Abstract #4115

一次治療としてFOLFOX療法を施行中の転移性大腸癌患者における好中球減少−予後予測因子の検討

Neutropenia during chemotherapy as a prognostic factor in patients with metastatic colorectal cancer treated with first-line FOLFOX.


Kohei Shitara, et al.

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背景と目的

FOLFOX療法は転移性大腸癌における標準療法として確立しており、奏効率は40〜50%、MSTは約20ヵ月とされる。また、一般的な副作用の1つであるGrade 3-4の好中球減少は、患者の30〜40%にみられる。
化学療法施行中の好中球減少が良好な予後予測因子となることは、既にいくつかの癌種で報告されているが、大腸癌における報告は行われていない。そこで今回、FOLFOX療法施行中の好中球減少と予後との関係を検討した。

方法

2005年4月〜2007年8月に、一次治療としてFOLFOX療法またはFOLFOX+bevacizumab療法を施行された転移性大腸癌患者で、80歳未満、PS 0-1、骨髄機能および肝・腎機能が正常であった135例をレトロスペクティブに評価した。
TVCs(time-varing covariates)の統計学的手法を用い、時間依存の変数としてFOLFOX療法施行中の好中球減少、bevacizumabおよびCPT-11の使用、L-OHPの再導入、腫瘍増殖を考慮した。

結果

Grade1-2の好中球減少が60例(39%)に、Grade3-4が46例(30%)に認められた。これら106例のうち、66%が4サイクル以内に最も重度の好中球減少を経験していた。
好中球減少の有無やGrade別の患者背景に有意差は認められず、Dose intensityにおいても違いはみられなかったが、抗腫瘍効果についてはGradeが高いほど良好であった。

Treatment Results and Response

OSは、好中球減少のみられなかった症例では13.6ヵ月、Grade 1-2では21.7ヵ月、Grade 3-4では26.0ヵ月であった。FOLFOX療法開始4サイクル以内に限定しても、好中球減少を経験した症例のOSは有意に良好であることが示された。

Overall survival according to highest grade of neutropenia

Overall survival according to highest grade of neutropenia within 4 cycles

TVCsの多変量解析においても、ハザード比はGrade 1-2が0.55(95%CI、0.31-0.98; P=0.044)、Grade 3-4が0.35 (95%CI、0.18-0.66; P=0.002) であり、4サイクル以内の症例に限定しても、予後予測因子としての有用性が認められた。

Univariate and Multivariate Analysis with or without TVCs
結論

一次治療としてFOLFOX療法施行中に発現する好中球減少は、良好な予後予測因子となる可能性が示唆された。

コメント

細胞障害性の抗癌剤の多くは、第T相臨床試験(忍容性試験)で、最大耐用量を確認し、直下位レベルで推奨投与量が確定されている。つまり、毒性の忍容される範囲での最大投与量が最も効果的と考えられている。この視点からみれば、本報告の内容は至極当然である。好中球減少発現症例における薬物動態の検討が望まれる。薬物代謝の個人差が関与する場合、Dose Intensityは有用ではないのかもしれない。好中球減少のない症例に対する増量投与の必要性が今後の検討課題となる。オーダーメイドの医療に役立つ示唆が得られることを渇望する。

(コメント・監修:佐藤 温)