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Abstract #336
切除不能進行・再発大腸癌の1st-line治療におけるFOLFOXIRI + Bevacizumab vs. FOLFIRI + Bevacizumabの第III相試験の結果 (TRIBE試験)
FOLFOXIRI plus Bevacizumab (Bev) vs FOLFIRI plus Bev as 1st-line Treatment of Metastatic Colorectal Cancer: Results of the Phase III Randomized TRIBE trial.
Fotios Loupakis, et al.
細胞毒性薬剤の3剤併用レジメン + Bevacizumabは、2剤併用レジメンに対して生存に優越性を出せるか?
毒性が高いことから分子標的薬のプラットフォームとしての有用性は懸念されてきたが、今回の報告を見る限りBevacizumab併用の忍容性はあるといえよう。GONOグループの第III相試験ではFOLFIRI vs. FOLFOXIRIでPFS (progression-free survival) は6.9ヵ月 vs. 9.8ヵ月、奏効率は41% vs. 66% (central reviewでは34% vs. 60%) であり、PFSにおけるBevacizumab併用の意義はありそうだが、このレジメンの魅力であった奏効率は向上していない。なお、懸念された毒性は大きな違いはなさそうである。
実臨床の多くがFOLFIRI/FOLFOXの逐次投与を基礎とし、それに分子標的薬を併用させる戦略をとっている。このレジメンに意義があるかは生存の成績が報告されてから議論すべきであろう。
Doublet (2剤併用) + Bevacizumab (Bev) レジメンは、切除不能進行・再発大腸癌の1st-lineにおける標準治療である2, 3) 。一方、GONOグループの第III相試験では、doubletのFOLFIRIに対しtriplet (3剤併用) のFOLFOXIRIが奏効率、PFS 、OS (overall survival) で優れていることが示されており4) 、FOLFOXIRI + Bevの有効性・安全性を検討した第II相試験 (n=57) では、PFS中央値13.1ヵ月、奏効率77%と、高い有効性と安全性が認められた5)。
本試験は、切除不能進行・再発大腸癌の1st-lineでのBev併用時における、FOLFIRI に対するFOLFOXIRIの優越性を検証することを目的として実施された。
本試験は、切除不能進行・再発大腸癌の1st-lineでのBev併用時における、FOLFIRI に対するFOLFOXIRIの優越性を検証することを目的として実施された。
切除不能進行・再発大腸癌患者を、施設、PS 0/1-2、術後補助化学療法を層別因子として、FOLFIRI + Bev群 とFOLFOXIRI + Bev群とに 1:1の割合で無作為に割り付けた (図1) 。なお、両群ともに2週間を1サイクルとして12サイクルまで投与し、その後は維持療法として5-FU + BevをPDとなるまで実施した。
主な適格基準は、組織学的に腺癌と診断され、RECIST 1.0により測定可能な1つ以上の病変を有し、転移巣に対して前治療を行っていない切除不能進行・再発大腸癌患者であり、年齢18〜75歳、ECOG PS 2以下 (71〜75歳の場合はPS 0) 、骨髄・肝・腎機能が正常な患者とした。なお、L-OHPを含む術後補助化学療法を実施した患者においては、治療終了後から初回再発までの期間が12ヵ月以上であれば許容した。
主要評価項目はPFSであり、副次評価項目は奏効率、R0切除率、OS、安全性、バイオマーカーによる評価とした。なお、FOLFIRI + BevのPFS中央値を11ヵ月と仮定して6) 、FOLFOXIRI + BevはHR=0.75で優越性を示すと設定した場合 (有意水準両側5%、検出力80%) 、必要症例数は379例であった。
主要評価項目はPFSであり、副次評価項目は奏効率、R0切除率、OS、安全性、バイオマーカーによる評価とした。なお、FOLFIRI + BevのPFS中央値を11ヵ月と仮定して6) 、FOLFOXIRI + BevはHR=0.75で優越性を示すと設定した場合 (有意水準両側5%、検出力80%) 、必要症例数は379例であった。
508例が登録され、FOLFIRI + Bev群に256例、FOLFOXIRI + Bev群に252例が割り付けられた。なお、両群間の患者背景に大きな違いはみられなかった。
主要評価項目のPFS中央値は、FOLFIRI + Bev群9.7ヵ月に対してFOLFOXIRI + Bev群12.2ヵ月であり、FOLFOXIRI + Bev群で有意な延長が認められた (HR=0.73, 95% CI: 0.60-0.88, p=0.0012) (図2) 。また、2年PFSはFOLFIRI + Bev群11.4%、FOLFOXIRI + Bev群20.3%であった。
主要評価項目のPFS中央値は、FOLFIRI + Bev群9.7ヵ月に対してFOLFOXIRI + Bev群12.2ヵ月であり、FOLFOXIRI + Bev群で有意な延長が認められた (HR=0.73, 95% CI: 0.60-0.88, p=0.0012) (図2) 。また、2年PFSはFOLFIRI + Bev群11.4%、FOLFOXIRI + Bev群20.3%であった。
サブグループ解析では、術後補助化学療法を受けた症例のみFOLFOXIRI + Bev群が劣る傾向にあったものの、術後補助化学療法の有無において相互関係はみられなかった (p=0.072) (図3) 。
奏効率は、FOLFIRI + Bev群53%に対してFOLFOXIRI + Bev群65%であり、FOLFOXIRI + Bev群で有意に高かった (p=0.006) 。
安全性に関して、重篤な有害事象、致死的な有害事象、治療関連死、早期死亡は、両群間でほぼ同等であった。Grade 3/4の有害事象では、下痢 (p=0.012) 、口内炎 (p=0.048) 、好中球減少 (p<0.001) が、FOLFOXIRI + Bev群において有意に高かった (表) 。なお、発熱性好中球減少症はFOLFOXIRI + Bev群で多い傾向がみられたものの、有意差は認められなかった (p=0.315) 。
安全性に関して、重篤な有害事象、致死的な有害事象、治療関連死、早期死亡は、両群間でほぼ同等であった。Grade 3/4の有害事象では、下痢 (p=0.012) 、口内炎 (p=0.048) 、好中球減少 (p<0.001) が、FOLFOXIRI + Bev群において有意に高かった (表) 。なお、発熱性好中球減少症はFOLFOXIRI + Bev群で多い傾向がみられたものの、有意差は認められなかった (p=0.315) 。
また、化学療法のサイクル数はFOLFOXIRI + Bev群11、FOLFIRI + Bev群12と両群間に差はなかったものの、細胞毒性抗癌剤の総投与量はそれぞれ73〜75%、83〜84%と、FOLFOXIRI + Bev群で低い傾向がみられた。
FOLFOXIRIはFOLFIRIに対し、Bev併用においてもPFSで優越性を示した。有害事象は、FOLFOXIRI + Bevで多くみられたが、許容できるものであった。本試験で対象となった患者群においては、FOLFOXIRI + Bev併用療法が、新たな治療オプションとなることが示された。なお、再切除、PD後の治療、OS、バイオーマーに関する解析は現在進行中である。
Reference
1) Sunakawa Y, et al.: Oncology. 82(4): 242-248, 2012 [PubMed]
2) Hurwitz H, et al.: N Engl J Med. 350(23): 2335-2342, 2004 [PubMed][論文紹介]
3) Saltz LB, et al.: J Clin Oncol. 26(12): 2013-2019, 2008 [PubMed]
4) Falcone A, et al.: J Clin Oncol. 25(13): 1670-1676, 2007 [PubMed][論文紹介]
5) Masi G, et al.: Lancet Oncol. 11(9): 845-852, 2010 [PubMed]
6) Sobrero A, et al.: Oncology. 77(2): 113-119, 2009 [PubMed]
1) Sunakawa Y, et al.: Oncology. 82(4): 242-248, 2012 [PubMed]
2) Hurwitz H, et al.: N Engl J Med. 350(23): 2335-2342, 2004 [PubMed][論文紹介]
3) Saltz LB, et al.: J Clin Oncol. 26(12): 2013-2019, 2008 [PubMed]
4) Falcone A, et al.: J Clin Oncol. 25(13): 1670-1676, 2007 [PubMed][論文紹介]
5) Masi G, et al.: Lancet Oncol. 11(9): 845-852, 2010 [PubMed]
6) Sobrero A, et al.: Oncology. 77(2): 113-119, 2009 [PubMed]