論文紹介 | 監修:財団法人癌研究会附属病院 藤田力也(消化器内科・部長/内視鏡部・部長)山口俊晴(消化器外科・部長)

12月

胸部食道の局所的扁平上皮癌における手術単独群と手術+補助化学療法群との比較:JCOG9204

Nobutoshi Ando, et al., J Clin Oncol 21(24),2003:4592-4596

 Japan Esophageal Oncology Group (JEOG:JCOGのサブグループ)は胸部食道癌治癒切除後の補助化学療法の効果を評価するため、手術単独と手術+補助化学療法との比較を多施設prospective randomized phase III trial にて行った。17の施設で1992年7月から1997年1月に手術が施行された、stage IIA, IIB, III, IV食道癌患者242例のうち、122例が手術単独群(A群)、120例が手術+化学療法群(B群)に振り分けられた。化学療法は術後2ヵ月以内に開始され、CDDP 80 mg/m2,day1、5-FU 800 mg/m2,day1-5を3週間隔で2コース投与された。組織学的にすべて扁平上皮癌であり、かつR0切除が行われている。プライマリーエンドポイントは、無病生存であった。
 両群間で、性、年齢、部位、深達度、リンパ節転移の有無などで差は認められなかった。手術では全例2領域あるいは3領域リンパ節郭清が行われた。3領域郭清はA群61例、B群74例で行われた。登録症例の観察期間中央値は63ヵ月であった。B群では、grade 3以上の有害事象が発現した場合は化学療法を中止し、91例(75%)で化学療法を完遂した。5年生存率はA群:52%、B群:61% (p=0.13)と、有意差を認めなかったものの、無病5年生存率ではA群:45%、B群:55% (p=0.037)と有意差が認められた。また、リンパ節転移が無い症例では、両群間で無病5年生存率に差がなかったものの、リンパ節転移を有する症例では、同生存率がA群:38%、B群:52% (p=0.041)で後者が有意に良好であった。再発はA群:63例、B群:45例で観察され、A群で頸部および縦隔リンパ節再発の頻度がやや高かった。再発に対しては、A群で放射線化学療法がより多く行われていた。以上より、CDDP、5-FUによる食道癌術後補助化学療法は手術単独よりも再発防止に寄与するものと考えられた。

考察

食道癌術後補助化学療法での初の延命効果を示すエビデンス

 食道癌術後補助化学療法はこれまで延命効果を示すエビデンスが得られていなかった。CDDP、5-FUによる本報告では、CRTにて手術単独群との間で、無病生存率において有意差が認められており、その臨床的意義は大きい。特にリンパ節転移を有する症例で、その再発リスク軽減効果が大きく示されており、今後の補助療法の指標となるものである。その原因として、筆者らは化学療法による micrometastasis の根絶を挙げている。リンパ節転移の有無のほか転移個数も予後因子として知られているが、本報告でも転移個数別に化学療法の効果が明らかにされれば、補助療法としての意義がより明確になったと思われる。ただし全体の生存率では有意差が認められておらず、化学療法の期間延長なども考慮したレジメンの検討が今後の課題になるであろう。

(消化器外科・瀬戸泰之)

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