![]() |
|||
|
![]() |

JCOG 9912第III相試験では、進行胃癌を対象として5-FU療法に対するirinotecan + cisplatin (CP) 療法ならびにS-1療法の優越性および非劣性が示された(学会レポート)。JCOG 9912試験の結果を一般化できるか評価するためには、国際的な統計学のガイドライン(ICH-E9)に示されているように、病院間に存在する各レジメの臨床効果の差異や、化学療法に伴うリスクの違いを比較検討することが重要である。

JCOG 9912試験において、日本の22病院から集められた658例(5-FU 218例、CP 221例、S-1 219例)を対象とし、生存期間と有害事象のデータを解析した。症例を9つの予後規定因子(下表)によって補正した後に、レジメ毎にOS、PFS、および有害事象の発生頻度の検討を行った。
|

5-FU群のOSとPFSの中央値は、各々の施設で8.3〜13.3ヵ月、2.4〜3.4ヵ月であった。CP群の5-FU群に対するOS のHRは0.81〜0.91、PFSのHRは0.62〜0.82であった。S-1群の5-FUに対するOSのHRは0.75〜0.81、PFSのHRは0.77〜0.90であった。高度な有害事象の発生頻度に相関する病院側の因子として、CP療法では化学療法を担当する医師の経験年数 (r=-0.46)、S-1療法では病院の医師の数 (r=-0.48)が挙げられた。この2つの因子以外には、有害事象の発生頻度に相関する病院側の因子はなかった。

JCOG 9912試験に参加した病院間で、5-FU群について臨床効果に差異を認めた。しかし、CP群とS-1群の治療効果に関しては不均一性が少なかったため、JCOG 9912試験に参加した施設から登録された症例の集団は、本試験の解析の対象として適切であると考えられた。また、高度な有害事象の発生頻度は、化学療法を担当する医師の経験年数と医師数と相関していた。


抗癌剤を信頼していない医師が施行する化学療法は、臨床効果が低い印象がある。支持療法が不適切であるか、化学療法の中止基準が熟練医より厳しいかのどちらかではないかと考えている。また、OPTIMOX1が考案された背景に、臨床試験に参加した施設間でFOLFOXの施行回数に大きな差があり、施行回数の多い施設ほど生存期間が長いというデータがあった(ESMO2006 Abstract #3290)。本研究の結論の後半で述べられているように、有害事象の制御に腫瘍医の経験年数、および人数が関与しているという結果はきわめて興味深い。腫瘍医の育成は、有害事象のより適切な制御の観点からも、化学療法の治療成績の向上に寄与する可能性が高いことを示した報告である。
(レポート:野澤 寛、監修:大村 健二)