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演題速報レポート

Colorectal Cancer
Abstract #3528
化学療法抵抗性切除不能進行・再発大腸癌に対するCetuximabの治療効果におけるFCGR遺伝子多型の影響 ―国際共同研究―
An international consortium study in chemorefractory metastatic colorectal cancer (mCRC) patients (pts) to assess the impact of FCGR polymorphisms on cetuximab efficacy.
Ravit Geva, et al.
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背景と目的
 IgG1モノクローナル抗体であるRituximabやTrastuzumabでは、Fcγ受容体 (FCGR) IIa H131R、FCGR IIIa V158F遺伝子多型と治療効果との関連が示唆されている1, 2)。切除不能進行・再発大腸癌に対するCetuximabの治療効果に関しても同様の結果が報告されているが3)、少数例かつKRAS 遺伝子変異の情報を含まない検討が多く、一定の見解が得られていない。
対象と方法
 対象は、化学療法抵抗性切除不能進行・再発大腸癌に対してCetuximabを含む治療が行われた901例 (欧州および日本の16研究機関より集積)。
 FCGR IIa H131R、FcGR IIIa V158F遺伝子多型については中央測定 (日本以外)、KRAS 遺伝子変異の有無に関しては各研究機関で測定した。
 FCGR遺伝子多型と奏効率 (χ2検定)、PFS (progression-free survival)、OS (overall survival; Log-Rank検定) との関連を検討した。
結果
 患者背景は男性: 58.9%、年齢中央値: 62歳、結腸癌: 73.8%、KRAS 遺伝子: 野生型65.6%、変異型29%、不明5.4%、前治療歴: Fluoropyrimidine 95.3%、Irinotecan 98.4%、Oxaliplatin 76.8%、不明5.4%、Cetuximab療法: Irinotecan併用91.3%、Oxaliplatin併用5.0%、単剤/5-FU併用 4.3%、不明0.2%。FCGR IIaは852例、FCGR IIIaは846例で評価可能であった。
 FCGR遺伝子多型は、FCGR IIa HR/HH/RRが46.8/31.9/21.2% (KRAS 野生型では各々44.5/34.5/21.0%)、FCGR IIIa VF/VV/FFが45.2/14.5/40.3% (KRAS 野生型では各々44.0/13.6/42.4%) であった。

 全症例およびKRAS 野生型症例における検討では、各遺伝子多型間に有意差は認められなかった。KRAS 野生型の結果を下記に示す。
 ・FCGR IIa遺伝子多型の検討 (HR/HH/RR)
   奏効率: 32.7/27.1/34.5%
   PFS中央値: 24.0/23.0/21.0週
   OS中央値: 56.0/58.0/49.0週
Survival Functions KRAS status; KRAS WT
 ・FCGR IIIa遺伝子多型の検討 (VF/VV/FF)
   奏効率: 32.5/35.4/28.8%
   PFS中央値: 26.0/20.0/23.0週
   OS中央値: 62.0/55.0/50.1週
Survival Functions KRAS status; KRAS WT
 一方、KRAS 変異型におけるFCGR IIIa FFとnon-FFの検討では、奏効率に有意差は認められなかったが、PFSはFF/non-FFで16.0/12.0週 (p=0.072) とFFで良好な傾向を認め、病勢コントロール率は61.5/47.9% (p=0.049)、OS中央値は39.0/31.0週 (p=0.005) とFFで有意に良好であった。
結論
 全症例およびKRAS 野生型症例における検討では、Cetuximabの治療効果と各遺伝子多型間に有意な関連を認めなかった。KRAS 変異型では、FCGR IIIa FFを有する症例の予後が良好であった。
コメント
 CetuximabはIgG1抗体であり、細胞障害の機序としてはEGFRに結合してシグナル伝達を阻害する直接的効果のほかに、antibody dependent cell cytotoxicity (ADCC) 活性を有する可能性が示唆されている。ADCC活性を発揮するためには、リンパ球表面に存在するFcγ受容体 (FCGR) が重要であり、FCGRに存在する遺伝子多型がIgG1抗体によるADCC活性と関連することが報告されている。
 今回FCGR IIaおよびIIIaの遺伝子多型とCetuximabの効果との関連について検討がなされ、全体およびKRAS 野生型において関連は認められなかった。また、KRAS 変異型において、FCGR IIIa FFが予後と関連している可能性が示唆された。
 FCGR IIIa FFの頻度は約40%であることから、KRAS 変異型でFCGR IIIa FFは大腸癌症例全体の約10%を占めることになる。しかし、FFとFF以外ではOSで有意差が得られてはいるものの、PFSでは全く差が認められず、CetuximabによるADCC活性の程度を反映しているか否かは甚だ疑問である。他の臨床試験における患者背景因子を含めた検討や、探索的研究の結果を待ちたい。
(レポート: 山ア 健太郎 監修・コメント: 寺島 雅典)
Reference
1) Weng WK, et al.: J Clin Oncol. 21(21): 3940-3947, 2003 [PubMed
2) Musolino A, et al.: J Clin Oncol. 26(11): 1789-1796, 2008 [PubMed
3) Pander J, et al.: Eur J Cancer. 46(10): 1829-1834, 2010 [PubMed
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