論文紹介 | 監修:財団法人癌研究会附属病院 藤田力也(消化器内科・部長/内視鏡部・部長)山口俊晴(消化器外科・部長)

12月

PETのブドウ糖代謝イメージングによる、胃癌の術前化学療法の効果予測
〜プロスペクティブ研究の結果報告〜

Katja Ott, et al.,J Clin Oncol 21(24), 2003:4604-4610

 我々は、術前化学療法を施行されている胃癌患者において、治療による腫瘍組織内のブドウ糖消費の減少が、その後の治療効果および生存率の予測因子となるか、前向きに検討した。
 局所進行胃癌をもつ患者44例において、cisplatinを基本とした併用化学療法の開始前および投与l4日後に、fluorine-18 fluorodeoxyglucoseを用いたポジトロンCT(FDG-PET)により腫瘍の画像を検討した。これまでの研究に基づき、35%以上のFDG取り込みの減少を、ブドウ糖代謝反応の基準とした。FDG-PETによる代謝反応と、治療後の病理組織学的効果および生存率との関係を検討した。
 その結果、44例中35例(80%)で定量分析が可能な画像のコントラストが得られた。消化管腫瘍19例中2例、消化管以外の腫瘍25例中7例ではFDGの取り込みが低く、画像の分析ができなかった。評価可能な35例において、治療開始前と治療後14日のPET画像の解析により、治療反応例(responder)の13例中10例(77%)、および非反応例(non-responder)22例中19例(86%)で、3ヵ月後の病理組織学反応と明確な相関を認めた。ブドウ糖代謝に変化のあった症例における2年生存率は90%もあり、観察期間中にはoverallのmedian survival time(MST)は算出できなかった。反応のなかった症例の2年生存率は25%(p=0.002)であり、MSTも僅か18.9ヵ月であった。
 この研究により、胃癌患者に対する術前化学療法の効果を、治療早期にFDG-PETにより予測できる可能性が示された。FDG-PET画像処理により、効果のない療法の継続とそこにかかるコストを回避することで、術前化学療法が著しく推進される可能性がある。

考察

機能解析可能なPETの導入は化学療法の効果予測の可能性を広げる

 進行胃癌に対して、外科手術に先立って化学療法を行う意義は、病期のdown stagingと予後改善にある。現在のところ、進行胃癌における化学療法の効果判定には、局所については胃レントゲン検査、内視鏡、超音波内視鏡検査が使われており、全身検索としてはCTやMRI検査が一般的である。最近、癌の診断に関して、PETのように機能解析を伴う新たな画像診断法が加わってきた。今後、PETによる、化学療法の治療効果判定に関する研究を含めて、癌の診断や治療効果に関する研究が盛んになってくるであろう。しかし、FDG-PETの反応は非特異的であることも考慮し、術前化学療法の評価は他の画像診断も加えた総合的なものであるべきである。

(総合健診センター・高橋 寛)

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