演題速報レポート American Society of Clinical Oncology 48th Annual Meeting 2012 June 1st-5th at CHICAGO,ILLINOIS

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現地座談会

その他の消化器癌に関する注目演題

胃癌に関する注目演題

#4002:WJOG 4007試験

切除不能胃癌における2nd-line治療のベストレジメン
――CPT-11単剤 vs. weekly Paclitaxel療法の第III相試験

室:では、その他の消化器癌に移ります。まずは進行胃癌に対する2nd-line治療を検討したわが国からの報告、WJOG 4007試験です。中島先生、概要をお願いします。

中島:フッ化ピリミジン系薬剤+プラチナ系薬剤 (FP) に不応となった切除不能進行胃癌患者に対する2nd-lineとしてのweekly Paclitaxel (wPTX) 療法とCPT-11単剤投与の比較試験です。主要評価項目であるOSの中央値はwPTX群で9.5ヵ月、CPT-11群では8.4ヵ月であり、CPT-11の優越性は証明されませんでした (HR=1.13, p=0.38)[図14]。PFS中央値はそれぞれ3.6ヵ月、2.3ヵ月 (HR=1.14, p=0.33)、奏効率も21%、14%と有意差はなく (p=0.24)、CPT-11群で不良な傾向にありました。
 毒性は、CPT-11群で低ナトリウム血症や食欲不振が多かったものの、それ以外に大きな問題はありませんでした。3rd-line治療の施行率はCPT-11群で72%だったのに対し、wPTX群では90%と有意に高率でした (p=0.001)。

佐藤 (温):2nd-lineとしては初めて第III相試験のしっかりとしたデータが出てきた重要な報告だと思います。この結果には2つの意味があります。1つは2nd-line治療の有用性に関する明確な根拠が出されたこと、もう1つは2nd-lineの治療選択に示唆を与えてくれたということです。2nd-lineの有用性に関しては、今回はBSC (Best supportive care) と比較したわけではありませんが、BSCのOSは1st-lineでは3-4ヵ月42-44)韓国の2nd-line以降の比較試験では3.8ヵ月と報告されています45,46)。本試験のOSはそれらに比べると約6ヵ月の延長が得られているため、わが国のこれまでのコンセンサスの通り、胃癌における2nd-line化学療法は有用であると考えてよいと思います。
 レジメンに関しては、この結果からはwPTX療法がまず推奨されますが、3rd-lineでのクロスオーバーが大きなポイントになっていると思います。昨年の米国臨床腫瘍学会年次集会で報告された韓国の2nd-line以降の比較試験では、CPT-11のOSは6.5ヵ月、Docetaxelは5.2ヵ月であり46)、本試験のCPT-11群のほうが良好です。3rd-lineまで治療を行うことを考えれば、CPT-11が否定されたわけではありません。おそらく大腸癌と同様に、主要な薬剤を使いきることが重要であり、CPT-11単剤とwPTX療法の両方が大切な治療であることに変わりはないと思います。

室:佐藤先生のご意見は、大腸癌のV308試験47)のように、FOLFOXとFOLFIRIのどちらを1st-lineで行うかは問題ではなく、結局は1st-lineと2nd-lineで両方の治療を行うことによって生存が延長したという解釈に似ていますね。

中島先生中島:現時点では、2nd-line治療の開始時点で3rd-lineまで治療可能な症例を選択できる臨床的因子もバイオマーカーもありません。それを考えると、私は2nd-lineとしてはwPTX療法を標準治療としましょう、という試験結果であったと考えています。

小松:ただ、今回の結果はどちらか一方が勝ったというものではないですね。胃癌の場合、腹膜播種が高度であれば、全身状態が悪化する前にCPT-11を先に使っておきたいという考えは残ります。

室:本試験では高度腹膜播種は除外されていますが、寺島先生はどう思われますか。

寺島:PaclitaxelとCPT-11が両方とも使える状況であれば、どちらを先にしてもいいのだなという印象をもちました。結果はwPTX群が若干上回ってはいますが有意差はありませんし、3rd-lineでは両群の6-7割でクロスオーバーしています。

大村:私の経験では、2nd-lineではwPTX療法が使いやすいですね。確かにCPT-11は3rd-lineでは使いにくくなる可能性もありますが、実臨床では3rd-lineまで治療できない症例も多いです。

吉野:私は「CPT-11は2nd-lineで使えるうちに使う。Paclitaxelは3rd-lineでいい」という教えを受けてきた人間なので、今回の結果は衝撃でした。今後、サブグループ解析でwPTX療法とCPT-11単剤の至適患者が示されるのでしょうか。

佐藤 (温):現在、2nd-lineの第III相試験が3本、無作為化第II相試験も複数進行しておりますので48-51)、至適投与対象についてはそれらの結果が出てから考えるべきだと思います。

Lessons from #4002

  • 進行胃癌に対する2nd-line治療としてのwPTX 療法に対するCPT-11単剤のOSにおける優越性は証明されなかった。
  • 2nd-line化学療法の有用性 (行うことの意義) が確認された。
  • 「主要薬剤を使い切る」という点においてはPaclitaxelもCPT-11も重要な薬剤であることに変わりはなく、2nd-line /3rd-line化学療法を行い、両薬剤を使うことが重要なポイントである。
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