The 35th ESMO Congress, Milan 2010

ESMO 2010

演題レポート Presentations

Abstract #654P
  大腸癌
ハイリスク局所進行直腸癌患者に対する術前補助療法としての5-FU + Oxaliplatin + Panitumumab併用放射線療法を検討した第II相試験の最終報告 (STARPAN/STAR-02試験)

Phase II Study with Panitumumab, Oxaliplatin, 5-fluorouracil and Concurrent Radiotherapy in High-risk Locally Advanced Rectal Cancer Patients (STARPAN/STAR-02 Study), Final Results

C. Pinto, et al.

術前5-FU + L-OHP + Panitumumab併用放射線療法の積極的な導入には至らず

加藤 健志 先生

 欧米ではT3、T4局所進行直腸癌に対する5-FUベースの術前化学放射線療法が標準治療とされている。これは、メタ解析によりpCR (病理学的完全奏効) の増加や局所再発率の低下が証明されたためであるが、生存期間の延長効果については否定的な結果であった。そこでOxaliplatin (L-OHP) の上乗せ効果を期待してSTAR-01試験ACCORD 12試験が行われている。これらの結果はすでに報告されており、二次エンドポイントであるpCRにおけるL-OHPの上乗せ効果はいずれの試験でも認めなかった。しかし、STAR-01試験では組織学的なM1症例の割合が有意に減少し、遠隔微小転移に対するL-OHPの上乗せ効果が期待され、今後報告されるであろう一次エンドポイントである生存期間においても延長が期待される。
 今回のSTAR-02試験は5-FU + L-OHPにPanitumumabを併用し、局所制御に対する効果を検証した第II相試験である。結果は、一次エンドポイントであるpCRにおいて、期待した上乗せ効果を証明することができなかったが、抗EGFR抗体を用いた過去の試験と比較して高いpCR率を示したとしている。今回の結果は5-FU + L-OHP + Panitumumabの併用療法の導入を積極的に示唆するものではなかった。

背景と目的

 直腸癌では原発巣において50〜70%にEGFRの過剰発現がみられ1)、この過剰発現が術前化学放射線療法(CRT)後の病理学的奏効率の低下やdisease-free survival (DFS) の短縮と関連することが示されている1-2)。また、転移性大腸癌患者において、抗EGFR抗体と化学療法の併用によるobjective response rate (ORR) の向上が報告されている3-4)
 我々は大規模第III相試験 (STAR-01試験) において、局所進行直腸癌患者に対する術前5-FU + L-OHP併用放射線療法が安全性に優れていることを報告した5)。本試験 (STARPAN/STAR-02試験) では、術前5-FU + L-OHP + Panitumumab併用放射線療法の有用性について検討した。

対象と方法

 対象は、肛門縁から12cm未満に局在する直腸腺癌 (ECOG PS 0-2, stage cT3 N+ M0およびcT4 N± M0) 患者とした。スケジュールは下図の通りである。

図: 治療スケジュール

 一次エンドポイントはpathological complete response (pCR: 病理学的完全奏効)、二次エンドポイントはpathological downstaging、安全性、DFS、OS、括約筋温存とした。


結果

 2007年2月〜2009年10月までに直腸癌患者60例が登録された (年齢中央値60歳、男性66.7%)。ステージはcT3N+: 68.3%、cT4N-: 6.7%、cT4N+: 18.3%、cT3Nx: 1.7%、cT4Nx: 5.0%であった。CRT後に手術が行われたのは60例中55例 (91.7%) であった。なお、手術が行われなかった5例のうち、PDが原因であった2例は有効性の解析対象に含めた。
 一次エンドポイントであるpCRは21.1% (12/57例、95% CI: 10.4-31.6%) であった。二次エンドポイントであるpathological downstagingは57.9% (33/57例) に認められた。術式の内訳は前方切除 (83.6%)、ハルトマン手術 (7.3%)、腹会陰式直腸切断術 (9.1%)であった。
 Grade 3/4の有害事象は下痢 (38.9%)、ざ瘡様皮疹 (18.6%)、悪心・嘔吐 (6.8%)、無力 (3.4%)、好中球減少 (1.7%)であった。

結論

 一次エンドポイントであるpCRは21.1%であり、当初設定した25%には到達しなかったが、Panitumumabを加えた術前CRTは、抗EGFR抗体を用いた過去の試験と比較して高いpCR率を示した。また本治療では、Grade 3/4の下痢の発生率が高頻度であった。

Reference
1) Giralt J, et al.: Radiother Oncol. 74(2): 101-108, 2005 [PubMed
2) Kim JS, et al.: Int J Radiat Oncol Biol Phys. 66(1): 195-200, 2006 [PubMed
3) van Cutsem E, et al.: N Engl J Med. 360(14): 1408-1417, 2009 [PubMed
4) Bokemeyer C, et al.: J Clin Oncol. 27(5): 663-671, 2009 [PubMed
5) Aschele C, et al.: 2005 Annual Meeting of the American Society of Clinical Oncology®, abst #CRA4008 [学会レポート]