一方、MSKCCは、1884年にニューヨーク州立病院を基礎として設立された合衆国初の癌センター病院である。ニューヨーク州マンハッタン東のメディカル・センターに位置し、病床数は425床と、駒込病院の約半分であるが、Clinical
Trial Serviceという治験専門の事務局がある。1999年〜2001年の駒込病院の治験事務局とMSKCCのClinical Trial Serviceを比較してみた。駒込病院の治験事務局のスタッフ数が6人、全臨床試験数35、胃癌の臨床試験数が5であったのに対し、Clinical
Trial Serviceのスタッフ数は45人と多く、全臨床試験数 約400、胃癌の臨床試験数は15であった。また、治験事務局の症例数が501、適格例101例、うち臨床試験への参加同意が得られたのは86例(85%)であったのに対し、MSKCCでは、症例数362、適格例205例、うち臨床試験への参加同意が得られたのは201例(98%)であった。MSKCCでは、ほとんどが手術当日に入院してくるということもあるが、外来診療時間内に担当医師、CRC、research
nurse (RN) 同席のもとで、患者本人・家族に説明を行なっている。また、Cancer Information Serviceが、常時患者対応にあたり、医療者とのスムーズなコミュニケーションを可能にしている。それとあわせ、インターネット、Physician
Data Query(PDQ)などを活用し、臨床試験に対する意識の向上をはかる取り組みも行なっている。MSKCCでは、臨床試験においての医師、CRC、RNなどの分業がはっきりなされていた。また、それ以外にも、一般的に米国の患者さんは臨床試験に関する意識が強く、「この病院に行けば臨床試験を受けられ、医療費がタダになる」といった情報交換も活発なようである。
駒込病院における臨床試験の対象例では、告知および治療についての説明が長時間を要し、かつ勤務時間外に及ぶことが多く、医師の負担が大きいと言える。また本邦における臨床試験の発展のためには、社会的な啓蒙とCRCなどの専門スタッフの充実が必要である。 |