Abstract #4011

Randomized phase III study of capecitabine, oxaliplatin, and bevacizumab with or without cetuximab in advanced colorectal cancer (ACC), the CAIRO2 study of the Dutch Colorectal Cancer Group (DCCG).


C. J. Punt,et al.

背景

進行結腸・直腸癌に対するVEGF抗体であるbevacizumab + フッ化ピリミジンベースの化学療法は現在、標準的な一次治療と考えられている。また、EGFRに対するキメラモノクローナル抗体であるcetuximabは、単剤もしくは化学療法との併用により進行結腸・直腸癌に対し有効である。CAIRO2試験は、進行結腸・直腸癌においてcapecitabine + oxaliplatin + bevacizumab(CapeOX/Bev)にcetuximabを加える有用性を検討するためにデザインされた無作為化第III相試験である。

対象と方法

<対象>
 進行再発結腸・直腸癌
 測定可能病変を有する症例
 転移に対し前治療が施行されていない症例
 過去6ヵ月以内に補助化学療法を施行されていない症例
 18歳以上
 WHO PS 1以下の症例
 十分な臓器・骨髄機能が保たれている症例
 抗凝固療法を施行されていない症例

<方法>

・A群: (CapeOX/Bev) capecitabine 1,000mg/m2 1日2回経口投与 day1-14
    oxaliplatin 130mg/m2   day1
    bevacizumab  7.5mg/kg   day1
  3週毎に繰り返す。
7コース以降はoxaliplatinを中止し、capecitabineを1,250mg/m2を1日2回に増量した。
・B群:  CapeOX/Bev + cetuximab 400mg/m2を1コース目の1週目に静注、2週目以降は、250mg/m2を毎週静注した。

一次エンドポイントはPFS、二次エンドポイントはOS、RR、毒性、トランスレーショナルリサーチである。3コース毎にRECISTにて効果判定し、コース毎にNCI-CTCにより毒性の評価を行った。

結果

2005年6月より2006年12月までに、755例が本試験に登録され(適格症例736例)、A群368例、B群368例に無作為割り付けされた。年齢中央値(範囲)は62歳(27-83歳)であり、施行コース数中央値はA群10コース(1-39コース)、B群:9コース(1-40コース)であった。
PFS中央値は、A群10.7ヵ月、B群9.6ヵ月であり(HR:1.21、95%CI:1.03-1.45)、有意な差が認められた(p=0.018:図1、表1)。


Progression-free survival

Efficacy results

grade 3以上の有害事象(A群/B群)は、全体(72%/82%、p=0.0013)、皮膚毒性を除いた有害事象(72%/75%、p=0.37)、下痢(19%/26%、p=0.026)などで認められた(表2)。


Efficacy results

cetuximabに関連した皮膚毒性ではA群、B群においてそれぞれ全gradeのアクネ様皮膚反応(4%、84%)、grade 3のアクネ様皮膚反応(0.5%、25%)、全gradeの爪の変化(13%、32%)、grade 3の爪の変化(0.3%、4%)であり、B群で有意に高値であった(p<0.001)。
B群について皮膚反応のgrade毎にPFSを比較すると、皮膚反応が高度になるほど、PFSは有意に延長していた(p<0.01)。また、A群全例と、皮膚反応がgrade 0-1であったB群を比較すると、A群のPFSが有意に延長していた(p<0.0001)。
K-RASのwild type、mutation別にPFSを比較すると、wild typeではA群・B群間に差は認めなかったが、mutationではA群がB群に比して有意にPFSが延長していた(A群12.5ヵ月、B群8.6ヵ月 p=0.043)。OSでは有意差を認めなかった(A群24.9ヵ月、B群19.1ヵ月 p=0.35)。

Efficacy results

結論

CapeOX/Bevにcetuximabを加えることにより、有意なPFSの短縮を認めたが、OSに差はなかった。一方、皮膚毒性、下痢は有意に増加したが、その毒性は認容される範囲内であった。cetuximab関連の皮膚毒性のgradeは有意にPFSと相関していた。
K-RAS変異を伴う症例に対し、CapeOX/Bevにcetuximabを加えることにより有意なPFSの短縮を認めた。

コメント

CapeOX/Bevに対するcetuximabの上乗せ効果を検証した試験であるが、予想に反して、cetuximabの上乗せ効果は全く認められなかった。それどころか、K-RASのmutationを有する症例では、むしろ有意に劣る治療成績を示していた。以前に報告されたFOLFOX or FOLFIRI + bevacizumabに対して、cetuximabと同様の抗EGFR抗体であるpanitumumabの併用効果を検証したPACCE試験においてもpanitumumabの上乗せ効果が証明されなかったことから、詳細な機序は不明ではあるものの、抗VEGF抗体と抗EGFR抗体の併用は行うべきではないものと思われる。今後報告されるであろう小分子化合物との併用療法に期待したい。

(レポーター:佐瀬 善一郎 監修:寺島 雅典)