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演題速報レポート

Non-colorectal Cancer
Abstract #4004
既治療の進行胃癌に対する2nd-line治療 + BSC vs. BSCの多施設無作為化比較第III相試験
A multi-center, randomized phase III trial comparing second-line chemotherapy (SLC) plus best supportive care (BSC) with BSC alone for pretreated advanced gastric cancer (AGC)
Se Hoon Park, et al.
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背景
 これまでに進行胃癌に対する2nd-line治療がBSC (best supportive care) と比べOS (overall survival) を延長したとするいくつかの報告があるが、エビデンスとしては確立していない。本試験の目的は、既治療の進行胃癌症例に対する2nd-line以降の化学療法 (SLC) の治療効果および安全性を評価することである。
対象と方法
 主な適応基準は、5-FUおよびプラチナ系薬剤を含む化学療法歴のある進行胃癌、Irinotecan (CPT-11) およびタキサン系薬剤の投与歴なし、年齢20歳以上、PS 0-1、臓器機能が保持されているなどである。
 対象はSLC + BSC群: BSC群=2:1に割付された。SLCは、Docetaxelを60mg/m2の3週毎投与、またはCPT-11 150mg/m2の2週毎投与を行い、医師の判断でどちらかが選択された。
 主要評価項目はOSである。
結果
 無作為化を承諾した202例が登録され、うち9例は除外され193例にて検討された。
 SLC + BSC群は128例、BSC群は65例、2nd-line治療後の登録はそれぞれ38例、21例であった。PS 0は、SLC + BSC群71例、BSC群35例、PS 1はそれぞれ57例、30例であった。SLCはDocetaxelが66例、CPT-11が60例で、後治療の施行例は、それぞれ24例、26例であった。また有害事象は許容範囲内であった。
 OSはSLC + BSC群が5.1ヵ月 (95%CI: 4.0-6.2)、BSC群が3.8ヵ月 (95%CI: 3.0-4.6)で、SLC + BSC群で有意に改善を認めた (p=0.009)。
Overall Survival
 化学療法薬別では、CPT-11投与群ではDocetaxel投与群に比べOSの延長傾向がみられたが、有意差は認めなかった。またサブセット解析にて、2nd-line治療後の登録症例、PS 1の症例は、SLCによる治療効果が低い傾向があった。
Subset Analysis
結論
 既治療の進行胃癌症例に対するSLC + BSCは、BSCのみよりも有意に予後を改善し、また有害事象も許容範囲内であった。
コメント
 胃癌に対する2nd-line治療は今までのところエビデンスとしては確立していない。唯一BSCとCPT-11の2群比較がドイツのAIOグループで行われ、その結果が2009年 米国臨床腫瘍学会年次集会において報告されている。残念ながら症例登録が進まず、両群あわせて40例の登録で臨床試験は終了し、CPT-11の優越性が示唆された1)
 この報告以外に、2nd-line治療の意義を検証した質の高い第III相試験の報告はいままでのところ存在しなかった。今回韓国から約200例弱の比較試験の結果が報告され、BSC群に比べて2nd-line治療群 (DocetaxelあるいはCPT-11投与群) が有意に生存を延長し、2nd-ine治療の意義を明らかにした。今後2nd-line治療として何がベストレジメンかが検証されていくものと思われる。
 その中で、現在我が国で行われているWJOG4007 (weekly Paclitaxel vs. CPT-11) の結果が、来年の米国臨床腫瘍学会年次集会で報告される予定であり、分子標的治療薬におけるプラットフォーム薬として何がベストなのかも含めて、2nd-line治療のベストレジメンが明らかとなることに期待したい。
(レポート: 松阪 諭 監修・コメント: 瀧内 比呂也)
Reference
1) Thuss-Patience PC, et al.: 2009 Annual Meeting of the American Society of Clinical Oncology®: abst #4540
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