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GI cancer-net 海外学会速報レポート 2013年6月 シカゴ

背景と目的

 切除不能・進行胃癌に対する1st-lineは、フッ化ピリミジン系 + プラチナ製剤 (± Epirubicin) が選択されるが、グローバルにおける唯一の標準治療は決定していない。日本ではSPIRITS試験などの結果を受けて、5週毎のSP療法 (S-1 + CDDP) が行われている。一方、韓国では、CDDPのdose intensityを高めるために、3週毎のSP療法が開発された。

 そこで、3週毎のSP療法の有効性を5週毎のSP療法と比較する、韓国と日本の国際共同第III相試験、SOS試験が行われた。

対象と方法

 対象は、18~74歳、PS 0-2、切除不能・進行胃癌もしくは食道胃接合部癌に対する初回治療例である。3週毎のSP療法を行う群 (SP3群: S-1 80mg/m2/day, day1-14内服、CDDP 60mg/m2 iv, day1, q3w) と5週毎のSP療法を行う群 (SP5群: S-1はBSAに従って80 or 100 or 120mg/day, day1-21内服、CDDP 60mg/m2 iv, day1 or 8, q5w) に無作為に割り付けられた。割付調整因子は腫瘍量 (切除不能/進行再発/転移巣切除後)、測定可能病変の有無、施設である。

 主要評価項目は独立評価委員会判定によるPFS、副次評価項目は研究者判定によるPFS、奏効率、OS、有害事象とした。

 本研究は、PFSにおけるSP3群のSP5群に対する非劣性と優越性を検証するハイブリッドデザインになっている。非劣性については、期待されるHRを0.9 (SP5群6ヵ月)、非劣性マージンを1.15、片側α2.5%、検出力80%として、必要症例数は560例と算定した。優越性については、560例の登録によりPFS中央値1.5ヵ月の上乗せ (6ヵ月 vs. 7.5ヵ月) を検証した (片側α=5%、検出力81%)。

結果

 韓国と日本の42施設において、630例が登録された (ITT集団615例)。患者背景を見ると、SP5群でPS 0の症例が少なかったが、それ以外に両群間に偏りはなかった (表1)

表1

 独立評価委員会判定によるPFS中央値は、SP5群が4.9ヵ月であったのに対し、SP3群では5.5ヵ月と有意に良好であった (HR=0.82, 95% CI: 0.68-0.99, p=0.0418) (図1)

図1

 OS中央値は、SP3群が14.1ヵ月、SP5群が13.9ヵ月であり、有意差は認められなかった (HR=0.99, 95% CI: 0.81-1.21, p=0.907) (図2)

図2

 PFSにおけるサブグループ解析では、日本人のサブグループでSP5群がやや良好な傾向があったが、多くはSP3群で良好な傾向を示した (図3)

図3

 独立評価委員会判定による奏効率は、SP3群が60%、SP5群が50%であった (p=0.065)。

 Grade 3以上の血液毒性の発現率はSP3群で高く、grade 3以上の好中球減少はSP3群が39%、SP5群が9%であった (表2)。非血液毒性の発現率は両群でほぼ同等であった。

表2

 なお、2nd-lineが行われた患者の割合は、SP3群で53%、SP5群で54%と同等であった。

結論

 切除不能・進行胃癌に対する1st-lineにおける3週毎のSP療法は、5週毎のSP療法に対して、PFSにおいて非劣性かつ優越性を示したが、OSは有意差を認めなかった。安全性プロファイルは両群ともに良好であった。

コメント

 臨床的には、興味深い試験結果である。本邦における胃癌標準治療であるS-1/CDDP療法は、3週毎の投与法がPFSで勝っており、優越性が検証されたことから、今後、3週毎投与が推奨される。ただし、OSでは両群に差がないので、5週毎の投与が否定されるものではない。試験背景を考慮すると、登録症例は韓国8割、日本2割弱であり、さらにサブ解析では、日本の症例では5週毎投与の方が良い傾向になっていた (HR=1.12, 95% CI: 0.69-1.81)。

 消化器癌領域ではCDDP投与は入院で行うことも多く、3週毎の方法では5週毎の投与よりも医療資源を使うことになり、かつ日本と韓国での化学療法事情の差異もあり、すぐに受け入れられるものではないかもしれない。また、3週毎投与法が一般化するためには、まずその後の維持療法の確立が必要だと考える。但し、今後は本邦においてSOX (S-1/L-OHP併用療法) が導入汎用される可能性があり、その際には本療法の意義は薄れることになるかもしれない。

(レポート:中島 貴子 監修・コメント:佐藤 温)

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