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GI cancer-net 海外学会速報レポート 2013年6月 シカゴ

背景と目的

 大腸癌の術後における綿密な長期間の経過観察 (intensive long-term follow-up) は一般的に行われているが、生存に対する本当の意義については、報告されている観察の頻度や再発に対する治療などによって一定していない。また、intensive follow-upのコストを正当化するには、費用対効果の面で十分ではないことが経済モデルから示唆されている。

 そこで、英国の39施設による無作為化比較試験、FACS試験が行われた。

対象と方法

 対象は、大腸癌の根治的切除が行われ、病理学的にも残存病変がないDukes A-C (TNM stage I-III) の症例1,202例である。いずれも、大腸検査およびCT検査で病変を認めず、血清CEAは10μg/L以下であり、術後補助化学療法を含む初期治療が終了した症例であった。

 これらの患者を minimal群 (症状の経過観察と12~18ヵ月の期間に単回のCT検査を実施)、 CEA群 (2年間は3ヵ月毎のCEA測定、その後5年間まで6ヵ月毎のCEA測定。12~18ヵ月の期間に単回のCT検査を実施)、 CT群 (2年間は6ヵ月毎の胸部腹部骨盤CT検査、その後5年間まで1年毎の胸部腹部骨盤CT検査を実施)、 CEA and CT群 (CEA測定とCT検査の両方を実施) の4群に無作為に割り付けた

結果

 外科的治癒切除が可能であった再発は全体で6.0% (71/1,202例) に認められ、Dukes分類別にみても、大きな差を認めなかった (stage A 5.1%、stage B 6.1%、stage C 6.2%)。Minimal群と比較したそれぞれの調整オッズ比は、CEA群が2.70 (p=0.035)、CT群が3.45 (p=0.007)、CEA and CT群が2.95 (p=0.021) であり、切除可能な再発が多く同定された。

 治療可能な再発が同定されるまでの期間をKaplan-Meier曲線で解析すると、minimal群とそれ以外 (intensive follow-up) の群で有意な差を認めた (log-rank test p=0.030)。OSの解析では群間に有意差を認めなかった (log-rank test p=0.560)

 今回のFACS試験の結果を含めて、過去の試験とともにメタ解析を行った。Intensive follow-up群1,371例、minimal群794例で解析を行ったが、オッズ比が0.96と死亡において差を認めなかった。

 今回のFACS試験では、intensive follow-up群では外科的治癒切除が可能な再発がminimal群と比べて3倍認められた。CEA群とCT群の差は小さく、検査を追加する意義は見いだせなかった。解析時点で外科的治癒切除が行われた後に再発を認めた症例の59%が生存していたが、minimal群とintensive follow-up群で大腸癌死亡、全死亡ともに統計学的有意差を認めなかった。

結論

 Intensive follow-upはおよそ20~25のnumber needed to treat (NNT) で治癒切除可能な再発を同定できる (5-year post-recurrence survivalでは予想されるNNTはおよそ40~50)。Follow-up前に行う残存病変を同定するための最初の厳密なstagingが重要である。また、残存病変のない状況では、intensive follow-upのベネフィットはstageとは独立して認められる。

 今回は全症例が12~18ヵ月で単回のCT検査を行っていたが、CEA測定とCT検査両方を定期的に行う意義は存在しない。

コメント

 大腸癌術後のfollow-upに関しては、Cochran meta-analysisの結果で、intensive follow-upにより生存期間の延長が図られることから、intensive follow-upがESMOのガイドラインでもlevel IAで推奨されている。しかし、今回のFACS試験ではこれまでの報告と異なり、intensive follow-upの有用性が証明されなかった。

 本試験では根治切除可能な再発巣の発見率がminimal群で2.3%に対してCEA and CT群では6.6%と有意な差を認めているものの、発見率そのものが低率であること、いずれのグループにおいても結局12~18ヵ月でCT検査が行われていることなどがlimitationとして挙げられる。また今回発表されたメタ解析には、幾つかのpositiveな試験が含まれていないなどの問題もある。いずれにせよ、最も予後に影響を及ぼすと考えられる治癒切除可能率には差を認めているので、さらに長期間の追跡が必要と思われた。

(レポート:坂東 英明 監修・コメント:寺島 雅典)

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