論文紹介 | 監修:財団法人癌研究会附属病院 藤田力也(消化器内科・部長/内視鏡部・部長)山口俊晴(消化器外科・部長)

2月

結腸直腸癌手術後の経口補助化学療法の有効性:
3つの無作為化臨床試験の5年間の成績から

Meta-Analysis Group of the Japanese Society for Cancer of the Colon and
Rectum and the Meta-Analysis Group in Cancer.
J Clin Oncol 22(3),2004:484-492

 この論文では、手術後に経口フッ化ピリミジン製剤を投与された結腸直腸癌患者の全生存(overall survival:OS)と無病生存(disease free survival:DFS)を評価するため、3つの無作為化臨床試験からstage I〜IIIの結腸直腸癌患者を含む5233名のデータを集積しメタアナリシスを行なった。
 その結果、経口フッ化ピリミジン製剤投与によるOSの全ハザード比は0.89(95%CI;0.80-0.99;p=0.04)、DFSは0.85(95%CI:0.77-0.93;p<0.001)であり、死亡のリスクは11%、再発のリスクは15%減少した。
 OSに関しては、Dukes'stageが早期であるほど、治療群のベネフィットが大きい傾向があり、また高齢者では70歳以上で効果がネガティブになるなど、ベネフィットが小さかった。経口フッ化ピリミジン製剤の間では、統計的有意差はなかった。5年生存率の薬剤投与によるベネフィットはすべてのDukes'stageにおいて認められ、Dukes'A、B、Cでそれぞれ3.7%、4.3%、2.4%とほぼ同等だった。
 DFSに関してDukes'stageが早期なものほどベネフィットが大きいという傾向はあったが統計的有意差はなく(p=0.1)、若い年齢ほど治療効果が高いという傾向もなかった。5年間の生存のベネフィットは全てのDukes'stageで同等で、Dukes'A、B、Cのそれぞれで5.2%、4.7%、4.4%だった。
 各臨床試験間の腫瘍のstage、結腸癌と直腸癌の差、年齢、性別等に有意の差は認められなかった。
 以上の結果からこのメタアナリシスは、経口フッ化ピリミジン製剤が単独使用においても、結腸直腸癌の切除後のOSやDFSを改善することが示した。

考察

メタアナリシスによって
経口フッ化ピリミジン製剤の有用性を証明。

 今回のメタアナリシスにおいて、結腸直腸癌の切除後の補助化学療法として、経口フッ化ピリミジン製剤の有用性が明らかとなった。静注投与がルーティンに勧められない結腸直腸癌術後患者(早期癌の患者)に対して、その忍容性の良好さから経口投与は選択肢の一つとなるであろう。
 Dukes'Cのようにリンパ節転移のある患者では、静注投与の5-FUベースの化学療法が、再発や死亡のリスクを約30%まで減少させることが示されている。しかし長期の静注投与に耐えられない患者や、特に高齢者など、こうした治療に同意しないものもいるため、経口投与を選択するケースも考えられる。
今後は、より進行した結腸直腸癌に対する効果を検証するため、イリノテカンやオキザリプラチンなどの新薬と併用した臨床試験を行なう必要がある。

(消化器外科 山口俊晴)

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