論文紹介 | 監修:京都大学大学院 医学研究科 坂本純一(疫学研究情報管理学・教授)

6月

ステージIIおよびIII結腸癌への週1回bolus LV/5-FUにL-OHPを併用する術後補助化学療法:NSABP C-07の結果

Kuebler JP, et al., J Clin Oncol.2007; 25, published April 30, 2007 (early release)

 第III相臨床試験NSABP C-07の結果を報告する。ステージIIおよびIIIの結腸癌に対する術後補助療法として、週1回bolus LV/5-FUレジメ(FULV)に2週間ごとにL-OHPを上乗せするレジメ(FLOX)がDFSに及ぼす効果を主要評価項目とした。
 登録患者はステージII(T3-4、N0、M0)およびステージIII(T1〜4、N1〜2、M0)の結腸癌患者(治癒切除術を施行し、割り付け前42日以前に残存病巣が認められなかったもの、腫瘍の遠位端が肛門縁から12cm以上離れている)2,492例である。2000年2月1日〜2002年11月15日にかけてFULV群(1,245例)とFLOX群(1,247例)に無作為に割り付けた。投与方法は以下の通りである。FULV群:LV 500mg/m2を2時間かけて静注、LV静注開始1時間後に5-FU 500mg/m2をbolus静注する。週1回(各サイクルのday 1、8、15、22、29、36)、6週連続投与後2週休薬を1サイクルとし、3サイクル施行する。FLOX群:LVおよび5-FUはFULV群と同様に投与する。L-OHP 85mg/m2を各サイクルのday 1、15、29に、LVおよび5-FU投与前に2時間かけて静注する。両群とも3サイクル施行する。
 被験者のうち、2,407例(96.6%、FULV群=1,207例、FLOX群=1,200例)の結果を解析に使用した。最低34ヵ月の追跡中、385例(16%)が解析時に死亡し、生存患者の追跡期間中央値は42.5ヵ月であった。DFSのハザード比(FLOX対FULV)は0.80(95%CI 0.69〜0.93)であり、これはFLOX群における20%の相対リスク低下に相当する(p=0.0034)。3年DFS率はFULV群で71.8%、FLOX群で76.1%であり、4年DFS率はFULV群で67.0%、FLOX群で73.2%であった。グレード3/4の神経毒性はFLOX群で8.2%/10.2%に、FULV群で0.7%/0%に発現した(p<0.001)。腸壁肥厚に関連する下痢で入院した率はFLOX群で5.5%、FULV群で3.0%であった(p<0.01)。化学療法投与後60日以内に死亡した患者はFULV群で1.0%、FLOX群で1.2%であり、両群間に有意差は認められなかった(p=0.49)。
 本試験により、FULVにL-OHPを上乗せするFLOXレジメは、ステージIIおよびIIIの結腸癌患者におけるDFSを有意に改善した。FLOXレジメは臨床現場で効果的な選択肢として推奨しうる。

考察

利便性の点で優れたFLOXがFOLFOXに取って代わる可能性もあるが、ステージIIに対する適応については慎重に検討すべき

 ステージIIおよびIII結腸癌に対する補助化学療法を検討した、NSABPの第III相臨床試験(C-07)の結果が報告された。本試験では、週1回のFULVに2週ごとのL-OHPが上乗せするFLOXが採用され、FULV単独と比較された。L-OHPを上乗せしたため、当然神経毒性はFULVに比較して高かったが、DFSで優位に優れていることが証明された。本研究ではFLOXが、DFSの点でFULVより優れており、FOLFOXと同等の効果のある可能性が示された点でその意義は大きい。しかし、特に本研究で注目されるのは、bolus投与であるためにリザーバーの設置が不要であることなど、利便性の点で明らかにFOLFOXより優れていることである。将来利便性に優れた本法がFOLFOXに取って代わる可能性は十分にある。なお、全体では4年目のDFSでFULV群67%に対し、FLOX群73.2%と6.2%の改善が認められたが、層別に見てみるとステージIIでは、それぞれ81%と84.2%であり、わずか3.2%の差しか認められていない。わが国の手術のクオリティの高さを考慮すると、ステージIIに対する適応については慎重に検討するべきであろう。

監訳・コメント: 癌研究会有明病院 山口 俊晴
(消化器センター・消化器外科部長兼院長補佐)

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