Abstract #595P |
![]() |
KRAS mutational status in Japanese patients with colorectal cancer: Results from a multicenter, cross-sectional, large observational study conducted by the Japan Study Group of KRAS Mutation in Colorectal Cancer
K. Yamazaki, et al.
日本人のKRAS遺伝子変異率は欧米と同様 |
|
世界では、KRAS遺伝子変異について、いち早くさまざまな研究がなされ、大腸癌患者のおよそ30〜40%に認められることが数々の試験により報告されている。しかし、本邦においては、まとまったデータは存在していなかった。そんな中、山崎らのグループでは、5,887名という国内では最大で、海外でも類をみないような大規模観察研究を実施した。 |
KRAS遺伝子変異は、大腸癌患者のおよそ30〜40%に認められることが数々の試験により報告されている1-3)。KRAS遺伝子変異は主にcodon 12および13で認められ、KRAS遺伝子変異型の場合、抗EGFR抗体による治療効果が期待できない。
日本人の大腸癌患者のKRAS遺伝子変異率に関する報告は、いずれも小規模での検討である。そこで本邦におけるKRAS遺伝子変異率を明らかにするため、大規模な多施設共同横断観察研究を実施した。
対象は組織学的に腺癌 (粘膜内癌は除く) と確認された大腸癌とした。各施設より、原発巣または転移巣の手術標本あるいは生検標本として、ホルマリン固定パラフィン包埋組織ブロックまたは薄切切片が検査会社に送付された。KRAS遺伝子は、codon 12および13についてダイレクトシークエンス法またはルミネックス法を用いて検査した。
2009年10月〜2010年3月の間に389施設から5,887例が登録された。2010年4月をデータカットオフとし、5,732例 (97.4%) でKRAS遺伝子変異率を算出した。
年齢中央値は65歳、性別は男性3,475例 (60.6%)、女性2,257例 (39.4%) であった。収集された腫瘍サンプルは手術標本5,364例 (93.6%)、生検標本368例 (6.4%) であり、原発巣5,258例 (91.7%)、転移巣474例 (8.3%) であった。また、原発巣の部位は右結腸 29.9%、左結腸 37.7%、直腸31.7%であった。
KRAS遺伝子変異率は、野生型3,577例 (62.4%)、変異型2,155例 (37.6%) であった。KRAS遺伝子変異型のうち、codon 12変異が1,714例 (79.5%)、codon 13変異が441例 (20.5%) であった。
さらに、KRAS遺伝子変異について背景因子の検討を行ったところ、性別 (男性: 35.5%、女性: 40.9%、p<0.0001)、原発巣部位 (虫垂: 64.0%、右結腸: 48.2%、左結腸: 29.3%、直腸: 37.1%、p<0.0001) および年齢 (<50歳: 30.5%、50-59歳: 36.6 %、60-69歳: 38.1%、70歳以上: 39.9%、p=0.0007) において有意差が認められた。
本報告は日本人の大腸癌患者のKRAS遺伝子変異率について大規模に検討した観察研究であり、KRAS遺伝子変異率は37.6%と、欧米のこれまでの報告とほぼ同等であった。