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GI cancer-net 海外学会速報レポート 2013年6月 シカゴ

背景と目的

 多くの膵癌 (~80%) では、染色体テロメアの維持に関与するテロメラーゼの過剰発現が認められる。GV1001はヒトテロメラーゼ逆転写酵素 (hTERT) 由来ペプチドワクチンである。進行転移性膵癌患者48例を対象とした第I/II相試験において生存期間の延長が認められたことから1)、GV1001の有効性を検証するための第Ⅲ相試験が行われた。

対象と方法

 局所進行・転移性膵癌患者を対象に、以下の3つの治療群に1:1:1の割合で無作為に割り付けられた。

Arm1: (Control群)
GemCap療法:Gemcitabine (1,000mg/m2, day1, 8, 15, 4週毎)、Capecitabine (1,660mg/m2, day1-21, 4週毎)

Arm2: (Sequential群)
GemCap療法2サイクル後にGV1001療法 (0.56mg, day1, 3, 5, 8, 15, 22, 36, 以後月1回) を施行

Arm3: (Combination群)
GemCap療法とGV1001療法の同時併用

 Control群の1年生存率を25%と想定し、Sequential群、Combination群それぞれ10%の上乗せを検出力80%、α=0.025で検出するために必要症例数を算定すると各群360例となった。

結果

 計1,062例が登録された。全体の患者背景は、年齢平均値62.3歳、ECOG PS 0-1 89.3%、ステントあり43.1%、頭頸部56.6%、局所進行30.8%であり、各群のバランスは良好であった。

 主要評価項目であるOS (overall survival) の中央値は、Arm1: 7.89ヵ月、Arm2: 6.94ヵ月、Arm3: 8.36ヵ月であり、Arm1に対してArm2はやや不良 (HR=1.19, 98.25% CI: 0.97-1.48, p=0.0466) であり、Arm1とArm3では差を認めなかった (HR=1.05, 98.25% CI: 0.85-1.29, p=0.6378)。

 奏効率はそれぞれ17.6% vs. 8.6% vs. 15.5%であり、Arm2が有意に不良であり (p<0.001)、Arm1とArm3では有意差を認めなかった (p=0.460)。無増悪期間も同様に中央値6.3ヵ月 vs. 4.5ヵ月 vs. 6.6ヵ月であり、ワクチン併用による上乗せ効果は認めなかった。有害事象は大きな群間差を認めず、ワクチン併用による毒性の増加は認められなかった。

結論

 GemCap + GV1001併用療法はGemCap療法と比較して毒性の上乗せは認められないものの、OS、TTP、奏効率いずれの上乗せ効果も認められなかった。免疫学的なバイオマーカー解析を現在実施中である。

コメント

 GV1001はペプチドワクチンであり、上述の如くテロメラーゼ酵素を標的とする。テロメラーゼは正常細胞にはほとんど存在しないが、膵癌細胞には過剰発現しているため、その効果が期待されて実施された、第I/II相試験にて良い結果が得られた。そこで今回は、Gem + Capを標準アームとし、Gem + Capに、ワクチンをSequentialで使う群、Combinationで使う群の3群にて、無作為化比較試験が実施された。結果は上述の如くであり、ワクチンによる上乗せ効果は認められなかった。ワクチン療法は、その免疫反応の発現までに時間を要すため、進行癌、特に足の速い膵癌となれば、その効果を臨床で検証するのは非常に困難と言わざるを得ない。今後の開発は、現在行っている免疫学的バイオマーカーによる免疫反応の発現しやすい被験者の選定や、腫瘍量の少ない、術後補助化学療法との併用などでの試験計画立案が必要となるのではないかと思われる。

(レポート:谷口 浩也 監修・コメント:小松 嘉人)

Reference
  1. 1) Bernhardt SL, et al.: Br J Cancer 95(11): 1474-1482, 2006 [PubMed]

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