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Abstract #438
KRAS 遺伝子型に基づく切除不能進行・再発大腸癌1st-line治療選択の医療経済評価
Pharmacoeconomic analysis for K-Ras status based decisions for first line therapy of metastatic colorectal cancer (mCRC)
Cristóbal Belda-Iniesta, et al.
一次治療におけるKRAS 遺伝子検査の医療費抑制効果
近年のがん薬物療法において個別化医療は重要な課題である。スペインでは、切除不能進行・再発大腸癌患者のKRAS 遺伝子型に基づく1st-lineの治療選択を医療経済的に評価した研究は存在しない。本研究の目的は、切除不能進行・再発大腸癌初回治療例におけるKRAS 遺伝子型に基づいた治療選択とKRAS 検査なしでの治療選択を比較し、その費用対効果を評価することである。
切除不能進行・再発大腸癌の無作為化比較試験のデータ (次項参照) を用い、KRAS 遺伝子型に基づいて選択可能な全ての治療選択肢と、KRAS 検査なしで選択可能な全ての治療選択肢をシミュレーションし (図)、それらに伴う直接費用を比較した。直接費用は各レジメンの奏効率およびPFSによって重み付けした。
◆データソース
【効果】奏効率およびPFSは、スペインで使用可能な薬剤を用いた4試験 (CRYSTAL試験 [FOLFIRI±Cetuximab]2)、OPUS試験 [FOLFOX±Cetuximab]3)、AVF2107g試験 [IFL±Bevacizumab]4)、NO16966試験 [FOLFOX/XELOX±Bevacizumab]1) ) から引用した。
【費用】直接的な薬剤費に加え、KRAS 遺伝子型に基づいた治療選択を行う場合はその検査費用も含めた。治療期間中央値ならびに投与量、治療レジメンは前出の4試験のデータをもとに推算した。標準投与量は体重70kg、体表面積1.7m2として計算した。薬剤費は2011年7月時点のスペインの薬価で計算した。
◆感度分析
解析結果の信頼性を確認するため、各仮定条件 (体重、体表面積、KRAS 検査費用、KRAS 変異型患者の割合、併用する化学療法) を変更し、影響の有無を調べた。
【効果】奏効率およびPFSは、スペインで使用可能な薬剤を用いた4試験 (CRYSTAL試験 [FOLFIRI±Cetuximab]2)、OPUS試験 [FOLFOX±Cetuximab]3)、AVF2107g試験 [IFL±Bevacizumab]4)、NO16966試験 [FOLFOX/XELOX±Bevacizumab]1) ) から引用した。
【費用】直接的な薬剤費に加え、KRAS 遺伝子型に基づいた治療選択を行う場合はその検査費用も含めた。治療期間中央値ならびに投与量、治療レジメンは前出の4試験のデータをもとに推算した。標準投与量は体重70kg、体表面積1.7m2として計算した。薬剤費は2011年7月時点のスペインの薬価で計算した。
◆感度分析
解析結果の信頼性を確認するため、各仮定条件 (体重、体表面積、KRAS 検査費用、KRAS 変異型患者の割合、併用する化学療法) を変更し、影響の有無を調べた。
各レジメンの有効性と患者1人あたりの直接費用を表1に、KRAS 変異の有無によって予測される治療選択肢の組み合わせと直接費用を表2に示した。
KRAS 検査をせずに1st-line治療を選択した場合、モノクローナル抗体薬を含む薬物療法の直接費用は、奏効率が1%上がるごとにCPT-11ベース化学療法で1,237ユーロ、L-OHPベース化学療法では3,193ユーロの増分が示唆された。反対にKRAS 遺伝子型に基づいてCetuximab併用化学療法を選択した場合、奏効率についてはCPT-11ベース化学療法で69%、L-OHPベース化学療法では34%の費用削減がみられた。この傾向はPFSについても同様であった。
また、感度分析の結果、各治療シナリオ間の予測差は体重、体表面積ならびにKRAS 検査費用の変更による影響を受けなかった。ただし、KRAS 野生型患者の割合を60%超とした場合は最終予算が上がり、直接費用を削減する価値が下がった。
また、感度分析の結果、各治療シナリオ間の予測差は体重、体表面積ならびにKRAS 検査費用の変更による影響を受けなかった。ただし、KRAS 野生型患者の割合を60%超とした場合は最終予算が上がり、直接費用を削減する価値が下がった。
切除不能進行・再発大腸癌におけるKRAS 遺伝子型に基づく1st-lineの治療選択は、有効性を維持しながら治療の直接費用を削減した。本研究でシミュレーションした治療シナリオのうち、KRAS 野生型患者において最も費用対効果に優れた1st-line治療の選択肢はCetuximab併用化学療法であった。
また、最も高額な治療シナリオは全ての患者にモノクローナル抗体薬を投与することであった。Bevacizumab併用化学療法の臨床転帰は維持療法に強く依存する一方、モノクローナル抗体薬を用いた維持療法は最も高い増分費用を生む結果となった。したがって、KRAS 検査なしでこの治療を実施することは、費用効果比の通常閾値を大幅に超える可能性が示唆された。化学療法単独は最も安価な治療選択肢であったが、奏効率は20%低下し、病勢進行の確率は25%上昇した。
以上より、切除不能進行・再発大腸癌患者の1st-line治療の選択にKRAS 検査を導入することは費用対効果に優れ、スペインの医療制度において経済資源の最適化につながる。
また、最も高額な治療シナリオは全ての患者にモノクローナル抗体薬を投与することであった。Bevacizumab併用化学療法の臨床転帰は維持療法に強く依存する一方、モノクローナル抗体薬を用いた維持療法は最も高い増分費用を生む結果となった。したがって、KRAS 検査なしでこの治療を実施することは、費用効果比の通常閾値を大幅に超える可能性が示唆された。化学療法単独は最も安価な治療選択肢であったが、奏効率は20%低下し、病勢進行の確率は25%上昇した。
以上より、切除不能進行・再発大腸癌患者の1st-line治療の選択にKRAS 検査を導入することは費用対効果に優れ、スペインの医療制度において経済資源の最適化につながる。