2015年 消化器癌シンポジウム 演題速報レポート
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Abstract #232
α-フェトプロテイン (AFP) 高値の進行肝細胞癌患者に対する2nd-lineとしてのRamucirumab:無作為化第III相試験 (REACH試験)
Ramucirumab as Second-line Treatment in Patients with Advanced Hepatocellular Carcinoma: Analysis of Patients with Elevated α-Fetoprotein from the Randomized Phase III REACH Study
Andrew X. Zhu, et al.
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Negative studyのサブ解析の意義と肝細胞癌に対する本薬剤の今後の方向性は?

室 圭 先生

愛知県がんセンター
中央病院
薬物療法部

 REACH試験は、既にESMO2014で第一報が発表され、主要評価項目のOSでは有意差を認めなかったものの、PFSではRamucirumab群において有意な延長を認め (HR=0.625)、本剤の肝細胞癌における薬効は確実にあると理解される。今回の発表は、prespecify (事前に規定) された解析かどうかは不明であるが、AFP高値群 (400ng/mL以上) において、プラセボ群に対するRamucirumab群の有意なOSの延長効果を認めた。非常に興味深い結果ではあるが、prespecificationの有無を問わず、主要評価項目がmetしなかった試験のサブグループ解析の結果であるため、臨床は変わりようがない。今回の解析以外でもREACH試験を様々な角度から探索的に種々の解析を行って、Ramucirumabの治療効果が期待できるpopulationの選別ができれば、今後につながる可能性も十分あるだろう。ぜひとも、AFP高値に絞った対象での前向き試験を行って、OSでのpositiveな結果が得られることを期待したい。
背景と目的
 現在、Sorafenibによる1st-line施行後の肝細胞癌に対する2nd-lineにおいて、生存ベネフィットを示した治療法はない1, 2)。また、肝細胞癌においてベースラインでのα-フェトプロテイン (AFP) 高値は予後不良であることが知られている3)
 Ramucirumabは、シグナル伝達や血管新生のメディエーターで肝細胞癌の発病に重要な役割を果たすVEGFおよびVEGFR-2を阻害する、IgG1モノクローナル抗体薬である。Sorafenibによる1st-line施行後の進行肝細胞癌患者に対する2nd-lineとしてRamucirumab単剤の有効性を検討した第III相試験 (REACH試験) の結果がESMO2014で報告され、ITT集団ではOSに有意差は認められなかったものの (HR=0.866, 95% CI: 0.717-1.046, p=0.1391)、ベースライン時AFP 高値 (400ng/mL以上) の症例ではRamucirumabにより有意なOS延長が認められた (HR=0.674, 95% CI: 0.508-0.895, p=0.0059)3)。そこで本研究では、REACH試験におけるベースライン時のAFP値とRamucirumabによる治療効果との関連を評価した。
対象と方法
 REACH試験の対象は、Sorafenibによる治療歴があり、Child-Pugh分類A、ECOG PS 0/1で、BCLC stage B/Cの肝細胞癌患者である。REACH試験において事前に規定されたAFP 400ng/mLをカットオフ値としたサブグループについて追加解析を行い、ベースライン時AFP値とRamucirumabの治療効果との関連について評価した。
結果
 無作為化された565例のうち、ベースライン時のAFP値が400ng/mL以上の症例は250例、400ng/mL未満は310例であり、400ng/mL以上ではBCLC stage C、B型肝炎起因の発症、大血管浸潤あり、65歳未満の症例が多く、400ng/mL未満ではECOG PS 0の症例が多かった (表1)
表1
 ベースライン時AFP値400ng/mL以上の症例におけるOS中央値はRamucirumab群7.8ヵ月、プラセボ群4.2ヵ月と、Ramucirumab群で有意な延長を認め (HR=0.674, 95% CI: 0.508-0.895, p=0.0059)、400ng/mL未満の症例ではそれぞれ10.1ヵ月、11.8ヵ月 (HR=1.093, 95% CI: 0.836-1.428, p=0.5059) と両群間に差はみられなかった (図1)。また、400ng/mL以上の症例におけるOSのサブグループ解析では、いずれのサブグループでもRamucirumab群で良好であった (図2)。なお、ベースライン時AFP値のカットオフ値が高いほどOS中央値は両群ともに低下し、OSのハザード比およびp値は下がる傾向にあった。
図1
図2
さらに、ベースライン時AFP値のカットオフ値を1.5×ULN (upper limit of normal) として解析を行った結果、1.5×ULN以上の症例におけるOS中央値はRamucirumab群8.6ヵ月、プラセボ群5.7ヵ月であり、Ramucirumab群で有意な延長が認められた (HR=0.749, 95% CI: 0.603-0.930, p=0.0088)。
 なお、grade 3以上の有害事象の発現率は全体解析の結果と同等で、両群に差はなかった。
結論
 本解析の結果、Ramucirumabの効果予測因子としてベースライン時AFP値が有用であることが示唆され、予後不良と考えられるベースライン時AFP値400ng/mL以上の患者においては、Ramucirumab治療により臨床的に意味のあるOSの延長が得られることが認められた。その作用機序を明らかにするために、ベースライン時AFP値と血管新生阻害との関連についてのさらなる検討が進行している。
Reference
1) Llovet JM, et al.: J Clin Oncol. 31(28): 3509-3516, 2013[PubMed
2) Zhu AX, et al.: JAMA. 312(1): 57-67, 2014[PubMed
3) Zhu AX, et al.: ESMO2014: abstr #LBA16[海外学会レポート