Abstract #4553

進行胃癌患者の1st-line治療としてのL-OHP+S-1療法(SOX)に関する第II相試験

Phase II study of L-OHP combined with S-1 (SOX) as first-line therapy for patients with advanced gastric cancer (AGC).


Hiroya Takiuchi, et al.

背景

日本ではS-1+CDDP併用療法が進行胃癌(AGC)の標準治療である。一方、L-OHPは最近、進行食道・胃癌の治療においてCDDPとの非劣性が示されている。そこで今回、AGCの1st-lineとしてのS-1+L-OHP療法(SOX)の安全性と有効性を評価する目的で、第II相試験を実施した。

対象と方法

病理学的に確定した切除不能または進行・再発胃癌患者(20歳以上)で、化学療法の治療歴がなく、測定可能病変があり、全身状態がECOG PS2以下の患者55例が登録された。これらの患者に対し、L-OHPは100mg/m2をday1に静脈内投与、S-1 は80mg/m2/日をday1-14に経口投与するスケジュールで、3週ごとに繰り返した。一次エンドポイントは、RECIST基準に基づく客観的な腫瘍縮小効果である。
有効性の評価対象は51例、安全性の評価対象は54例であった。有効性評価対象の年齢中央値は63歳(30-77歳)、PS 0は62.7%、PS 1が35.3%、PS 2は2.0%であった。組織分類はdiffuse型が68.6%、intestinal型が31.4%であり、進行癌が92.2%、再発癌が7.8%であった。前治療は胃切除が23.5%、術後補助化学療法が2.0%、前治療なしが76.5%であった。

結果

SOX療法の治療期間中央値は6サイクル(1-16+サイクル)で、dose intensityはS-1が85.7%、L-OHPが87.5%であった。追跡期間中央値15.8ヵ月の時点で客観的な腫瘍縮小効果を得たのは30例(58.8%)で、全例がPRであり、CRに達した患者はなかった。Disease control rate(CR+PR+SD)は84.3%であった。
PFS中央値は6.5ヵ月、TTF中央値は4.8ヵ月であった。1年OSは70.6%であり、現時点で生存期間中央値には達していない。

Progression free survival

Time to tratment failure

SOXに関連した有害事象は許容範囲内であった。Grade3/4の有害事象は好中球減少(22.2%)、血小板減少(13.0%)、貧血(9.3%)、食欲不振(5.6%)、疲労(5.6%)などであった。神経障害は48例(88.9%)に認めたが、Grade3/4は2例(3.7%)のみであった。治療関連死はみられなかった。

Major toxicity (n=54)

試験終了前に46例がSOX療法を中止していた。治療中止の主な理由は癌の進行(63.0%)であり、次が有害事象(28.3%)であった。SOX療法を中止した患者のうち、42例(91.3%)は試験後に別の治療を希望し、その内容はS-1ベースのレジメン(34.8%)、タキサンベースのレジメン(19.6%)、CPT-11ベースのレジメン(19.6%)などであった。
6サイクルのSOX療法の後、手術を受けた1例では病理学的CRが認められた。

結論

AGC患者の1st-line治療としてのSOX療法は、毒性が容認できる範囲内であり、有効性も優れていた。利便性、有効性、忍容性を考えれば、SOX療法はAGCの標準的な1st-line治療として、S-1+CDDP療法に取って代わる可能性がある。

コメント

標準治療であるS-1+CDDP療法は国内ではすでに進行胃癌の1st-line治療として広く受け入れられているが、CDDP投与の煩雑さに問題が残っている。S-1+L-OHPは、外来管理が容易であり患者にとても魅力のあるレジメンである。世界的にCDDPからL-OHPへ選択肢が流れているなか、本試験で安全性、忍容性が検証された。さらに、有効性についてもSPIRIT 試験(S-1+CDDP療法;RR 54.1%,PFS 6.0ヵ月)と参考比較して十分期待できる結果であった。第III相試験において標準治療として検証に値するレジメンであり、胃癌におけるL-OHPの早い評価が望まれる。

(コメント・監修:佐藤 温)