論文紹介 | 監修:京都大学大学院 医学研究科 坂本純一(疫学研究情報管理学・教授)

2月

結腸・直腸癌の切除不能肝転移症例に対する術前L-OHP/5-FU/LV療法
(FOLFOX 4):A North Central Cancer Treatment Group臨床第II相試験

Alberts SR, et al., J Clin Oncol. 2005; 23(36): 9243-9249

 結腸・直腸癌の肝転移症例に対する、外科的切除についての評価やレビューは広く行われているが、切除不能症例に対する切除の可能性の向上を目的とした術前化学療法の実施については十分研究されていない。
 結腸・直腸癌肝転移症例で、エキスパートな肝臓外科医により転移巣が切除不能と判断され、肝外病変および慢性肝硬変がなくECOGの PSが0〜2の患者に対して、5-FU/LV/L-OHP(FOLFOX 4)療法を施行し、肝切除の可能性について手術前後の画像診断を研究グループで再度評価した。術式の評価は完全切除可能(S-CR)、部分切除可能(S-PR)、切除不能(S-UR)に分類した。評価可能39例中2例以上のS-CRをもって、S-CR率向上を見込めるactivityを得るために十分な根拠とし、デザインした。
 本解析では44例中42例が評価可能であった。手術前に比べて25例(60%)は腫瘍サイズが手術後に縮小していた。17例(40%)には中央値6ヵ月の化学療法後に手術が施行された(S-CR=14例;S-PR =1例;S-UR =2例)。中央値22ヵ月の術後追跡期間(13〜32ヵ月)において、15例のS-CR+S-PR例のうち11例(73%)に再発が認められた。OSの中央値は26ヵ月であった。
 本データは、FOLFOX 4は結腸・直腸癌の肝限局転移例において高い奏効率(CR、PR、腫瘍縮小)を示し、治療開始時には切除不能と判断された患者の一部において、病変部の切除を可能にした。しかし術後の再発率は高く、肝の遺残腫瘍を含めて73%の患者に再発が認められた。本試験における有望な結果に基づき、さらなる試験が望まれる。

考察

切除不能大腸癌肝転移症例に対するNeoadjuvant Chemotherapyは有用

 本試験はFOLFOX 4による切除不能結腸・直腸癌の肝転移症例に対するneoadjuvant chemotherapyの有用性を検討したものである。
 本邦においては切除不能の基準が各施設で異なり、共同研究を行う場合問題となる。本試験では腫瘍と肝静脈、門脈、下大静脈との位置関係や切除区域、残肝機能で決め、さらにretorospectuiveに切除の可能性を確認し、一定の切除基準を保っている。本試験は2相試験のため症例数が42例と少ないが、化学療法後の切除率が40%と高値であり、FOLOFX 4の大腸癌肝転移に対するneoadjuvant Chemotherapyとしての有用性が示唆される。しかし術後の再発率が73%と術後の化学療法が問題となる。
 現在このほかに切除不能肝転移に対するneoadjuvant Chemotherapyの多施設共同試験が施行中で、その結果を待つ必要はあるが、本試験によりFOLFOX療法のneoadjuvant Chemotherapyとして有用性が示唆されている。

監訳・コメント:箕面市立病院胃腸センター 加藤 健志(外科・副部長)

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