論文紹介 | 監修:財団法人癌研究会附属病院 藤田力也(消化器内科・部長/内視鏡部・部長)山口俊晴(消化器外科・部長)

4月

術後補助化学療法を施行された大腸癌患者のサーベイランスにおける血清CEA測定とCTをルーチンに行うことの意義

Ian Chau, et al., J Clin Oncol 22(8) , 2004:1420-1429

 大腸癌治癒切除術後の患者に対する集中的な経過観察の意義が議論されているが、有益かつ経済的な検査法や検査間隔は明らかにされていない。Chauらは、術後補助化学療法の無作為化比較試験に参加した患者を対象として、血清CEA測定とCTをルーチンに行う意義を検討した。
 1993年から1999年の間に切除されたstage IIまたはstage IIIの大腸癌で、LV/5-FU療法、または5-FU持続静注療法による補助化学療法を施行された530例が対象となった。対象患者は、化学療法終了後1年目は3ヵ月に1回、2年目は6ヵ月に1回、その後は年1回、5年後まで定期的に外来を受診した。受診毎に血清CEAを測定し、胸部・腹部・骨盤部のCTは化学療法開始時と12ヵ月後、24ヵ月後に施行した。経過観察期間中(中央値5.6年)に154例の再発が認められた。再発発見の契機は、症状65例、CEA上昇45例、CT所見49例、その他9例で、CTで発見された時点でCEA上昇を伴う14例は、CEA上昇での発見群とCTでの発見群の両方の群に含めることとした。CT発見例は症状発見例に比べ再発からの生存が良好で(p=0.0046)、13例(26.5%)が再発病巣の治癒切除を施行され、再発病巣の治癒切除が施行されなかった例よりも生存期間が長かった(p<0.00001)。肝転移または肺転移を切除された症例のうち13例(26.5%)はCT発見例、8例(17.8%)はCEA発見例で、症状発見例は2例(3.1%)のみであった。これらの結果は、stage IIまたはstage IIIの大腸癌術後患者の経過観察におけるCEA測定とCTの重要性を示すものであった。

考察

再発早期発見のためのサーベイランス確立に期待

 術後患者のサーベイランスの目的は、再手術や化学療法などで治療可能な再発の早期発見である。大腸癌術後患者に対しては、肝転移発見のための腹部CTまたは超音波検査、肺転移発見のための胸部X線やCT、直腸癌局所再発発見のためのCT、異時性多発癌発見のための大腸内視鏡検査とともに、血清CEA値の測定が行われているが、有効かつ経済的な検査法や検査間隔は確立されていない。その一因は、術後の補助療法や、サーベイランスのための検査法、検査間隔が症例ごとにまちまちになり易いことにあった。Chauらの研究は、日本ほど濃厚ではないが、一定の補助療法とサーベイランスを受けた患者を対象としており、これまで経験的に支持されてきたCTやCEA測定の臨床的価値を証明した重要なものである。

(消化器外科・大矢雅敏)

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