レジメン講座 | 抗癌剤併用レジメンの投与法を解説します。

Weekly nab-Paclitaxel(PTX)単剤

Shitara K, et al.: Lancet Gastroenterol Hepatol. 2(4): 277-287, 2017

切除不能進行・再発胃癌患者に対する2次治療として、weekly Paclitaxel(PTX)療法(n=248)に対するweekly nab-PTX療法(n=246)とtriweekly nab-PTX療法(n=247)の非劣性を検証した第III相試験のABSOLUTE試験で、weekly nab-PTX療法の有効性と安全性が示された。

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◆国内第II相試験(NCT006611671)

Nab-PTXは国内では2010年7月に乳癌で承認され、胃癌は2013年2月に承認を取得していたが、胃癌での投与方法は3週毎のみであった。しかし、3週毎投与法では、末梢神経障害や好中球減少などの有害事象が多く出る傾向にあり(Grade 3以上の好中球減少が49.1%、末梢神経障害が23.6%)、それらの毒性が比較的軽い毎週投与法の開発が現場からは求められていた。

◆ABSOLUTE試験2)

ABSOLUTE試験においてweekly PTX療法に対するweekly nab-PTX療法の非劣性が証明された(OS:weekly PTX療法10.9ヵ月vs. weekly nab-PTX療法11.1ヵ月)。一方、triweekly nab-PTX療法は、weekly PTX療法に対する非劣性を証明できなかったことから、胃癌におけるnab-PTX療法はより毒性の低い毎週投与法が標準投与法として確立された。

■有効性

ABSOLUTE試験の観察期間中央値は9.99ヵ月であった。主要評価項目であるOSの中央値は、対照群であるweekly PTX群(n=243)で10.9ヵ月、weekly nab-PTX群(n=240)で11.1ヵ月、triweekly nab-PTX群(n=243)で10.3ヵ月であり、weekly PTX群に対するweekly nab-PTX療法の非劣性は証明できた(HR=0.97、97.5% CI: 0.76-1.23、non-inferiority one-sided p=0.0085)。一方、triweekly nab-PTX群は、weekly PTX群に対する非劣性を証明できなかった(HR=1.06、95% CI: 0.87-1.31、non-inferiority one-sided p=0.062)。副次評価項目であるPFSはそれぞれ、weekly PTX群3.8ヵ月、weekly nab-PTX群5.3ヵ月、triweekly nab-PTX群3.8ヵ月であり、ORRはそれぞれweekly PTX群24%、weekly nab-PTX群33%、triweekly nab-PTX群25%であった。
OSにおけるサブセット解析では大量腹水症例において、weekly nab-PTX群ではweekly PTX群と比較し、有意に良好な成績であった(HR=0.25、95% CI: 0.07-0.94、p=0.013)が、大量腹水症例はweekly nab-PTX群7例、weekly PTX群9例とあくまで小数例でのサブセット解析であることを留意しなくてはならない。

  weekly PTX
(n=243)
weekly nab-PTX
(n=240)
HR P値 triweekly nab-PTX
(n=243)
HR P値
OS 10.9ヵ月 11.1ヵ月 0.97
(97.5% CI: 0.76-1.23)
0.0085 10.3ヵ月 1.06
(95% CI: 0.87-1.31)
0.062
PFS 3.8ヵ月 5.3ヵ月 0.88
(95% CI: 0.73-1.06)
0.176 3.8ヵ月 1.03
(95% CI: 0.85-1.24)
0.778
ORR 24% 33% - 0.106 25% - 0.897

■安全性

Grade 3以上の有害事象(weekly PTX群/weekly nab-PTX群/triweekly nab-PTX群)はそれぞれ、好中球減少(29%/41%/65%)、発熱性好中球減少症(1%/3%/12%)、末梢神経障害(2%/2%/20%)と、明らかにtriweekly nab-PTX群が他の2群と比較して多かった。一方、過敏性反応はweekly PTX群が他の2群に比較して多かった(5%/1%/1%)。

以上の結果から、切除不能進行・再発胃癌患者に対する2次治療において、nab-PTX療法は3週毎投与法ではなく毎週投与法が標準治療の一つとして確立した。

レジメン解説執筆:埼玉医科大学国際医療センター 消化器腫瘍科 堀田 洋介 先生

References

  • 1) Sasaki Y, et al.: Cancer Sci. 105(7): 812-817, 2014[PubMed
  • 2) Shitara K, et al.: Lancet Gastroenterol Hepatol. 2(4): 277-287, 2017[PubMed][学会レポート
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