The 35th ESMO Congress, Milan 2010

ESMO 2010

演題レポート Presentations

Abstract #583PD
  大腸癌
KRAS遺伝子野生型の転移性大腸癌患者に対する2nd-lineとしてのPanitumumab + Irinotecan併用療法 (3週毎投与) の有効性と安全性: The Spanish Cooperative Group for the Treatment of Digestive tumours (TTD) による研究

Efficacy and safety of second-line treatment with panitumumab plus irinotecan, both given every three weeks (Q3W), in patients (pts) with wild-type (WT) K-RAS metastatic colorectal cancer (mCRC): A study from the Spanish Cooperative Group for the Treatment of Digestive tumours (TTD)

A. Gomez, et al.

CPT-11 + Panitumumab併用療法 待望の第一報
〜今後CPT-11 + Panitumumab併用療法への期待が高まる

辻 晃仁 先生

 Panitumumabは二次治療における有用性が大変期待されているが、今回はその最も有望なパートナーであるIrinotecan (CPT-11) との併用療法の報告である。
 もちろんまだ第II相試験の結果であり、3週毎投与のレジメンであることなどから、臨床現場への直接的なフィードバックはできないものの、奏効率22.6%、disease control rate 64.1%といった抗腫瘍効果や、progression-free survival 4.5ヵ月(中央値)、overall survival 15.1ヵ月(中央値)の生存に対する効果は、従来の二次治療の成績と較べても極めて良好な結果であった。
 今回の試験は、日本の用法用量と異なり、3週毎投与レジメン (CPT-11 350 mg/m2 など) で施行されたことが影響したと思われるやや強めの毒性プロファイルも観察されているが、全体としてはfeasibleな結果であった。現在進行中の第III相試験の結果を含め、今後Irinotecan + Panitumumab併用療法への期待が高まる。

背景と目的

 Panitumumabは完全ヒト抗EGFRモノクローナル抗体であり、KRAS遺伝子野生型の転移性大腸癌患者に対する単剤および併用療法 (1st-line、2nd-line) の有効性と安全性が示されている。化学療法との併用を検討した過去の報告では、Panitumumabは2週毎の投与であり、転移性大腸癌患者を対象とした2nd-lineとしてのPanitumumab + Irinotecan (CPT-11) ベース化学療法の3週毎投与の報告はない。
 本試験は、転移性大腸癌患者に対する2nd-lineとしてのPanitumumab + CPT-11併用3週毎投与の有効性および安全性を検討した、多施設共同シングルアーム第II相試験 (NCT00475293) である。

対象と方法

 対象は1st-lineとしてFUベースの化学療法を受けてPDが認められた転移性大腸癌患者 (18歳以上、ECOG PS 0-2) としたが、途中でKRAS遺伝子野生型患者のみに変更した。
 Panitumumab 9 mg/kg + CPT-11 350 mg/m2 (>70歳およびPS 2の患者は300 mg/m2) をPDまたは毒性により投与不可となるまで3週毎に投与した。
 腫瘍の評価はinvestigatorがmodified RECIST ver. 1.0にもとづき9週間毎に行った。有害事象の表記にはMedDRA ver. 12.1を用い、CTCAE ver. 3.0に従って評価した。

    一次エンドポイント
Objective response rate (ORR)
    二次エンドポイント
Disease control rate (DCR)、progression-free survival (PFS)、overall survival (OS)、有害事象

結果

 KRAS遺伝子野生型患者53例が登録された (男性: 66.0%、年齢中央値: 67歳、ECOG PS < 1: 90.6%)。前治療として、1st-lineにOxaliplatinベース: 84.9% (45/53例)、CPT-11ベース: 7.5% (4/53例) が施行されており、90.6% (48/53例) が手術を受けていた。
 有効性を下表に示した。一次エンドポイントであるORRは22.6% (CR: 0/53例、PR: 12/53例)、二次エンドポイントであるDCRは64.1% (34/53例)、PFS中央値は4.5ヵ月 (Q1-Q3*: 2.1-8.4)、OS中央値は15.1ヵ月 (Q1-Q3: 4.5-22.5) であった。また、Panitumumab副作用であるざ瘡様皮疹の最高Grade別の有効性解析において、ORRおよびDCR、PFSのいずれもGrade 2以上の群で高値であった (表)
*quantile range

表: 有効性

 Grade 3/4の有害事象としては、下痢 (35.9%)、ざ瘡様皮疹 (32.1%)、無力 (18.9%)、好中球減少 (13.2%) などが認められたが、皮膚症状および下痢は、対症療法や投与量の変更により対処可能であった。

結論

 本報告は、KRAS遺伝子野生型の転移性大腸癌患者に対する2nd-lineとしてのPanitumumab + CPT-11併用3週毎投与の有効性と安全性を示した初めての報告である。