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Abstract #335
直腸癌に対する術前補助療法の完遂:CONTRE試験
Complete Neoadjuvant Treatment for Rectal Cancer: CONTRE study
Kimberly Perez, et al.
切除可能直腸癌の術前に完遂する補助化学放射線療法の可能性
CONTRE試験のuniqueな点は、a) 多剤併用療法と照射 + 単剤化学療法を順次的に行うこと、b) 十分な治療強度をもつ術前化学放射線療法を行うことにより、術後補助療法 (=完遂率が低い) を省略できる可能性を追求したこと、である。今回、本研究の術前化学放射線療法は有害事象の面で十分に忍容可能であり、病理学的治療効果も高いことが示された。生存におけるbenefitが示されれば、上記1、2、3を満たすと予想され、CONTRE試験の術前化学放射線療法は、本邦においても直腸癌に対する重要な治療オプションになる可能性がある。
従来の直腸癌治療については、以下3つの問題点が指摘されている。
直腸癌手術前に完遂する術前補助療法 (complete neoadjuvant treatment for rectal cancer: CONTRE) は、術前補助化学療法のコンプライアンスを改善し、全身性再発を低減する可能性がある。また、一時的人工肛門の設置期間の短縮、pCRの向上、術前補助化学療法への分子標的薬導入の臨床的・病理学的奏効の評価するframeworkとなる可能性がある。
そこで今回、CONTRE後のpCR率およびR0切除率を検討し、術前における補助化学療法と化学放射線療法の実行可能性および安全性を評価する多施設共同第II相試験を行った。
・ | 術前化学放射線療法 + 手術後に施行される術後補助化学療法のコンプライアンス |
・ | 化学放射線療法単独での病理学的CR (pCR) 率は10〜25%にすぎない |
・ | 人工肛門閉鎖のタイミング 閉鎖後にFOLFOX施行: FOLFOXの開始が2〜3ヵ月以上遅れる FOLFOX施行後に閉鎖: 人工肛門の設置期間が延長する |
そこで今回、CONTRE後のpCR率およびR0切除率を検討し、術前における補助化学療法と化学放射線療法の実行可能性および安全性を評価する多施設共同第II相試験を行った。
対象は、経直腸超音波または骨盤内MRIによりstage II (T3/4N0) もしくはstage III (T1-4N1-2) の直腸腺癌と診断された患者であり、mFOLFOX6による補助化学療法を8サイクル施行後、フッ化ピリミジン系薬剤 (Capecitabine 825mg/m2 または5-FU 225mg/m2) と放射線照射[強度変調放射線治療 (IMRT) 45Gy + 3次元原体照射 5.4Gy]による化学放射線療法を施行し、4〜8週後に手術を実施した (図) 。
本試験には39例が登録され、stage IIが6例、stage IIIが33例であり、病変の肛門括約筋からの距離は3cm未満が5例、3〜5cmが5例、5cm超が29例であった。今回は初期解析として、CONTREが施行された32例の結果について報告された。
mFOLFOX6による補助化学療法について32例中29例が全8サイクルを完遂し、75歳未満では27例中26例 (96%) が、75歳以上では5例中3例が完遂した。なお、mFOLFOX6投与の遅延や減量は9例にみられ (遅延7例、減量2例) 、その原因は、好中球数減少5例、下痢2例、嘔吐および腹痛が各1例であった。
mFOLFOX6施行中に発現したgrade 3/4の有害事象 (表1) について、非血液毒性は10例 (31%) に認められたが、出血や消化管閉塞はみられなかった。また、grade 4の有害事象は下痢1例、好中球減少1例に認められた。
mFOLFOX6による補助化学療法について32例中29例が全8サイクルを完遂し、75歳未満では27例中26例 (96%) が、75歳以上では5例中3例が完遂した。なお、mFOLFOX6投与の遅延や減量は9例にみられ (遅延7例、減量2例) 、その原因は、好中球数減少5例、下痢2例、嘔吐および腹痛が各1例であった。
mFOLFOX6施行中に発現したgrade 3/4の有害事象 (表1) について、非血液毒性は10例 (31%) に認められたが、出血や消化管閉塞はみられなかった。また、grade 4の有害事象は下痢1例、好中球減少1例に認められた。
化学放射線療法はmFOLFOX6を完遂した28例に施行され、mFOLFOX6未完遂の3例と、完遂後CRに達した50歳未満の患者1例は除外された。放射線照射ついては、90%以上の患者で予定された照射線量 (50.4Gy) を実施できたが、フッ化ピリミジン系薬剤の投与については、3例がCapecitabineの減量を、2例が治療の一時的中断を要した。なお、フッ化ピリミジン系薬剤については全例がCapecitabineを選択した。
化学放射線療法施行中に発現したgrade 3/4の有害事象 (表2) について、血液毒性はgrade 3が1例、grade 4が1例 (好中球数減少) であり、非血液毒性はgrade 3が12例であり、grade 4はみられなかった。
化学放射線療法施行中に発現したgrade 3/4の有害事象 (表2) について、血液毒性はgrade 3が1例、grade 4が1例 (好中球数減少) であり、非血液毒性はgrade 3が12例であり、grade 4はみられなかった。
CONTRE後のpCRは30例中10例で達成され、pCR率は33%であった。また、mFOLFOX6によりCRに達した5例は、いずれも手術時にpCRと判定された。
今回の初期報告から、CONTREは直腸癌患者に対して安全に施行可能なことが示唆された。75歳未満の症例の95%以上がmFOLFOX6による補助化学療法を計画どおり全8コース完遂したが、75歳以上の症例では忍容性が十分ではなかった。なお、抗腫瘍効果や再発に及ぼす影響を評価するには、長期追跡が必要である。
CONTREは、直腸癌の臨床試験における重要な新規のframeworkである。
CONTREは、直腸癌の臨床試験における重要な新規のframeworkである。