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GI cancer-net 海外学会速報レポート 2015年6月 シカゴ

背景と目的

 現行のガイドラインではG1/2の神経内分泌癌 (NET) は難治性で治療選択肢が限られているが、ソマトスタチンアナログのOctreotideおよびLanreotideはプラセボに比較し有意に進行を遅らせ (それぞれHR=0.34, p<0.0011), HR=0.47, p<0.0012) )、OctreotideにInterferon (IFN) を上乗せしたレジメンでも抗腫瘍効果が報告されている3)。NETは血管が豊富な腫瘍で、VEGFが高発現しているNET患者は予後不良4) であるため、Bevacizumabの使用が検討されてきた。そして、BevacizumabとPEG IFNの無作為化第II相試験においてBevacizumabはPEG IFNに比べ高い抗腫瘍効果を示した5) ので、今回、Octreotide + IFNα-2bとOctreotide + Bevacizumabの前向き無作為化第III相比較試験を実施した。

対象と方法

 NET G1/2患者427例のうち適格基準を満たした402例を対象とし、Octreotide (20mg/3週間毎) + Bevacizumab (15mg/kg/3週間毎) (n=200) とOctreotide (20mg/3週間毎) + IFNα-2b (5万単位/週3回) (n=202) に割り付けた。適格基準は、切除不能転移または局所進行NET、化学療法の治療歴が1回まで、十分な臓器機能を保っているなどであった。肝動脈塞栓の既往歴やソマトスタチンアナログ、mTOR阻害剤の治療歴は適格とした。主要評価項目はPFSとした (図1)。

図1

結果

 中央判定ではPFS中央値はBevacizumab群16.6ヵ月、IFNα-2b群15.4ヵ月 (HR=0.93, 95% CI: 0.73-1.18, p=0.55) (図2)、主治医判定によるPFS中央値は Bevacizumab群15.4ヵ月、IFNα-2b群10.6ヵ月 (HR=0.90, 95% CI: 0.72-1.12, p=0.33) で、ともに有意差は認められなかった。

図2

 奏効率はBevacizumab群12%、IFNα-2b群4%であり、Bevacizumab群で有意に高かった (p=0.008)。治療成功期間 (time to treatment failure: TTF) はBevacizumab群9.9ヵ月、IFNα-2b群5.6ヵ月と、Bevacizumab群で有意に延長した (p=0.003) (図3)。

図3

 発現率の高かった有害事象 (全grade) は、Bevacizumab群で高血圧32%、蛋白尿8.6%、倦怠感7.1%、IFNα-2b群では倦怠感26.8%、好中球減少11.9%、悪心5.7%であった。

結論

 Bevacizumab群はIFNα-2b群と比較してTTFは有意に延長し、奏効率は有意に高かったが、PFSでは有意な改善は認められなかった。NET G1/2においてBevacizumabとIFNα-2bは同等の抗腫瘍効果を示した。

コメント

 予後不良なNETに対するOctreotideにIFNα-2bもしくはBevacizumabを併用する効果を検討した第III相試験である。本試験はIFNα-2bに対するBevacizumabの優越性を検証する試験であり、しかも中間解析前に生存期間の見込みが大幅に修正されている。試験結果はnegativeであり、Bevacizumabの優越性は証明されなかった。しかしながら、結論はIFNα-2bとBevacizumabは同等の有効性を有するという、やや違和感のあるものであった。Discussantが指摘しているように、そもそもIFNの併用は標準治療としては位置づけられていないこと、G1が85%も含まれており予後不良なカルチノイドを対象としているとは言い難いことなどから、本試験の解釈は困難であると言える。

(レポート:川崎 健太 監修・コメント:寺島雅典)

Reference
  1. 1) Rinke A, et al.: J Clin Oncol. 27(28): 4656-4663, 2009[PubMed
  2. 2) Caplin ME, et al.: N Engl J Med. 371(3): 224-233, 2014[PubMed
  3. 3) Kolby l, et al.: Br J Surg. 90(6): 687-693, 2003[PubMed
  4. 4) Zhang J, et al.:Cancer. 109(8): 1478-1486, 2007[PubMed
  5. 5) Yao JC, et al.: J Clin Oncol. 26(8): 1316-1323, 2008[PubMed

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