Abstract #CRA4027

転移性大腸癌におけるpanitumumab治療時の皮膚障害に対する予防的治療と対症的治療の比較試験:STEPP試験の最終解析

Final STEPP Results of Prophylactic Versus Reactive Skin Toxicity (ST) Treatment (tx) for Panitumumab (pmab)-related ST in Patients (pts) With Metastatic Colorectal Cancer (mCRC).


E. P. Mitchell, et al.

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背景

Panitumumabは、転移性大腸癌治療薬の完全ヒト型抗EGFR抗体である。抗EGFR抗体の最も一般的な副作用は皮膚障害である。STEPP試験は、panitumumab+化学療法における皮膚障害に対する予防的治療と対症的治療を比較・検討した最初の臨床試験である。

対象と方法

・目的
Panitumumab投与後6週間における予防的治療群と対症的治療群の皮膚障害(Grade 2以上)の発現率を比較する。

・対象
切除不能転移性大腸癌の1st-line治療でフッ化ピリミジン系/L-OHPベース±bevacizumabを使用し、PDになった患者95例を1:1の割合で予防的治療群と対症的治療群に無作為に割り付けた。

・薬物療法
1.転移性大腸癌に対する治療
Panitumumab 6mg/kg+FOLFIRI療法(2週に1回)あるいはpanitumumab 9mg/kg+CPT-11療法(3週に1回)を実施した。
2.皮膚障害に対する治療
●予防的治療群
以下のレジメンをpanitumumab初回投与の24時間前から開始し、6週目まで実施した。

  皮膚保湿剤(ルブリダームなど)を、顔面、手、足、首、背中及び胸に起床時に毎日使用
日焼け止め(PABA{パラアミノ安息香酸}フリー)、SPF15以上、UV-AおよびUV-B予防)を皮膚の露出部に外出前に使用
局所ステロイド薬(1%ヒドロコルチゾンクリーム)を顔、手、足、首、背中および胸に就寝時に適用
経口抗生物質ドキシサイクリン 100mgを1日2回服用

●対症的治療群
皮膚障害発生時にinvestigatorの判断で治療を開始する。なお、7週目以降の皮膚治療の継続については、医師の判断に任された。

・QOL
Dermatology Life Quality Index (DLQI)を用い、患者からの報告は皮膚治療開始2-7週の間でスクリーニングを行い、13-14週の間の来院時に評価を実施した。

結果

対象患者95例は、予防的治療群48例と対症的治療群47例に無作為に割り付けられた。
Grade 2以上の皮膚障害は、予防的治療群で14例(29%)、対症的治療群で29例(62%)であり、予防的治療群で皮膚障害が少なかった。

Probability of Grade 2 or Higher Skin Toxicity1 by Time on the Study

Grade別の解析では、Grade 2は予防的治療群11例(23%)、対症的治療群19例(40%)であり、Grade 3は予防的治療群3例(6%)、対症的治療群10例(21%)であった。Grade 4以上の皮膚障害は、両群ともに認められなかった。

Dermatologic Toxicities - Grade 3

QOLについては、投与開始時期からのMean DLQIスコア変化は、予防的治療群で改善した。特に2〜3週目にかけては顕著であった。

Mean (SD) DLQI Score Change from Baseline to Week 3 and Week 7

転移性大腸癌における治療効果は、皮膚治療の両群間で差はなかった。また、KRAS野生型(49例)において優れていた。

結論

皮膚治療期間の6週間の中で、予防的治療群の皮膚障害(Grade 2以上)は、対症的治療群に対して50%以上少なかった。皮膚治療の有無による大腸癌の治療効果に群間差は認められなかった。

コメント

抗EGFR抗体に必発する皮膚毒性は、効力とも関連して避けては通れない毒性である。比較的簡便な予防的治療が腫瘍治療効果を減じることなく、副作用抑制をもたらした結果は、実臨床の現場において大きな福音である。皮膚障害に対する効果の詳細には不明な点もあるが、QOL評価で向上が得られていることから、臨床導入については問題ないと考える。また、皮膚障害以外の下痢(予防的治療群:27例、対症的治療群:40例)や好中球減少(9例、20例)の副作用が減ったことは大変興味深い。

(コメント・監修:佐藤 温)