論文紹介 | 監修:財団法人癌研究会附属病院 藤田力也(消化器内科・部長/内視鏡部・部長)山口俊晴(消化器外科・部長)

8月

結腸癌患者の治療成績と治療関連毒性に対するbody mass index(BMI)の影響

Jeffrey A. Meyerhardt, et al., Cancer 98(3), 2003:484-495

 肥満は結腸癌になる危険因子である。body mass index(BMI)が結腸癌の長期予後や治療に関連する毒性にどう影響するかははっきりわかっていない。
 このコホート研究は、米国で1988年〜1992年までにstage II/IIIの結腸癌患者3,759例を対象とした術後補助化学療法の大規模無作為化試験(INT-0089)の中で行われた。観察期間の中央値が9.4年の時点で結腸癌の再発、生存期間および治療関連毒性に対するBMIの影響を検討した。
 標準体重(BMI 21.0-24.9kg/m2)の女性結腸癌患者と比較して、肥満女性(BMI≧30.0kg/m2)結腸癌患者の死亡率は有意に高かった[Hazard比1.34(95% CI=1.07-1.67)]。また、有意ではなかったものの再発の危険率も肥満女性で高かった[Hazard比1.24(95% CI=0.98-1.59)]。女性におけるBMIの予後へのこうした影響は、BMI群間における化学療法のdose intensityの差とは関連がなかった。反対に今回の検討では男性患者の長期成績とBMIには有意な相関関係はなかった。全研究参加者でみると、肥満患者は標準体重患者に比しgrade 3/4の白血球減少の割合が有意に少なく、また全体的にgrade 3以上の毒性の頻度も少なかった。
 このことから、stage II/IIIの女性結腸癌患者において、肥満は全死亡率の有意な増加をもたらし、再発の増加に関してもボーダーラインの有意差で相関することが示された。しかしながら、肥満は化学療法に関連した毒性の増加には全く相関していなかった。

考察

今後ますます注目される肥満と大腸癌予後の関係

 これまでに大腸腺腫患者などにおける検討で、肥満が大腸癌の進展に影響する因子であることが示されてきた。しかし、すでに進行結腸癌となった患者の予後へ肥満がどういう影響を示すかは不明であった。本研究は米国にて行われたstage II/IIIの結腸癌に対する、5-FUを基本とした術後補助化学療法の無作為比較試験であるIntergroup Trial 0089のデータを用いて行われた。肥満女性結腸癌患者は、死亡率だけでなく再発率も増加傾向にあることから、肥満と関連した結腸癌以外の因子による死亡の増加というよりもやはり結腸癌が予後に関連していると思われる。術後5週以内の化学療法開始時におけるBMIで検討している点などの問題点もあるが、興味深い結果を示した報告である。

(化学療法科・陳 勁松)

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