えられる。本試験の患者観察は今後も継続するが、D2郭清後で病理学的にリンパ節転移陽性の患者に対する化学療法と化学療法+CRTとを比較する第III相のARTIST-II試験が現在計画されている。

監訳者コメント

D2リンパ節廓清後の胃癌術後補助療法に化学放射線療法の追加は受け入れられるか?
-ARTIST試験の結果より-

 胃癌術(前)後の補助療法は米国(INT-0166試験)、欧州(MAGIC試験)、アジア(ACTS-GC試験、CLASSIC試験)で行われた手術単独群との比較から有効性が明らかとなった。一方、放射線療法はD2リンパ節廓清が標準的の行われている地域ではその効果は懐疑的であった。
 この様な中でARTIST試験ではD2リンパ節廓清を受けた胃癌に対する術後のXP療法をコントロール(手術単独ではない)に置いた放射線治療(XP/XRT/XP療法)の上乗せ効果が検討された。両治療群の完遂率(XP群:75.4%、XP/XRT/XP群:81.7%)は非常に高く、忍容性の優れた治療法と判断される。主要評価項目は術後3年目のDFSでXP群:74.2%、XP/XRT/XP群:78.2%と統計学的有意差は認められず、XP療法に対する放射線療法の上乗せ効果は無いという結果になった。しかしサブグループ解析ではあるがリンパ節転移陽性群のDFSでXP群:72.3%、XP/XRT/XP群:77.5%と放射線療法の可能性が示唆された。
 今後リンパ節陽性群を対象としたARTIST-IIの結果に注目したい。

監訳・コメント:広島市立安佐市民病院 平林 直樹(副院長)

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